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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第七話 努力の力

薙刀て薙刀がぶつかり合い片方が大きく弾かれる。弾かれたのはメグ、北村恵の薙刀だった。すかさずメグに迫る薙刀をギリギリで避ける。


それを見ていた悠聖はゆっくり笑みを浮かべた。


「やるじゃねえか」


悠聖がすかさず薙刀を振る。メグはそれを受け止めた。力だけなら勝っているという実感はある。だけど、一つ一つの威力が高い。能力を制御されているのにあらゆる分野で押されていた。


洗練された動き。何回も、何十回も、何百回も、何千回も、絶え間なく降り続けたに違いない。その動きでメグを攻めてくる。


だけど、メグは驚きながらも精神が落ち着いていた。力では勝てない。スピードでも勝てない。でも、薙刀を振った数だけは負けるつもりはなかった。


大きく後ろに下がるようにステップをする。周があの敵見せたステップ。それを真似しながら回転しつつ前に出る。そして、勢いよく薙刀を縦に叩きつけた。


「おいおい」


悠聖が大きく後ろに下がらせる。あまりの勢いに受け止めた衝撃のまま後ろに足が滑ったのだ。そして、驚いている。


今の衝撃は普通の打撃なんかじゃない。あんな無理やりなステップを踏みながらの回転攻撃は威力が大きく落ちやすい。足場が安定しにくいのと、上手く回転しながら上手く叩きつけなければ外れやすい。だけど、メグはそれで悠聖に向かって縦に叩きつけた。


「天才? いや、違う。この動き、何万回と振っているな」


悠聖の言葉には賞賛が混じっていた。薙刀を合わしていればわかる。メグの攻撃は純粋で混じり気のない素直な攻撃。その分、攻撃は読みやすい。ただ、その素直さはかなり高く、あらゆる体勢からでも威力の似た打撃を放てる。


血の滲むような努力。それがなければここまでは扱えない。だけど、天才じゃない。天才ならここまで素直じゃない。


基礎を積み上げているからこそリミットをつけているとはいえ悠聖と互角に渡り合っている。


「力と速度は負けていても、努力じゃ負けないってか?」


「努力の積み重ねはいつか結果を生む」


「賛成だ。特に周はその手本だな。あいつは器用貧乏の天才だ。でも、世界で認められる一人。努力は結果を生む。だからこそ、オレは本気で行かないとな」


悠聖が地面を蹴って薙刀を振り切る。その速度は今までより速い。メグはすかさず薙刀で受け流した。


受け流したはずなのに手が痺れている。これではまるで周の時と同じだと思った。


打撃の瞬間、思っていた以上に手にインパクトが来ている。まるで、当たる寸前で威力が上がったように。


「周には悪いがリミットを解除させてもらった。君の力を理解したからこそ、オレは君に全力を出す。殺す気で行く」


膨れ上がる悠聖の気配。それを感じてメグはごくりと唾を飲み込んだ。


これが実戦経験豊富な部隊の隊員。申し分なく恐怖が沸き起こってくる。でも、顔に笑みが浮かんでくる。


自分の力がどこまで通用するのか、我流でどこまで戦えるのか。それを試してみたい気持ちがうずうずしてくる。戦いが好きというわけじゃない。でも、今は目の前にいる人、白川悠聖に全力を叩きつけたい。


「望むところよ」


薙刀を握りしめる。我流の薙刀術。それでも作り出した技が五つある。さっきの回転攻撃である『鳳』の他に四つ。この状況ならあれが使える。


メグは一歩を踏み出し薙刀を振り下ろす。すでに薙刀の刃には魔力を纏わせておりそれを放つ。悠聖は前に踏み出しながらそれを弾いた。だが、メグは止まらない。薙刀を握りしめ、さらに一歩を踏み出す。


振り切った薙刀を同じ軌道で振り上げる。その攻撃は不意をつくには十分。


「『燕』!」


振り上げた薙刀は悠聖によって受け止められる。地面を振り切れなかった刃から放たれた魔力の刃が大きな傷跡を残す。


「嘘」


「初見殺しの技だな。だけど、相手が悪かった。周もよく似た技が使えるからな」


メグは一歩後ろに下がる。悠聖も一歩後ろに下がった。


今の一撃が防がれるとは思わなかった。普通なら武器を弾かれたところに魔力の刃が直撃するはずだったのに。


実際にメグの一撃は白百合流さえ知らなかったら簡単に通用する一撃だった。最初の魔力の刃を受け止めたところに薙刀が受け止めたものを跳ね上げながら魔力の刃を当てる。白百合流を知っていても対処しずらい攻撃。


ひたすら薙刀を振ったからこそ出来る芸当だった。それは悠聖も肌で感じている。


稀にいるんだよな。努力だけでかなりの実力を持てる人が。


文字通り、努力の天才。


周と同じタイプ。違いは実戦経験と戦いを始めた年代だけ。


「君はどうして『GF』に入った?」


だから、由姫はメグに尋ねた。メグは薙刀を構える。


「強くなりたかった。何をするにしても努力しなければならない私は強くなりたかった。自分を変えたかった。根暗で弱かった自分を変えたかった。ただ、それだけ」


強くなることで何かを変えることが出来る。メグはそう信じている。信じているからこそ強くなろうと努力をした。


それは周と同じ。まるで、鏡の中にいるような状況だと悠聖は感じた。


強くなろうと今でも努力している。現にメグは悠聖の隙を探っている。その目はどこか周と似ているものがあった。


「生い立ちは違えども、根本的な動作は似ているのか。どうりで周が目を付けるわけだ」


この言葉は目具には聞こえていない。悠聖の心の中の言葉だ。悠聖は薙刀を片手で構えた。そして、もう片方の手で腰のホルダーにあるゼロ式精霊銃を引き抜く。ゼロ式というのはエネルギー弾を補充して放つことが出来る浩平のものと違い、精霊との契約によるエネルギーを弾丸で放つものでエネルギーを弾に詰めるリロード式には威力はかなり劣るが悠聖の様な強力な精霊がいる場合は関係がない。


「さあ、行くぜ」


悠聖が地面を蹴る。それに対してメグも地面を蹴った。一歩踏み出しながら薙刀を振り下ろす。それを悠聖は薙刀で受け流しつつ精霊銃の引き金を引こうとした。だけど、メグの体は受け流した割りには前に出ている。まるで、受け流されることを想定されていたかのように。初めからイメージトレーニングをして通常の訓練でもまともにやってなければ成功しない技だ。もしかしたら、最初からそうなることを考えていたのかもしれない。


その悠聖の考え方は当たっていた。受け止められることはメグは想定はしていないが受け流されることはあると思っていた。だから、悠聖の行動を見た瞬間に体が勝手に動いていた。受け流してくるからこそ体を捻りながら薙刀の刃ではなく薙刀の石突で殴りかかる。目的は銃口を向けている精霊銃。


さすがにこれは想定していなかったからか悠聖は精霊銃を叩き落とされそうんになった。でも、そこは精霊銃で薙刀を受け止める。その時には薙刀の刃が向かってきていた。薙刀で受け止めるが完全に鍔迫り合いに近い状況に持っていかれる。


強いわけじゃない。悠聖のとって何度も経験したことがあることだが、だけど、その動きと流れは完全に相対してきたものとは違う、周と同じやりにくさを感じていた。


実戦慣れした動きでもなければ、レアスキルに頼ったごり押しでもない。昔の周達の様な、努力によって強くなろうとしていた者たちの力。バカにできないくらいの力を持っている。


「じゃ、次で終わらせるぜ!」


悠聖はその言葉と共に力任せに、片手で、メグを弾き飛ばした。その時には薙刀はメグに迫っている。普通は薙刀は両手で構えるのにまるで、重さがないかのように操っている。それにメグは刃を合わせた。それと同時に悠聖の精霊銃からエネルギー弾が放たれる。


放たれたエネルギー弾は凄まじい速度でメグに迫り、薙刀の一部を砕く。だけど、それだけだ。


「なっ」


悠聖が驚いた瞬間、メグは一歩を踏み出していた。合わせた薙刀で受け流しながら悠聖の薙刀の柄に体を当てながら回転する。


「『鳳』!」


そのまま悠聖に薙刀を叩きつけた。悠聖はとっさに飛び上がり横向きに振られる薙刀を飛び越える。完全に回転していたメグはその行動を読むことが出来ず簡単に避けられた。そして、首元に突きつけられる薙刀。


「終了。てか、リミット外してもその戦闘能力かよ」


「えっと、何か悪いところでもありました?」


「ない。型にはまりすぎているけど、その型を他の型で補っているから充分だろ。まっ、悪くない戦闘だ」


「ありがとうございます。あれ?」


メグはふと空を見上げた。そこでは凄まじい空中でのバトルが勃発している。簡単に言うなら収束系の攻撃が空を飛び交いまくっているのだ。外れて行く収束系の攻撃は周囲にある薄い膜の様なものに当たって散っている。


メグは周囲を見渡した。


「あれ? いつの間に結界が」


「ベリエとアリエだろうな。二人の結界能力はむちゃくちゃ強いし。まあ、いつ見ても怪獣大戦争しか思いつかないけどな」


二人の視界の先にある空には激しく飛び回りながら戦う楓とエレノアの姿があった。どちらも砲撃術師としては超一流のため様々な距離や魔術を使って戦っている。


収束系と収束系のぶつかり合い。楓は風を圧縮したものや光を放っている。対するエレノアは炎を圧縮した光とでもいうかのようなものを放ちまくっている。空を縦横無尽で駆けまわり、超人的な魔術を連射して戦っている。


「いやー、さすが二人だな」


その言葉に二人が振り向くと、そこにはボロボロになった周の姿があった。ベリエとアリエはいつのまにか由姫を戦っている。冬華は亜紗と戦い、光は地面に座り込んでいた。


「おっ、負けたか?」


「ああ。さすがに、二人の連携は凄まじかった。リミットかけているとはいえほぼフルボッコ」


「さすがの周隊長も無理か。というか、周! お前、わかっていてやっただろ!」


「当たり前じゃん。メグがどこまでこの隊についてこられるか試してみたかった」


「どういうこと?」


メグが不思議そうに首をかしげる。周の言葉には悠聖も首をかしげていた。


周は笑みを浮かべる。


「第76移動隊に入らないか?」


その言葉にはさすがの悠聖ですら口をぽかんと空けることとしか出来なかった。

悠聖が薙刀を片手で振り回せるのは力が強いからというわけではありません。精霊武器の基本的な重さは大体0.1kg以下で上位の精霊であればある程重さは軽くなります。(セイバー・ルカとディアボルガは例外)なので、優月の薙刀はほぼ空気です。魔力も纏っているので抵抗もほとんどありません。

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