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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第五十五話 予測

オレはチラッと委員長と俊也を見た。二人は少し恥ずかしそうに話している。まるでお見合いの光景だ。


もし、悠聖がいたならきっと、


「ついにあいつにも春が来たか」


そうそう。絶対にそう言うって、


「いつの間に?」


唇を動かさず資料をまとめているように見せながら隣で隠れている悠聖に訪ねた。


というか、お前は今日ここの担当じゃないだろ。


「そう言うな。ちょうど休憩だったし俊也が来てるからって様子を見に来たんだよ。あいつが委員長をデートに誘えるかどうか」


「知っていたのか?」


「まあな」


まあ、俊也はオレよりも悠聖と親しいからな。お師匠様に追いつくんだと言って学園都市に来た時はかなり驚いたけど。


それに、俊也は真面目だし優しいから委員長とはお似合いだろう。委員長の趣味を知って逃げないか問題だけど。


「問題は趣味だよな」


「周もか? さすがに幻想殺しにはなりたくないからさ。フラグクラッシャーにはなりたいけど」


「死亡フラグの?」


「イエス、サー」


噂によるとすでに浩平がフラグクラッシャーだとか。あいつは実際に物理防御に関しては世界最強らしいからな。人体の神秘でもある。


二人は笑い合っている。どうやら話が弾んでいるようだ。


「ついに新たなカップルが誕生か?」


「そうなったら祝福しないとな」


オレの言葉に悠聖が笑みを返す。悠聖からすれば初めての弟子だからその弟子の幸せも嬉しいのだろう。


最大の障害がやはり委員長の趣味だが。


「一つ気になったんだけどよ、エクシダ・フバルをどう行動させるかの案は出来上がったのか?」


「一直線。普通は曲がったりするけどひたすら一直線にすることで警備をしやすくする」


「狙われやすくなるよな?」


「それも狙っている。第76移動隊と第一特務が全力で守ればどうにかなるだろう」


出来ればアルトが来て欲しいとは思う。あいつの『鋼鉄処女アブソリュート』と『鋼鉄騎士マテリアルナイト』に『狂乱騎士バーサーカー』は防衛に関しては世界最強クラスの能力だ。


アルトの有る無しによってエクシダ・フバルの防衛のしやすさは大きく変わる。『天空の羽衣』は『鋼鉄処女アブソリュート』や『鋼鉄騎士マテリアルナイト』みたいに他人にも完全に貼れるわけじゃないのだから。


もし他人に貼れるなら使い易さはかなりのものだろう。


アルトがいるならオレ達も楽出来るけど。


「なるほどね。作戦としての美しさは全くないけど不穏な動きは見破りやすいというわけか」


「そういうこと。オレ達が全力で守ればいいだけだし。さてと、二人で話し込んでいるところ悪いけどこの資料を」


「なんじゃ。俊也が来ておるのか?」


その言葉と共に入り口からアルが入ってきた。スケッチブックはしまっているためエリシアは眠っているらしい。


「アル・アジフさん、お邪魔しています」


「周、今帰ったって、そなたら何をしておるんじゃ」


オレと悠聖が必死で唇に人差し指を当てていたのにアルはお構いなしにそなたらと来た。複数だったからか俊也が振り返って驚いている。


「お、お師匠様?」


「よ、よう。驚かそうと思ったらアル・アジフに妨害された」


「そなたらがこそこそしておったからじゃ。俊也が来たということはエクシダ・フバルの動き方でも協議していたのかの?」


「まあ、な」


オレは軽く肩をすくめて詳細をさらに表示していく。それまでにはアルがこっちまで来ていた。


立体ディスプレイにはエクシダ・フバルの動き方と観客の動き方が色々と表示されていく。


「あのな、せっかく二人がいい雰囲気だったのに」


唇を動かさず手を動かしながらアルに向かって言う。アルは少し不服そうな表情になってスケッチブックを取り出した。


「そなたらは。まあ、気持ちはわからないでもないが」


「向こうは気まずい空気が流れているぜ」


悠聖の言葉にオレ達はアルを見た。アルは不器用に口笛を吹きながら目を逸らしている。


オレは小さくため息をついて画面を指差した。


「この部分がオレの中だと完全にカオス理論になる。レヴァンティンのシュミレーションも同じだ」


「実際、学園都市史上初の好カードって言われているくらいだしな。同じブロック全てが有名校ばっかり。観客もかなり来るだろうって。全く、警備するオレ達の身にもなってくれっつうの」


「そうじゃな。確かに、こればかりはカオス理論になるのは仕方ないの」


仕方ないじゃ普通は済まないけど、まあ、いいだろう。


学園自治政府もシュミレーションをするらしいし、学園都市体育祭実行委員なるものもシュミレーションするらしいから三つのデータを合わせれば大丈夫だろう。多分。


「一応、これをプリントして俊也に渡すとするか?」

「カオス理論すぎて理解出来んの?」


「おそらく無理だ」


こんなものを理解出来るやつの方が少ないだろう。実際に、オレだって理解することが難しいほどでもある。


オレはレヴァンティンに印刷の指示を出した。そして、小さく息を吐いて天井を見上げる。


学園都市のことを考えると今まで以上に混沌とした状態になるような気しかしない。


今からでも十分に頭が痛い案件だ。


オレは印刷されたものを手に取って二人の元に向かう。


「ほらよ。あまり当てにならないだろうが観客の行動予測シュミレーションとエクシダ・フバルの動き方を図で表したもの。行動予測シュミレーションはかなり混沌してカオス理論に突入しているから気にするなよ」


「えっと、僕には全く解読出来ないのですけど」


俊也が苦笑いしながらオレを見てくる。まあ、実際に苦笑いされるような図だしな。


「赤の矢印が予測される行動。青の矢印がエクシダ・フバルの動き方。重なった黒い部分が時間次第で鉢合わせする場所。空白部分はカオス理論到達地点だ」


「へぇ~、ほぉ~、へぇ~」


多分、わかってないな。


「俊也君わかるんだ」


「いえ、全く」


ほらな。


これを見て理解出来る奴の方が少ない。あまりに観客の予測線が多すぎるからだ。しかも、カオス理論到達地点が四ヶ所はある。


エクシダ・フバルの動き方も一部途切れているし。


「海道君、もうちょっとわかりやすい。地図を書こうよ」


「仕方ないだろ。世界で唯一予測出来ないのは人間の行動だからな。いくらレヴァンティンのようなAIが全行動をシュミレーションしたところでそれが当たる確率は星屑を触るくらいになるさ」


「まあ、そうじゃな。人の行動をよすることは古来よりされてきた。じゃが、戦争の歴史はそれを無意味なものにした。予測とはそういうものじゃ」


アルの言うように戦争の歴史が人の行動を予測出来ないと証明している。それが何であれどうであれシュミレーション程度じゃどうにもならない。


「あれ? でも、海道君って攻撃回避率が高いよね。それはレヴァンティンに予測してもらっているんじゃ」


「あれは予測というより筋肉の動きから次の行動を確率で作り上げて勘で回避しているだけだから」


筋肉なんてほとんど見れないから勘だけど。


『戦闘中ほど相手が型にはまっていなければ回避は難しいですよ。鍔迫り合いをするのはそれを予測しやすくするためです』


かなり行動を制限出来るのは戦いやすくするため。まあ、一対一の時に限るけど。


「予測なんてあまり当てにならないけどな」


オレがそう言って笑うとアルが呆れたようにため息をつくのがわかった。


『それを言ったら全てはおしまいです』


エリシアの言葉にオレは苦笑する。どっちも正しいのだから。

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