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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第六十七話 悩み

机の上で死んでいるメグ。ちなみに比喩だ。生きてはいるけど真っ白に燃え尽きている。


オレはそんなメグの様子を見ながら小さくため息をついた。


「そんなんじゃこれからやっていけないぞ」


模擬戦なんてこれからいくらでもするからこの程度でへばっていたら追いつけるものも追いつけない。まあ、その気持ちは分からないわけでもないけど。


オレはメグを慰めるように語りかける。


「音姉や孝治のことは気にするな。あの二人は第76移動隊でも別格だから」


音姉に関してはオレは『天空の羽衣』を展開しなければ勝率を五分に持っていけない。展開しないなら勝率0だけど。


孝治は昔から戦い方を知っているからか、やはり戦いやすい。対処が立てやすい。まあ、かなり強いが。


「わかってるわよ。あの二人に勝とうなんて百年早いから。でも、由姫や亜紗さんに瞬殺されたのが」


亜紗には確か開始二秒で喉元に七天失星を突きつけられていたしな。亜紗は速度に慣れなければまず勝てない。


由姫には開始早々の綺羅朱雀で沈んだ。あれだけは音姉ですら防御出来ない。防御出来るのは勘でどうにかなるオレくらいだ。


「あれ? 昨日はあんなに喜んでいたのに今日はもう沈んでるのかよ」


その言葉に振り向くと健さんと一誠がちょうど登校してくるところだった。オレは片手をあげて挨拶する。


「第76移動隊の朝練でメグがものの見事に模擬戦全敗してさ。だから、落ち込んでいる」


「言わないでー。私だって頑張ったんだよ。うん」


「オレに二十秒も保たなかったよな」


「うわーん」


ついに泣き始めたメグ。それを見ながらオレは思わず苦笑してしまう。


「そういうわけだ」


「なるほどな。にしても、周ってそんなに強いのか? 昨日の実技試験でも言うほど強くなかったって聞いたけど」


「あのな、これでもオレはオールラウンダーの中で一番バランスが高いんだ。メグがいくら神剣もとうが魔術使ってこようが多人数で来ようが負けるような戦いはしない。それに、メグはまだまだバランスが高い一般クラスだからな。はっきり言うならオレの弱いバージョン」


バランスの高さを売りにするなら最強のオールラウンダーであるオレを超えることはまず無理だ。超えるならさらなるバランスの高さが必要になるし。


それに、バランスが高いだけじゃオレには勝てない。


「踏み込みから剣の速度。音の鋭さから地面を踏みしめる音。それらを判断出来なきゃ半人前だと音姉は言うけど、まあ、メグは踏み込みから剣の速度を見極める必要があるだろうな」


ちなみに、オレでも後者の二つは不可能だ。音の鋭さなんてあまり分からないし、踏みしめる音はまだかろうじて。


ちなみに、音姉にそれを尋ねると、


「えっ? 大体300段階くらいない?」


という返答が返ってくる。世界最強クラスになれるわけだ。


「そんなの無理だって。周の踏み込む速度かなり速いから」


「だから、それに慣れろってことだ」


実戦の速度で行ってもらったからすぐに順応されたら困るところだが、オレといくつか打ち合えたからメグはまだましだ。


炎獄の御槍は詳しく調べたいから学園施設エリアにある島塚理工学園研究施設の使用許可を申請中。炎獄の御槍の性能がわかればメグの今後の育て方が大きく変わってくる。


オレは小さく息を吐いてメグの肩を叩いた。


「メグはまだ大丈夫だって。七葉みたいに諦めろということないし」


「七葉って白川七葉先輩のことか? 白川悠聖先輩の妹の」


健さんがそう言ったのでオレは純粋に驚いていた。まさか、七葉の名前をって、都島学園じゃかなり有名な話か。


すでに和樹との二人で夫婦漫才するくらいだしな。ちなみに、本来の意味ではなく文字通りの意味で。


「あの人って本当に天真爛漫だよな」


「脳天気なだけだけどな」


「ある意味有名人だしよ」


確かに和樹は有名人だ。実は二年前まで不純異性交遊は禁止という結構厳しい校則があったのだが、和樹はその校則をたった三ヶ月で撤廃させた伝説を持つ。


ちなみに、その時は孝治や悠聖も全力で援護、というかこの二人と中村は本気で退学の危機、したためらしいが、第76移動隊の権限を使いまくって校則を変えるのは止めて欲しい。


七葉も七葉でいろいろやらかしたらしいけど。


「よくよく考えると第76移動隊って案外面白いメンバーが集まっているよな」



「言うな」


それはオレが一番自覚している。自分達のために校則すらも替えようと動き出すくらいだしな。まあ、今はかなり助かっているけど。


それに、昔と比べたらかなりの違いなんだよな。オレがまだ戦いだけのことを考えていた時と比べたら。


「周、いいか」


そこでようやく一誠が口を開いた。一誠の視線の先にいるのは一人の少女。


まあ、気になるのはわかるぞ。そいつの周囲から机が離されたりいなかったりしているからな。


「よくない」


「どうにかしろ」


オレの言葉を無視して言う一誠。その気持ちは分からないでもない。だって、体感も少し寒くなってきたしな。


「なぁ、俺からも頼むぜ。ある意味異空間がこの教室にあるからよ」


「私も~」


三人からの頼みにオレは頭をかきながら頷いた。こうなったらどうにかするしかないじゃないか。


オレは小さく息を吐いてその少女、由姫に近づく。


「なぁ、由姫」


「話しかけないでください、海道周君。今の私はあなたを呪い殺すことで精一杯です」


「この世で呪刹は一番効率の悪い殺し方だぞ」


最低でも複数人必要だし。


「ならばどうやってあなたを殴り殺すか考えています」


「いや、お前なら普通に出来るよな」


綺羅朱雀の時点でヤバいところに入ったら一撃で死ぬし。


「ともかく、話しかけないでください」


「つか、何でお前はそんなに怒ってるんだ?」


確かに昨日は機嫌が悪かった。だけど、メグの入隊志願でかなり打ち解けたはずだ。昨日の夜もちゃんと話したし。


だけど、朝になってからまたこうだ。今朝なんて顔を合わした瞬間に悲鳴を上げて逃げられた。その後に音姉からこってり絞られたけど。


「に、兄さんには関係ありません。本当ですからね」


「そ、そうか」


オレは顔を強ばらせて由姫から離れる。そして、メグ達の元に戻って一言。


「あの瞬間、めっさ可愛いかった」


「「「シスコン」」」


「言われると思った」


少し拗ねた顔だけど恥ずかしそうに顔を赤く染めて上目づかいで見上げてきた瞬間、あまりの可愛さに今風に言って萌え殺されかけた。


ちなみに比喩じゃない。


「周のせいじゃないとなんのせいなんだ? 由姫の主成分はほとんどお前だろ」


「失礼な。由姫の頭の中は八陣八叉流と音姉とオレだ」


「それあんまり変わってないことを自覚してる?」


かなり酷いことは言っているけどな。


「おはようさん。こんなに集まって俺様の登場を待っていたのか?」


「「「「ないない」」」」


「がはっ」


登校してきたハトの言葉にオレ達は瞬間で否定する。誰もハトなんて待ってないし。


「ハトにはそれがお似合いです。おそらく、私の話をしていたのでしょう」


「ワカメの話をして誰が喜ぶの」


「ぐはっ」


ワカメもハトと同じように崩れ落ちる。二人の屍を超えるように、というか踏みつけて真人が向かってくる。真人って結構容赦ないよな。


「何気にメグって酷いよね。みんな、おはよう」


「いつもと比べて遅いな」


一誠が時計を見ながら言う。確かに真人にしては遅い。理由は知らないけれど、いつめなら真人は健さんや一誠よりも早い。


すると、真人は苦笑しながら二人を指差す。


「人間の限界フレームはいくらなのかと」


「コンマ1だろ?」


ちなみに時雨しかそれは出来ない。だから、時雨は格ゲーを常に極めているらしい。


「うわっ、やっぱりそうなんだ。その人人間?」


「悩むところだ」


時雨はそんな奴である。


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