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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第二十五話 弓道部

作者は弓道なんて詳しく知りません(笑)

チャイムが鳴り響いた瞬間、張り詰めていた空気が一気に緩んだのがわかった。その気持ちはわからないでもない。


「では、授業を終わります」


担当の先生が部屋から出て行き教室内は完全に放課後ムードになっていた。


いつもなら駐在所に向かうところだが、今は三日間の完全休暇。だから、駐在所にいっても仕事を手伝うことは出来ない。


「暇だ」


「えっと、今からようやく放課後だよね? 周は何もしないのかしら? 普通は私のように『GF』の仕事とか」


「オレは三日間の完全休暇だ。仕事をしたら怒られる」


「なるほど」



メグが納得したように頷いた。


中学生の時に幾らか和らいだとはいえ、普通とは異なった生活をしていたからな。こういう時は何をしようか本当に困る。


せめて何かすることがあればいいんだけど。


「おっ、周は暇なのか? だったらオレ達と遊ばねえか? 暇なんだろ」


「それもいいんだけどな、暇だし学内でも見て回ろうかな」


「そう言えば、ゆっくり学校内を見て回ったことがありませんね。私もついて行きます」


そうと決まれば即行動っと。


「ちぇっ。せっかくFBSを一緒にやれると思ったのにな」


「FPS? 俺様達はそんなのしないぞ」


「ハト、真顔で言わない方がいいよ。ファーストパーソンシューティングじゃなくてフュリアスバトルストライカーズ。略してFBS」


聞いたことはあるな。フュリアスのコクピットを再現した装置で遊ぶゲームセンターの筐体だっけ。前に悠人が熱く語っていた。


反応がかなり遅いから実戦としては全く使えないと。リリーナが言うには練習としては普通に使えるらしい。


まあ、興味はあるけど値段が高いって噂だしな。


「健さんと僕のコンビは学園都市内部で最強だからね。だから、周達ならどうかと思ったんだけど」


「悪いが、オレの乗るフュリアスは普通のものとかけ離れているから出来ないぞ」


というか、あんなのが実現する未来があるならオレは本気で驚いてしまう。マテリアルライザーはフュリアスの練習機よりも扱いにくい。


まあ、そんな二人と戦えるなら悠人とリリーナの二人だろうな。学園都市『GF』のフュリアス部隊の中で一番合っているのがこの二人だし。


「残念。すごいFBSパイロットはいないのかな?」


真人は本当に残念そうに笑った。


オレは知っているが言うほどのことではないだろう。


オレがカバンを掴んだ時、夢が何かを決めたように近づいてきていた。


「あのさ、周君、もし、良かった、ら、弓道部、に、来ない?」


「弓道部? そういや、孝治が時々参加してるって聞いたことがあるな」


弓道と孝治の使う魔弓は少し違うが、実体のあるものかないものかの差以外は共通性が多い。


魔力の矢も風の影響を普通に受けるからだ。だから、弓道をやるのは『GF』の弓使いとしては当たり前でもある。


「うん。先輩も、連れて来て欲しいって。ダメ、かな?」


「いや、大丈夫。由姫も大丈夫だよな?」


「大丈夫ですよ」


由姫も頷いてくれる。オレはカバンをしっかり握り立ち上がった。






矢が高速で空間を駆け抜ける。そして、的に突き刺さった。すかさず放たれる矢。それも的に突き刺さる。


オレは孝治の矢の放ち方を見ていた。完全な精神集中と共に連続で放たれる矢は的に確実に突き刺さる。完全に集中した孝治には聞こえていないだろうな。


「きゃーっ!」


「孝治くーん!」


「すごーい!」


一言で片付けるなら取り巻き達。ただし、弓道場の外から見ている。孝治はなんだかんだ言って優しいからな。


それにイケメンだし。


孝治は小さく息を吐いて弓を下ろした。的には58にものぼる矢が突き刺さっている。これを一分間で放ったと聞いたら誰もが疑うだろう。


「周、来ていたのか?」


そこでようやく孝治がオレに気づいた。オレは軽く肩をすくめる。


「さすがだな。ペースは遅かったけど」


「ここでは精神集中で放つのが目的だ。数を打つわけじゃない」


「納得」


孝治と話していると未開封のペットボトルが横から差し出された。


「花畑君、お疲れ。そして、君が海道君か。星村君が連れて来たみたいだね。私は弓道部キャプテン折原皐月。よろしく」


「第76移動隊隊長海道周。孝治が世話になっていたしちょうどの機会だからやってきた。ところで」


オレは頬をかきながら周囲を見渡す。弓道部の部員らしき面々がいつの間にか取り出したカメラや色紙を構えていた。夢が少し離れた場所で申し訳なさそうな顔になっている。


今から色紙を書く時間になるのか。


「ちょっとの間部活を休憩にしてもらっていいか?」


「私の分も頼む」


そう言いながら折原皐月も色紙を差し出してくるのであった。いや、まあ、覚悟をしていないわけじゃなかったけど。


こういうことは昔にはなかったなと思いつつオレは色紙を手に取った。






的に矢が突き刺さる音が鳴り響く。孝治がしていたような高速かつ連続で突き刺さる音はあまりない。まあ、これが一般的なんだけどさ。


その様子をオレは見ていた。集中しだしたらオレらの存在を忘れてみんなが黙々ど矢を放っている。一部はオレをチラチラ見ているけど。


名を挙げるなら夢。夢はチラチラとこちらを見て弓を構えている。普通は当たらないはずなのだが、矢は的の中心を捉えていた。


かなりの技量、というより戦闘経験がありそうな感じだ。


「海道君はどうやら星村君にご執心らしいね」


折原皐月がオレの横に座ってくる。オレは軽く肩をすくめた。


「そりゃな。夢は弓道部の中でもかなり強いだろ?」


「見ていればわかると思うが、一年の中で唯一弓を触っている。それは彼女が桁違いに強いというわけだ」


他の一年生らしき姿は弓道場の隅の方で精神集中をしていた。一年生としてはよく見る姿でもある。


ほんの少し前までオレと孝治と一緒に写真撮影とかしていたのにな。


「星村君の実力はここにいる誰もが知っている。だからこそ、一年であの場に立てる。私ですら最初は全く立てなかったのにな」


「夢はそれほどまでにすごいのか。ただ」


オレは夢と視線が合った。夢は慌てて視線を逸らす。それを見ていたオレは微かに目を細めた。


「警戒しているのか?」


「警戒?」


「いや、なんでもない。というか、うちの孝治は迷惑になっていないか?」


「とんでもない。花畑君は弓道部になくてはならない存在だ。彼は教えるのが上手くてね、私がキャプテンになれたのも彼のおかげだ」


「確かに孝治は教えるのが上手いよな」


オレと孝治は戦い方がある意味正反対だからお互いに弱点を言い合うことがある。その時の孝治の言葉は極めて正確であり、アドバイスは極めて役に立つ。


他にも教えてくれることは極めて正確だ。


「孝治が役に立って良かった。これで邪魔になったら土下座しないとダメだった」


「はははっ。それはないよ。君を呼んで良かったみたいだ。みんなリフレッシュ出来たようだしね」


確かに的にたくさん当てている。それを見ている限りオレの行動は上手くいったものだと考えていいだろう。


オレは小さく息を吐いて立ち上がった。その音に今まで瞑想していた由姫も目を開けて立ち上がる。


「なら、オレ達はそろそろ行くとするよ。今日はありがとうな」


「こちらこそ。それにしても、君の妹はすごい集中力だったね。その秘訣を教えてもらいたいよ」


確かに由姫の瞑想はすごかった。オレの音以外には全く反応しないというところも。由姫の頭の中ではオレ以外が排除されてそうだ。


由姫は少しだけ苦笑する。


「三日間飲まず食わずで瞑想をし続ければ嫌でもこうなりますよ」


「ふむ、チャレンジしてみようか」


「頼むから止めてくれ」


オレは小さく溜息をついた。


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