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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第十四話 体育祭の役割

「皆さんに連絡があります」


帰りのHR。オレは帰りの準備をしながらレヴァンティンに入ったメールを確認していると、唐突に担任の声が耳に入った。


HRは瞬間で終わることが有名だったのに珍しい。


「六月に学園都市全体で体育祭があります。そのため、体育祭クラス代表を明後日までにクラス代表以外から皆さんで決めてください」


学園都市はあまりにも大きすぎる。もし、各学校がそれぞれ体育祭が起きた場合、学園都市の権力者、『GF』代表のオレやら学園自治政府代表の楠木大和が引っ張りだこになる。というか、オレや楠木大和が代表じゃないそれを行って代表が共に疲労で倒れる事態が発生した。


だから、学園都市では体育祭は一括ですることを決めたのだ。


おかげで秋にある文化祭と共に学園都市の名物となっている。まあ、学校対抗試合なんて学園都市しか出来ないし。


「では、よい放課後を」


そのまま担任が出て行く。こういうところが本当にすごいなと思うんだよな。


放課後となりみんなが席を立つ。


「兄さん、放課後は」


「あれだな」


「あれですね」


日々を暮らしているからこういうことで通じるからやりやすいんだよな。


「うわ、すごいね。あれで通じるところを始めて見たよ」


「これが世に言うバカッ、ぶるっ!」


とりあえず、冷やかしてきたハトを殴りつける。


みんなは全く同情しない。


「それと、殴られて廊下まで弾丸ライナーで飛んで行くのも」


真人が呆れたように言う。オレは振り切った拳を下ろした。


「それにしても、体育祭か。久しぶりだな」


「俺も俺。俺は一年ぶりだけど周と由姫は二年ぶりか?」


「由姫は二年ぶりでオレは四年ぶりだ。去年も一昨年もどうしても外せない用事があったからな。一番気になるのは学校対抗試合だけど」


確か、メンバーは全部で15ほど選び、様々な競技を学校代表としてするはずだ。ちなみに、四年前からずっと都島学園が優勝。


孝治とか亜紗とか音姉とか『GF』でもトップレベルの面々が暴れたからな。仕方ないと言えば仕方ない。


多分、今年も優勝だろうな。


「都島学園の優勝は確定だと私は思うよ。周に由姫。二年のエルベルムさん、リンリーエルさん、白川さん。三年の花畑さん、中村さん、田中さん、白川さん、長峰さん、木村さんで十一人固定だし」


「第76移動隊の主力メンバーですからね」


確かに、メグが言うメンバーは選出される可能性がある。リリーナはそれほど強くはないが、学園都市内部で言うならかなり強い。


ここにメグとか入れたら完璧か。


「トトカルチョが全く面白くないな。もっと面白い相手がいたらいいんだけどな」


健さんが不満そうに言うが、その要望に答えるのはまず無理だろう。第76移動隊の相手を出来るのは第一特務か『ES』の精鋭部隊のみ。


真っ正面からの戦闘ならになるけど。


まあ、そんなこんなで要望にはまず無理としか言えない。


「一番燃えたのは五年か六年前のルーチェ・ディエバイトのトトカルチョだよな! まさかの同時優勝! あの勝負は見応えもあった」


由姫が優勝した時のやつだな。まあ、亜紗がトトカルチョ総取りという凄まじい結果にもなったけど。キャリーオーバーが無いか調べてみたら、年一回だからキャリーオーバーは無かったらしい。


当の本人は顔を真っ赤にしているが、あの勝負は本当に見事だった。今は第一特務にいる二人と対等に戦っていた。


「んな勝負があればいいんだけどな」


「悠聖と俊也が戦ったならそうなるかもな」


「悠聖さんが勝つと思うんですけど」


由姫が不思議そうに首を傾げる。悠聖のダブルシンクロは反則中の反則にとでも言うかのように強力だ。だから、一見はそうなるのだが、


「悠聖の場合は個々の精霊は弱いんだ。対する俊也はほぼノータイムで全精霊を召喚する。そのタイミング次第じゃ悠聖を劣勢に持っていける」


精霊召喚師の最大の弱点が精霊の召喚時間だ。悠聖の場合はアルネウラと優月の召喚に約八秒かかるが、俊也は全精霊が一秒未満。ゼロ式精霊銃があるとはいえバカに出来ない時間。


そのタイミングでどこまで動けるかどうか。


「どちらも利点が多いからな」


「話はよく、わからないけど、体育祭クラス代表は、どうする?」


夢の言葉に誰もが現実に戻った。確かに、それがかなりの問題だ。そんな面倒なものは誰もならないと思う。さらには我先にと教室から出ているし。


こんなものなら決めれるものも決まらない。


「次の長いHRを使うしかないだろ。予定が入らないならだけど」


「予定はないはずだ。先生から聞いている」


一誠が手帳を開きながら言う。どうやら先生から情報を集めているみたいだが、一体誰からもらっているんだ?


「さすがだな一誠。俺様ですら聞いてないぞ」


「私も聞いてないわよ」


「安心しろ。オレもだ」


そんな話があるとは思えないし。もしかしたら、渡り歩いているのか?


「兄さん。兄さんは高校の体育祭について詳しいんじゃないですか?」


「急になんだよ」


「兄さんがいつも体育祭の会議に参加しているからです。そういうものには詳しいんじゃないかと思いまして」


「お兄ちゃんって呼ばな、ぐはっ」


由姫の拳がハトを天井に打ち上げた。見事に天井にぶつかって床に激突する。それにしても防御力高いよな。


「まあ、詳しいっちゃ詳しいな。体育祭は学園都市の花だから、警備体制もかなりキツくなるしな。常に毎回第一特務の一部が他の正規部隊、地域部隊を引き連れて警護に来てくれるし警察も来る」


「そんなことをしなくても私は大丈夫だと思いますが」


「簡単に言うなら祭りだからはっちゃける奴らが増えるんだよ。犯罪を行う奴は少ないけど、ちょっとした違反が多くなる。そういうことだ」


去年なんてオレや由姫は学園都市内を駆け回っていたからな。まあ、それを決めたのはオレなんだけど。


第76移動隊は行動力が高いし、由姫は空も飛べるから準空戦を持つオレと二方向から追いやすい。


「なるほど。確かに、体育祭ではちょっとした違反者が多いと聞きますし」


「夢は特に気をつけろよ。可愛いし奥手だから路地裏にでも連れて行かれやすいし」


「はう」


夢の顔が真っ赤に染まっている。それを見ていた由姫は小さく溜息をついていた。オレが何か悪いことをしたかな?


「じゃ、スリとかも多いのかな? 僕は狙われやすいらしいし」


「レヴァンティン、どうだ?」


『いつもと比べて三割増し、と言ったところですが、財布の落とし物が五割増しですね』


つまり、スリというより財布を落とす方が多いみたいだ。


『犯罪者は確かに増えますが、マスターや真人さんの言うような人はむしろ少なくなる傾向です。いつもより警備が厳しいですし』


「ついでに屋台も色々ある。財布の紐も緩くなるからスリは狙うが第一特務がな」


「第一特務の凄さは噂しかない。本当なのか?」


第一特務の面々はあまり表舞台に立たない。だから、その力を一誠のように疑問視するけど、その力を知っているオレ達からすれば冗談じゃない。


まあ、そう思いたいのはよくわかるけど。


「第一特務で一番弱い男が千里眼ってレアスキルを持っているんだ。簡単に言うなら、不審者を一瞬で見つけるスキル」


「噂じゃ有名ですよね。本当にいるか見たことはないですけど」


「確か、50km先のスリを見つけて逮捕したことがあるらしい」


その言葉に沈黙が降りた。見たオレからすれば信じられない奇跡だった。というか、普通は無理。


浩平ですら最大で15kmらしいのに。


「そんな人がいるなら安心ね。でもさ、どうして体育祭は大規模なの? 警備にお金をかけるなら身内だけでもいいのに」


「それは、私も気になっていた。周さんは知っていますか?」


「体育祭の役割だろ。一つは学園都市を見てもらうため。学園都市は閉鎖的な側面が強い。学校見学も学園都市が一括でやっているからな。だから、スポーツで優秀な成績を出す学校はアピールのチャンス。もう一つが学園都市が身近であること」


オレの言葉に誰もが首を傾げた。傾げられるのはわかっていたけど、全員からとは思っていなかった。


オレは窓の外を指差す。


「学園都市は自然エネルギーをふんだんに使った都市だ。つまり、技術力が高くて身近に感じられない時がある。でも、その技術に触れてみて思った以上に技術に差が無く身近に思える。それが狙いだ。文化祭はただはっちゃけるだけだし」


はっちゃけ方がかなりおかしいけど。文化祭だけは未成年者の飲酒は口頭注意ですまされる。よほど飲んでいなければ。


「体育祭は来年入って来ようとする生徒を獲得するため。まあ、知名度とかでそんなことしなくても入って来るんだけどな」


かなり特殊な授業をする学校もあるし。


「詳しいんだな」


一誠が何故か目を細めながら尋ねてくる。オレはそれに対して肩をすくめて返した。


「それほどでも」


「一番の問題は体育祭クラス代表になるのが誰か、よね。夢はクラス代表で除外だから」


「オレも除外な」


『GF』代表として会議に出なければならないし。


「おっ、もうこんな時間だ。真人、ワカメ、俺様達の大食いの時間だぜ」


「僕は確定なんだ。じゃ、僕らは先に帰るよ」


「それでは、また明日」


ハト達が教室から出ていく。オレは由姫と視線を合わした。


「駐在所に向かいますか」


「うん」


体育祭は終盤ぐらいになる予定です。

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