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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第二十三話 暗躍する存在

漆黒の剣が軌跡を描く。だが、それは同じように軌跡を描いた白銀の剣によって弾かれた。


孝治が運命を構える。周囲にいるのは何人ものローブを着た者達。男女様々であるが、学園都市にいる学生でないのはわかる。その面々に孝治は囲まれていた。


エネルギーバッテリーを新しいの変えながら孝治は周囲を警戒する。


数は大したことがない。だが、その質は桁違いまでに高いものだった。まるで、エース級が揃って襲いかかったかのように。


孝治の額に汗が流れる。


「貴様ら、何者だ」


「答える義務はない」


その言葉と共に孝治にローブを着た人達が襲いかかる。孝治は素早く飛び上がった。だけど、大半が孝治に追随するように飛び上がる。


多勢に無勢。もし、周がいれば話は変わったかもしれないがそうは言ってられない。


「くっ」


放たれた魔術を運命で受け流し、素早く迫って来ていた男を斬り裂いた。


だけど、まだまだ敵はいる。


「単独行動は失敗か」


孝治は運命を握りしめる。






「謎の情報?」


その話を孝治が聞いたのは周が倒れたと聞いて駐在所に戻ってきた時だった。委員長が記憶デバイスを片手に頷く。


「うん。調べてみたらナイトメア関連みたいで。さすがに、これは事務として指示は出したらダメだなってね」


「周についていなくていいのか?」


孝治はその記憶デバイスを受け取って尋ねる。治療が必要なら委員長の出番だが、ここにいる以上、さほど重体ではないのだろう。


孝治が出力装置に記憶デバイスを差す。そこから立体ディスプレイに出力させた。


「アリエとベリエの二人が先に治療を終えていて。私の出番はなしだったよ。そこまで重体じゃないけど、三日間は安静にしてくれないと」


「三日か。怪我は胸部から腹部にかけての貫通と聞いたが?」


「うん。戦いながら治療したみたいでほとんど塞がっていたけどね。命に別状はなし。さすが海道君というべきかな」


「その怪我で戦闘中に治療とは。相変わらずの化け物っぷりだ」


普通はそんな傷を受けたら致命傷かよくて動けないのどちらかのはずだ。だけど、周は戦闘をしながら治療した。精神論だけではどうにかならない。


「治療兵いらずだとは思うけど、かなり無茶はしたみたい。私の知る限り、三日間の安静ってほとんどないから」


「デュアルオーバードライブを使って魔力回路がズタズタになって以来だな」


「あれは話が別だと思うけど」


孝治が立体ディスプレイを操作して謎の情報を読む。そこには確かにナイトメア関連の話があった。


白い粉とローブを着た人達。それが商業エリアにあるとある廃ビルの中で見かけたという情報だった。


確かに、これだけあれば調査に入るには十分である。


「匿名の情報か。周達がいった廃工場と一緒だな。罠か?」


「アル・アジフさんから聞く限り、廃工場の方は罠じゃなかったみたい。罠というより侵入者を排除しようと幻想種が出てきたって聞いたし」


「内部告発というわけではないな。『GF』よりも広い情報網を持つのか」


『GF』ですら掴んでいない情報をここまで言ってくるなら『GF』以上の情報網を持っているようだ。ただ、それが孝治からすれば疑問に思ってしまうレベルである。


孝治は自分のデバイスを手に取った。


「俺が行こう。様子を見てくる」


「一人で?」


「ああ。様子を見るだけらならそっちの方がやりやすいからな」


そう言いながら孝治は運命を取り出して腰に身につける。


「一応、光と冬華に連絡を頼む。目的地が近いからな」






商業エリアに存在する数少ない廃ビル。そこはかなり広大なエリアだった。孝治が見ているディスプレイには元はスーパーとして計画されていたらしい。だが、計画元の会社が倒産。とある不動産が買ったらしいのだがそれから全く発達していない。


孝治はディスプレイから目を離した。すでに日は傾き夜が近くなっている。周囲に人の姿も少ない。完全に夜になればそれこそ孝治のフィールドだ。


「行くか」


孝治は走り出した。そして、廃ビルの中に飛び込む。廃ビルは三階立て。すかさず孝治のレアスキルである『影渡り』で三階まで飛んだ。


広がっているのは広大な空間。ただし、何もない。運命を鞘から抜きながら周囲を見渡す。


運命にエネルギーバッテリーを装着して歩き出した。


「気配はない、が、何かはあるな」


そう言いながら孝治が音を立てないように足を少し強く動かした。しかし、埃は立たない。


あまりに床が綺麗だ。いや、綺麗すぎる。


「何か、いるな」


そして、地面を蹴る。それはほとんど無意識の動作だった。孝治がいた場所に矢が突き刺さる。


孝治はすかさず運命を振り切った。


何かの感触とともに何かを吹き飛ばす。


「確かに、ナイトメア関連だな」


周囲に現れる人達。いつの間にか孝治は囲まれていた。ローブを着た人達に。


「『悪夢の正夢ナイトメア』。少し尻尾は掴ませろ」






光と冬華の二人は走っていた。目的は孝治が向かった廃ビルの方角に。


二人の仕事が終わり委員長からの連絡を確認した光が全速力で走り出したのだ。それを冬華が追っている構図でもある。


「光! 先行しすぎよ!」


「今だけは許して! 飛行許可おりひんかったし」


「だから、私も行くって行っているでしょ」


光は速度を緩めない。レーヴァテインを握りしめて走る速度を上げる。


『GF』が武器を持ちながら走るのは緊急事態という意味でもあり、救急車が通る道のごとく人が別れていく。


冬華は小さく息を吐いてさらに走る速度を上げた。


「こっちよ!」


光の手を取り路地裏に入る。そして、壁を蹴って近くの建物の屋上に上がった。光を引っ張りながら。


でたらめな力だが、氷魔術をフルに使い落ちないように方向性を変えているためでもある。


屋上に上がってさらに床を蹴る。建物の屋上から屋上に向かって跳ぶ。


「目的地の廃ビルはこの道がショートカットよ」


「本当? でも、どうして知ってるん?」


「アリエル・ロワソ様からの教え。自分のホームグラウンドの地形くらいは覚えておくようにって。ショートカットなら周に勝つ自信があるわ」


「確かに海道は勝たれへんな」


二人が屋上を跳ぶ。そして、目的地を見つけた。目的地の三階にある窓から見えるのは火花。まるで、武器と武器がぶつかり合うような。


「フェンリル!」


冬華はすかさずフェンリルを呼び出した。フェンリルは即座に窓に飛び込む。そして、窓を割って中に飛び込んだ。


冬華も刀を取り出しながら飛び込む。そして、目の前に運命が迫っていた。


「ちょっと!」


すかさず宙返りを行って運命をギリギリて回避する。運命を振り切った孝治も少し驚いたまま何事もなかったように背後から斬りかかってきたローブの男の槍を受け止めた。


「冬華か」


「冬華かじゃないわよ! 味方を殺すつもり!?」


「つい」


「ついって何よ!」


冬華が叫びながら放たれた矢を刀で叩き落とす。そして、刀を弓を持つローブの女に投げつけた。刀が突き刺さり、女が倒れる。そこに飛びかかるローブの人達。


「邪魔」


冬華は腕を振った。それと同時に投げた刀がまるで鎖がついているかのように動いた。


冬華の手に刀が戻ると同時に斬り裂かれ倒れるローブの人達。


「なかなかやるな」


「誉めても何も出ないわよ。それにしても何なの?」


「わからない。急に襲われた」


「どうせナイトメア関連でしょうけど」


二人が背中合わせでお互いの武器を構える。ローブの人達は一部が倒れている人を、残りが二人を囲んでいた。


うかつに飛び出せない。


「さて、これからどうするつもり? 完全に膠着よ」


「膠着だな。まあ、いいだろう。もうすぐ夜だ。そうなれば」


「引け」


急に響いた声にローブの人達が動き出す。二人が呆然すると同時に撤退する面々の中から一人だけが二人の前に出た。


ローブを着た男。被ったフードからは微かに赤い髪が見えている。


「てめぇら、第76移動隊だな」


「何者だ?」


孝治が尋ねる。男はニヤリと笑みを浮かべた。


「今は名乗る名はないな。今度会う時に名乗ってやるよ。生き残れたらな!」


その瞬間、そのフロアが一気に炎に包まれた。孝治と冬華の二人にも炎が迫る。


「運命!」


「フェンリル!」


お互いがお互いに最大限の力を使い炎を止める。孝治は運命によって炎を斬り払い、冬華はフェンリルの力を借りて炎を止める。


だが、その時には男の姿は無かった。


「逃げられたか」


「今はここから脱出する方法を考えた方がいいわよ」


「大丈夫だ、問題ない」


その瞬間、周囲にあった炎が全て炎の蝶に変わった。それと同時に『炎熱蝶々』を背中から出す光が部屋の中に入ってくる。


大量の『胡蝶炎舞』と共に。


「大丈夫?」


「助かった」


そう言いながら孝治は光に向かって笑みを浮かべた。


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