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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第二十九話 終わって

悠人が激しく動く。その横でメリルがぎこちなくレバーやペダルを操作していた。使っている機体はGFF-06『リヴァイバー』。


バランスの高さが売りの機体だ。ちなみに、フュリアスの中で唯一オレが開発した技術に関わりがない機体でもある。


その様子をオレと健さん、真人は離れたところから見ていた。


「まさか真柴悠人が来ているとはな。さすがのオレも勝てないって」


「世界最強のパイロットだからね。エクスカリバーがあんなに強いとは思わなかったよ。というか、勝てないよね」


確かに勝負は悠人の圧勝だった。どれくらい圧勝かと言うと、悠人がノーダメージでクリアしたくらいに圧勝だ。桁違いにもほどがある。


それを端から見ていたオレからすればさすが悠人になるけれど。


「まっ、これも世の常ということで。楽しかったから万事よしだ。にしても、真柴悠人の隣のお嬢さんは楽しそうににやっているよな」


「そうだね。完全に初心者だけど本当に楽しそう。僕達もあんな時期があったよね」


「いつの話だよ」


健さんが苦笑する。確か、FBSが稼働しだしたのは二年前だから、二人はそれ以来の古参のプレイヤーなのだろう。


まあ、その気持ちはわからないでもないけど。


「ったく、由姫や亜紗も楽しみやがって」


悠人とメリルがやっている筐体の近くにはFBSをやっている二人の姿があった。二人共慣れない手つきで頑張っている。


それを見ながらオレは苦笑した。


「まあ、楽しそうだからいいかな」


二人が楽しそうであるなら何だっていい。オレはそう思っている。


それに、こういう場所にはあまり来ないからな。


「本当は周とも戦いたいんだがな」


「無理だ。一応、オレ専用のフュリアスもあるけどコクピットがかなり違う。勝てるわけないだろ」


そもそも、実戦で使うような機体でもない。


マテリアルライザーはフュリアスの大部隊が来た時にエクスカリバーとイグジストアストラル及びソードウルフが近くにいない場合に使用する。


そんなことはまずありえないので実戦でマテリアルライザーを使ったことはない。


「はぁ、オレもフュリアスに乗れたらな」


「大体、フュリアスが使える部隊は学園都市には第76移動隊しかないぞ。フュリアスが使いたいなら日本の自衛隊に入るか『GF』のフュリアス部隊に入るか」


「狭き門だからね。かなり適性が試されると聞くけど」


「戦闘になればただ座っているだけでも疲労はかなり溜まる。相手がどこにいるかわからないからな。アルケミストのような強力な電子戦装備をデフォルトでついているなら別だけど、相手がわからない以上全方位に気を配らないといけない」


そもそも、フュリアスに使われる魔鉄は耐久性は極めて高いが魔術に対する耐久性は一切ないもの。だから、フュリアスだけじゃない。普通の人間に対しても気を配らないといけない。


フュリアスの部隊が学園都市にない理由がそれだ。いくらでも隠れることが出来るから。


エクスカリバーのように大空を飛翔出来たり、イグジストアストラルやソードウルフのように遠距離からの射撃が行えないなら倒されやすい。


フュリアスは安くはないのだ。


「うへっ、俺には無理そうだな。エクスカリバーとか本物を使ってみてぇけど」


「残念ながら、エクスカリバーは悠人の機体しかない。そもそも、エクスカリバー自体のスペックが高すぎる。パイロットに要求する技量が大きいからな」


「だよね。FBSでもエクスカリバーは性能は高いけど操作性能が最悪だって聞くし。僕も健さんも完全に諦めたよ」


エクスカリバーを使えるのが悠人だけだからというのもあるけど。


フュリアスやパワードスーツに関しては人外の実力を発揮するし。


「おっ、そろそろ時間だな。俺は帰るとするわ。もうすぐバイトだ。また明日な」


「じゃあ、僕も帰ろうかな。周、また明日ね」


健さんと真人の二人がオレに手を振りながら歩いていく。それをオレは姿が見えなくなるまで振っていた。


そして、小さく息を吐いて手を下ろす。


「いったか」


「驚かすなよ」


ルーイがいつの間にかオレの隣にいた。本当にいつの間にか。


「奴らは何者だ?」


「学園都市最強のFBSパイロット。ゲームだから気にするなよ」


「いや、違う。撃墜されたことが悔しいわけじゃない。あの二人の動きにどこか実戦臭さがあった」


「ゲームを体験しているからだろ?」


FBSの対人戦も対CPU戦も実戦を想定されて作られている。だから、何ら実戦臭さがあってもおかしくない。


だけど、ルーイは首を横に振った。


「ゲームの動きは見慣れた。だが、あの二人はゲームの動きとは違う」


オレは周囲の画面やモニターを見る。そして、少しだけ目を細めた。


「ゲームの回避行動にあまり頼っていない?」


「そうだ。悠人のように本物とゲームを熟知しなければ出来ないはずだ。それが出来るということは」


「実戦を経験したことがある、か? まだ推測でしかない。確定にはいたらないけどな」


ゲームで慣れた場合でもその極地に辿り着くことは不可能じゃない。というか、FBSでは回避行動に頼らず避けるテクニックは有効みたいだ。


悠人の場合はエクスカリバーのみの曲芸ではあるが。


それでも、FBSで操作が出来るようになっただけで実戦は経験していない可能性もある。


「FBS自体がフュリアスのコクピットと同じだ。可能性は低くない」


「問題がそれなんだ。可能性が低くないからマークするのは犯罪者または犯罪を行う可能性がある者。健さんも真人もどちらでもない。善良な一般人をマークするなんて『GF』じゃ御法度だ」

「そういうものなのか?」


音界の場合は基本的にメリルがトップでその下に首相達。そして、ルーイ達という権力構図だ。


簡単に言うなら一党独裁。だからこそ強硬な手段が簡単に取れる。


「そういうものだ。『GF』はちゃんと手順を踏まないなら無法地帯になるからな」


オレはそう言いながら二人が消えた先を見ていた。そして、小さく息を吐く。


「まあ、ルーイがそう言うなら警戒はしておく」


「頼む。だが、『GF』とは厄介な組織だな。音界のようにすればいいのに」


「人界は音界のようにフュリアスが主力の戦いじゃないんだよ。フュリアスさえあれば戦力になる音界と違って生身でもフュリアスですら倒せる人界じゃ強攻策は反発者を生む。それを押し通せば反発者は増えるし、認めれば協賛者が減る。難しいんだよ。世界は」


「複雑なのだな。わかった。世界はそう言うものだと理解しておこう」


ルーイが頷いてくれたのでオレは小さく息を吐いて由姫と亜紗を見た。どうやら戦闘に負けたからか悔しそうな顔で立ち上がっている。


ちなみに、悠人とメリルはハイタッチしていた。


「悠人とメリルって仲がいいよな」


「メリルは悠人のことが好きだ」


「やっぱり? まあ、対する悠人が気づいていないような気もするけど」


悠人からすればリリーナや鈴がいるからな。メリルは親しい友達だと思っているのだろう。


「最初は喧嘩から始まったのにな」


「ああ。僕も周に巻き込まれた」


「あれは悪いと思っている」


まさか、あそこまで大々的に大きくなるとは思わなかった。最終的には結果オーライだが、未だに二人からは恨まれている。


「ルーイはメリルのことが好きなんじゃないのか?」


「僕のメリルに対しての好きは幼なじみとしてだ。それに、僕には好きな人がいる」


「リマ? ルナ?」


「誰にも話すなよ」


そう言いながらルーイはオレにだけしか聞こえないようにとある人物の名前を言ってきた。それを聞いたオレの顔を表現するなら、


『ハトが豆鉄砲をくらったような顔』


オレの状態を的確に当てた文字が書かれたスケッチブックが目の前に出される。オレはそれを見ながら軽く肩をすくめた。


「色々あってな。どうした?」


『周さんも一緒にやらないかなっと。主に由姫が』


「のめり込んだか。わかった。行くぞ」


オレはそう言って歩き出した。由姫達の場所に向かって。


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