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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第十五話 依頼

「シェルター点検?」


オレはキーボードの上を走る指を止めて委員長に尋ねていた。委員長が頷きながら資料を渡してくる。


どうやら時々定期的にやっているシェルター点検のことらしい。初耳だけど。


「そうみたい。海道君も知らなかった?」


「シェルターがあるのは知っていたけど、点検があるなんて一つも。ちょっと待ってくれ。資料を読む」


渡された資料を上から下までじっくり見る。じっくり見ると色々と内容がわかってきた。


シェルター点検は基本的に様々な部隊が順番にやっているらしい。点検する中身はシェルターの入り口を閉じることが出来るか、シェルターの中にある貯蔵庫はちゃんとしたものが入っているか等々ややこしいことは一つもない。


「点検日は来週の月曜か。今が水曜だから五日後。何か予定はあったっけ?」


「ちょっと待って。えっと、音姫さん孝治君、光が教官として別部隊に。悠人やリリーナもフュリアスの操縦教官として格納庫方面に。予定が空いているのは、由姫、亜紗、アル・アジフさん、都さんに海道君」


「メンバーとしては十分だな」


というか、例えドラゴンが出て来ても倒せそうだ。


実際に出たら笑うしかないが。


「私達は待機として、悠聖君もいるから大丈夫だと思う」


「だろうな。レヴァンティン、四人にメールを頼む。朝から任務で」


『朝からですか? 別に夕方でも』


「シェルターってことは各シェルターに繋がる通路もあるだろ。そこも点検してみる」


点検しすぎだと言われるかもしれないが、オレ達からすれば普通だ。第76移動隊はもしもの時のための実働部隊。その行動力の高さはかなりのレベルでなければならない。


それに、シェルターの中なんて知らないからな。探検としては十分だ。


「わかった。一応、シェルターの通路を調べるから。後、さっき入った匿名の依頼」


委員長が渡してくるもう一枚の紙。オレはそれを手に取った。そこには、


「白東場空雪? 何だこりゃ?」


「わからないけど、ポストに投函されたの。お金と一緒に」


「アルを呼んでくれ」


オレはこういうものに一番頼りになる人を呼んでもらうことにした。






「わからぬ」


「ですよね」


紙を見て数十秒後、アルはオレに紙を返してきた。オレだって完全にお手上げだ。


「法則さえわかれば解読は可能じゃが、あまりにヒントが少なすぎる」


「だよな。白。東。場。空。雪。共通するものがない」


「文字を変えて繋げるとかはどう?」


「全部で120のパターンがある。どれも意味をなさない」


そんなものはもうオレもアルも試している。何かヒントさえあればな。


東は方角と考えれば、それ以外の意味がわからない。場ってなんだよ、場って。


「あれ? 何しているの?」


顔を寄せ合っていたオレ達はその声に顔を上げた。そこにいるのは白とピンクによって作られた学園都市専用の『GF』女性常務服を着たメグの姿があった。


メグは何かの資料が入った封筒を抱えている。


「どうかしたか?」


「隊長が第76移動隊に持っていけって。何を見てたの?」


お手上げだったオレ達はメグに文字が書かれた紙を渡した。


「えっと、東工場エリアにある空印と雪丸の合同工場で白に関する何かがあるみたいね」


「えっ?」


一体、どこからそんな情報を。


「最初の白は、周にとって大事な話題。次の東は方角。場はエリアの前の文字。業なら商業エリアだし、校なら学校エリア。最後の二つが固有名詞の一部」


「なるほど。でも、どうしてわかるんだ?」


「小学校の頃に流行った暗号だからね。わかるのは私達の小学校時代のクラスメートだから」


「わかるわけないか」


そんな限定的な場所なら確実にわからない。暗号はいくつか勉強したオレや実際に暗号に触れていたアルですらわからないし。でも、メグのおかげで情報は組み上がった。


オレは委員長に尋ねる。


「今動けるメンバーは?」


「ここにいる三人ともうすぐ来る予定の都さん。後は、空の巡回に出ている楓とエレノアさん」


オレがフロントに出て都がセンター。バックにアル。後は、メグも数えておこうか。


戦力としては十分だな。


「メグ、お前のところの隊長に連絡。第76移動隊に借りられるって」


「私も? 今日は訓練日だったのに」


「実戦に勝るものなし。委員長は待機。一応、近くにいる音姉と由姫に連絡して用事が終わったら来るように言ってくれ」


孝治か悠聖を呼びたいところだったけど、呼べるような状況じゃない。二人共商業エリアの方に向かっている。


オレはレヴァンティンを手に取った。


「白、ね」


心当たりがあるオレからすれば最悪な文字だが、もしもの時にあの力の完全解放を考えていた方がいいだろうな。


オレは小さく息を吐きながらレヴァンティンの剣を取り出し鞘を腰に身に付けた。






空印と雪丸の合同工場。学園都市が始まった当初に存在した学園都市最大の工場。工業高校の生徒が機器のメンテナンスなどを実地てするなど学園都市の繋がりはかなり深かった。


だけど、三年前に機器が爆発する事件があり、ちょうどいた工業高校の学生と従業員合わせて38名が死亡して操業停止になった。


今は全く操業していないはずなんだが、


「気配があるな」


敷地のすぐ近く。フェンスのそばでオレは小さく溜息をついた。工場の中から話し声がする。


学園施設エリアからは離れているからこんなところで遊ぶ子供はまずいない。いないが、時々いる。


でも、それが関係しているのかはわからない。


「周様、数はどれくらいですか?」


「最初からバラまいていないから感づかれる可能性がある。無理に探るべきじゃないな」


「気づく者は気づくからの」


そういうアルも気づく一人だ。魔術の才能に長けた人なら普通に気づくことが出来る。


オレはレヴァンティンの柄を握りしめて敷地内を覗き込んだ。人の姿は見当たらない。そして、視線も感じない。


「メグ、準備はいいか?」


「だ、大丈夫」


多分、こういう潜入ミッションは初めてだろうな。緊張するのは無理もない。


オレは敷地に入る門につけられた鎖をレヴァンティンで叩ききった。後で物理魔術でくっつければ問題ない。


「潜入ミッション、開始」


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