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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第七十三話 作戦後

結果報告書


昨日に行った大規模捜索によりナイトメアが88、それ以外のドラッグが13発見。所持者は全員逮捕しており関係者を含め200人規模の逮捕者が出た。

それとは別に学園都市西側に巨大なケリアナの生産工場を確認。ただし、撤収作業中だったからかその数はほとんど無かった。

商業エリア内においては学園自治政府からの報告により逮捕者は92名。見つかったナイトメアは60にも及んだ。

負傷者は8名。大した怪我ではなく全員が3日の安静で大丈夫なレベルである。

未だに固形のナイトメアは確認されていないためこれからより一層捜査が必要である。


『GF』移動課第一部隊第76移動隊隊長海道周



「こんな感じか」


オレは適当に報告書を書いて慧海のところに送信する。今日の捜査は大規模かつ大変な作業だった。


怪我人の数が少なかったのは良かったが、少々見当違いの逮捕を数回起こしている。これからはもう少し気をつけないとな。


今日は色々大変だった。全部隊の渉外役を集めての会議というか報告会というか、ともかく、色々と大変だった。


ナイトメア関連についての情報がかなり少なく、一部の部隊以外では完全に蚊帳の外だったからか紛糾した。まあ、情報は出来る限り出したんだけどな、さすがにオレの推測は出せなかったけど。後、『赤のクリスマス』のことも。


「さてと、後は戸締まりして」


「あれ? 今日は海道が最後?」


中村の声にオレは大きく腕を伸ばした。レーヴァテインを肩に担ぐ中村がこっちにやって来る。


「会議の後に報告書を書いていたからな。委員長や琴美がデータを作っていたとは言え、やっぱりまとめないと」


「律儀やな」


「そういう中村はどうした? 今日は空の見回り後夕方には帰ったはずだろ?」


「忘れ物や忘れ物。明日の宿題の一部を忘れてな」


そう言って中村が自分の机の上から何枚ものプリントを手に取る。


オレは小さく息を吐いて立ち上がった。戸締まりをして我が家に帰りますか。


「周、あの日のことを夢見てるらしいな」


中村がオレのことを周と呼ぶのはあの日以来か。あの日、オレが中村に誓った日以来のこと。


「そうだな、光」


オレはそう言いながらカバンを掴む。


「今回の件、『赤のクリスマス』に関係あんねんやろ。あまり無理しやん方がええで。周はよく悪夢を見るんやから」


「そっくりそのまま返させてもらうよ。そうだな。ちょうどお前だからいいか」


オレは小さく息を吐いて口を開く。


「今回のナイトメア事件は『赤のクリスマス』の実行犯が起こしている。その実行犯は元『GF』。多分、あの日に親父達と一緒に巻き込まれて死んだとされる人達」


「根拠は?」


「『悪夢の正夢ナイトメア』の男が親父について語っていたこと。そして、オレが幻想種と最初に出会った工場で見たフラッシュバック」


あの時、フードの男を見てオレは『赤のクリスマス』を思い出していた。関連性がないなんて言えない。オレがあの日を思い出すのはあの日に近い出来事があったらだからだ。


『赤のクリスマス』を生き残った中で一番引きずっているのはオレだからでもある。


「それらを考えた。はっきり言うなら、今回の事件は心の底から降りたいさ」


これ以上踏み込むのは危険である可能性が高い。もしかしたら、またあの日の悪夢を見るかもしれない。新たな事実を思い出すかもしれない。


「だけど、いや、だからこそ、オレは今回の事件であの日の決着をつける。あの日、オレ達が何を見たのか、まだ、思い出していないから」


「何を見たって、あの日みたんはニューヨークの」


「そうじゃない。そうじゃないんだ。オレの核晶は茜のものだって光なら知っているよな」


「うん。茜ちゃんから聞いてる。直接見てないけど」


やっぱりだ。やっぱりおかしい。あの日の記憶からどこかがズレている。


「茜じゃなく、オレが核晶を使わないといけない事態になったんだ。でも、その時を覚えていない。オレは茜から核晶をもらった事実は覚えていてもそれ以外は覚えていない。最後の記憶は二人と強制的に分断されて気絶するまでだ。でも、その中に茜から核晶をもらった記憶がないんだ」


「周」


「思い出さないといけない。過去に決着をつけるためにも」


オレは拳を握りしめた。楓や中村がわからないのは当たりなのだろう。実際にオレは気絶した気絶がある。だけど、その中に核晶に関する記憶がない。


茜じゃなくオレでなければいけなかった状況。それは一体、なんなんだ? オレは何を忘れているんだ?


違和感があるのは両親に対する記憶。中村にも前に聞いたが仲が良かったとしか答えられていない。


八方塞がりに近いな。


「悪い。こんな話をして気分を悪くしただろ。そこの自販機で一本くらいなら」


「私は周を応援してるから」


中村の言葉がオレの頭の中に響いた。この言葉でわかる。中村はあの日の真実を知っている。だけど、隠していることを。


「でも、これだけは周が思い出さなあかん事実や。うちらは何もヒントは出さん。やけど、応援してる。周は私の初恋の人で、大事な親友やから」


「ありがとう。さてと、戸締まりするから早く出てくれよ。それとも、戸締まりってもういないし」


相変わらず自分の嫌なことに関しては逃げ足が本当に早い。


オレは少し苦笑して駐在所内の電気を消す。そして、駐在所の外から鍵をかけてシャッターを下ろした。


他の場所の戸締まりは話しながら中村と一緒にしたから大丈夫だ。後は、裏口が閉まっているかどうかを確認して、


「やあ」


裏口に回ろうとしたオレの目の前に正がいた。その手にあるのは缶コーヒーが二本。


「昨日は大変だったね」


正がオレに缶コーヒーを投げてくる。オレはそれを受け取って缶コーヒーのプルタブを開けた。


「大変ってレベルじゃないけどな。お前のことだから全体を把握しているんだろ?」


「残念ながら昨日は中国に行っていてね、中国の最新技術を色々な意味で堪能してきたよ。でも、やはり日本が一番だ。安全面では特にね」


「そりゃな。それにしても、どうしてこんな時間にいるんだ?」


オレは肩をすくめながら尋ねる。すると、正は意地悪そうな笑みを浮かべた。


「君に会いたくなったと言えば?」


「ベッドの上で語ってくれ」


正が手に持っていた缶コーヒーを落とす。どうやら空だったらしく、中身が零れることなくかん高い音を奏でた。


よく見れば正の顔は真っ赤だ。


「は、破廉恥な。そんなことを言っていいのは成人式に出てからだ」


「言ったオレがめちゃくちゃ恥ずかしいから忘れてくれ」


どうしてオレはあんなことを言ったのだろうか。


今考えてみたら頭が回っているはずなのに頭が回っていないような状況になっている。


「コホン。僕が来たのは君の様子を見るためさ。『赤のクリスマス』について調べているよね?」


今度はオレが缶コーヒーを落とした。だけど、すかさず蹴り上げて中身をほとんどこぼさず手の中に戻す。


それを見た正は拍手をしている。


「未来を知っているからさ。まあ、今の君に言うつもりはないけれど」


「オレも言われるのは勘弁だ。未来は自分の手で作り出すものだ。その未来を考え、行動し、手に入れる」


「そうだね。だから、お節介かもしれないけれど一言だけ」


正はオレを真っ正面から見つめる。そして、上目づかいで、


「頑張って」


あまりの可愛さにオレは思わず壁に片手をついていた。顔が真っ赤になるのがわかりながらも正の方を向くと、そこに正の姿はなかった。相変わらずの状態だ。


オレは小さくため息をつく。


「不意打ちにもほとがあるだろ。あ~、夜風が気持ちいいな、おい」


オレは財布から冷たい飲み物を買うためにお金を取り出した。


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