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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第六十五話 放課後に向けて

オレはレヴァンティンで向かって来ていた七天失星を受け流す。そして、そのままレヴァンティンを亜紗の体に入れようとした。だが、亜紗は上手くレヴァンティンを避けて後ろに下がる。


「体の調子は大丈夫だな」


『少し好調なくらい?』


手合わせをしてくれている亜紗も首を傾げながらスケッチブックを捲ってくる。確かに亜紗とこんなに渡り合えるのは久しぶりだ。


オレはレヴァンティンを鞘に収めた。


「そうだな。というか、向こうもすごいよな」


オレは校庭の方を見つめた。そこでは由姫と炎獄の御槍を持つメグがぶつかり合っている。ちなみに、由姫は手加減しているようだがメグの動きはかなりいい。


AAランクを名乗っても何ら違和感がないくらいだ。


だからか、前一緒にやった模擬戦の時と比べて動きがかなり違う。まあ、由姫の拳と真っ正面からぶつかり合っているんだもんな。見物客では賭けすら行われてるし。


今は昼休み。昼休みの校庭は基本的には運動系のクラブが扱うのだが火曜日だけは『GF』に優先権がある。優先権があるからこそその優先権を使って放課後の模擬戦のためにオレは亜紗とメグは由姫と手合わせしているのだ。


「にしても、炎属性の身体強化はすごいよな」


『炎属性が女の子に一番選ばれているから』


スケッチブックを捲って亜紗はそう言ってくるが、亜紗の得意な属性は風属性だ。しかも、亜紗は炎属性は苦手だったりする。


確かに、戦闘で使えるか使えないかを別にすれば炎属性が一番人気だ。次に風属性、大地属性となっている。


炎属性が人気な理由は医療にも取り入れられているから。


炎属性の身体強化は体内のカロリーを消費して力を出すもので適度な運動に身体強化を使えば簡単に痩せられる。ただし、継続しなければすぐにリバウンドするが。


血糖値も下げれるので医療でも炎属性が推奨されるくらいだ。


オレも炎属性は使うが苦手だったりもする。だって、炎属性を戦闘で使おうとすれば熱量変換を使った攻撃が出来ないならまず無理。出来たとしても本当の使い手相手なら炎魔術を使った瞬間に制御を奪われたりもする。


まあ、方向転換はまず出来ないだろうけど。


「身体強化で言えば炎属性は一番重視されていない。近代の戦闘の高速化からパワータイプは邪魔になっといるだけだからな。使うなら体の速度が上がる風属性、体の反応速度が上がる雷属性、耐久力を高くする物理属性、耐性が多い大地属性のどれかになるんだが、ここまで炎属性が見事だとな」


パワーを上げることで速度も無理やり上げている。


光輝の場合は全く原因不明で握るだけで力が上がるなんて何の冗談かと思ったが、原因不明の能力上昇が実際に発生している。というか、光輝を抜いた音姉止められるのはオレか慧海くらい。


対する炎獄の御槍は炎属性の身体強化をとことん使ったものより強力な身体強化を施しているらしく、何も知らなければ一回りも二回りも大きく見える。


炎獄の御槍の強化は強力だがその分反動も大きい。無理して倒れなければいいけど。


『心配?』


「まあな。強大な力は時に自分と他者を傷つける。それは白百合家にいた頃から痛感していたからな」


由姫も音姉も一度自分の力を暴走させている。音姉は立ち直ったが由姫は未だに自分のレアスキルの全力を出していない。


あの時はオレも死にかけたからな。


『確かにそう。私達の体だって強大な力の一つ。アル・アジフさんが使い方を間違えなければいいけど』


「そうだな」


でも、アルなら大丈夫だろうという自信はある。なんて言ってもあのアルだ。そのことはよくわかっているだろうから。


「にしても、入隊試験ね。いつ以来だ?」


『委員長以来?』


あの時は筆記試験で満点取られて本気で焦った。オレや孝治ですら満点は取れなかったのに。


おかげで実技試験はパス。まあ、実技試験で受かる気がないから完全にそれを狙ってやっただろうが。


「まあ、オレも負けるわけにはいかないよな」


『でも、相手は強敵』


「わかってる」


炎獄の御槍は炎を纏う武器。『天空の羽衣』は何ら意味を成さないものとなる。だから、受け止めたり受け流すしかない。弾きまくって相手を消耗させるという手段はあるが、それは相手がよほどの使い手じゃなければ無理。メグ相手には成功の確率は低いだろう。


相手の武器がわかっている以上、対策はいくらでもある。


『相手が神剣術を使って来ない限り大丈夫ですよね』


レヴァンティンのその言葉にオレ達は同時に首を傾げた。


「『神剣術?』」


そんなもの聞いたことがない。


『知りません? 神剣使いが時々叫ぶ中二病用語』


「確か、絶対なる神明の剣、のルビが、オベリスク、みたいな」


『正解です。まあ、神剣術は使い手によって大きく変わる面白い技なんですよね。いい年した大人が魔術ならともかく技名を叫ぶなんて、プププ』


レヴァンティン、笑うな。オレも笑いたくなってくるから。


確かに笑えることではあるが、実際に撃たれた場合はどうなるかわからない。神剣術というのは聞いたこと見たこともないし、慧海達の物語で必殺技を叫ぶきち○い的な人はいたみたいだけど。


それが神剣術なのだろう。


「レヴァンティンは炎獄の御槍の神剣術を知っているのか?」


『知るわけないじゃないですか。そもそも、神剣術を知ったのは『GF』の最高、おっと失礼。国連の最高機密文書で見ただけです』


今、『GF』の最高機密文書って言いそうになっていたよな。あらゆる集積デバイスでも中身を見ることが不可能とされている超集積デバイスの最高機密部分をレヴァンティンは単体で見たというのか。


まあ、国連の方は何ら違和感がないんだよな。あそこ、委員長の力で砕いたことがあるらしいし。


オレは小さくため息をつきながらメグの動きを見る。一つ一つがとても洗練されていて流れるように槍が動いている。見るものを惹きつける極めて強力な槍舞。


その華麗な動きは手加減している由姫をだんだん追い詰めている。


「手加減しているとはいえ、よく由姫をあそこまで追い詰めれるよな」


『賛成』


近接戦闘では第76移動隊の中では音姉の次くらいに強い由姫。亜紗ですら勝率は40%ほどだ。それほど強い由姫がメグに押されている。


可能性を上げるなら炎属性の身体強化だろう。


それと、光輝と同じシステムだからか二重にかかっている可能性があるが。


「燃費は悪そうだな。ただ、瞬間的な爆発力は下手したら楓を超える可能性がある」


『それには賛成出来ない。槍でそんな爆発力』


その瞬間、メグが炎獄の御槍に膨大な炎を纏った。由姫がすかさず重力フィールドを作り出す。そして、槍を振るうメグ。


熱波が周囲を焼き尽くす。炎属性だからあるだろうと思っていたがやはりあった。慧海の持つ蒼炎で見たことがある横払いと共に炎を撒き散らす攻撃。威力は極めて高い。


防御魔術でも威力が高い分砕けやすいからだ。


メグが槍を振り終わった後、そこには自分の作り出した重力場を周囲に展開する重力フィールドで無傷の由姫がいた。


由姫が動く。メグはすかさず槍で受け止めようとするが、メグの目の前に由姫の拳があった。


メグは諦めたように両手を挙げる。


「なるほどね」


『何かわかったの?』


オレは頷いた。実技試験で突くポイントは見つかった。


「メグの弱点だよ。生半可な練習をしていないからこそメグは総合的に高い能力を持っている。だけど、総合的に高いからオレとよく似た現象が発生しやすいんだ」


亜紗は不思議そうに首を傾げる。まあ、亜紗みたいな一芸特化にはあまりわからない話だろうな。


「力を持つことの覚悟。それを知ってからまず始めにぶち当たる壁。メグにはそれを体験させるさ。それが出来るかどうかが」


オレは笑みを浮かべた。


「実技試験の合否だ」

次からメグの実技試験で戦闘が入ります。中盤での戦闘の見せ場になるかと。

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