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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第五話 一日の終わりに

ユニーク10000突破しました。読んでくださってありがとうございます。

オレは手に持っていた資料を机の上に置いてベッドに寝転がった。


検査結果は予想通り。


だけど、『悪夢の正夢ナイトメア』の持ち主が関係していることがわかり、事態はただごとじゃなくなった。今まで通りにクスリの事件だったら楽だったが、そうは行かないようだ。


これからは大規模な捜査を行っていないとな。


学園自治政府が関係しているのは確かだが、自治政府自体を潰しかねないことを普通はするだろうか。やるとするなら下っ端。そこを洗いざらい調べるしかないか。


そう考えていると部屋のドアがノックされた。


「はい、どうぞ」


オレの言葉と共にドアが開き花柄のパジャマを着た音姉が資料を片手にやってきていた。オレはベッドから起き上がる。


「弟くんと情報交換したくて」


「そうだな。音姉の方は琴美からか?」


「うん。すごいよね、琴美は」


オレ達が狭間市から学園都市に戻った半年後、オレ達を追いかけて琴美が学園都市にやって来た。護身術も身につけていたので第76移動隊に入隊。事務をやりながら情報収集を行っている。


というか、情報収集能力があまりにも高い。


「私の情報から。都島大学にもナイトメアの噂は広がっているよ。悪い方向で」


ナイトメア。


今、オレ達が追いかけているクスリの別名だ。うつ病に対して使われる薬でもあり、合法ドラッグとなっている。向精神薬としてはかなり優秀な部類なので取り締まれないのが現状である。しかも、中毒性がそれほど高くないのも特徴だ。


だが、それをクスリとして扱えばそのまま他のクスリに手を伸ばすリスクが極めて高いというのもある。売られているのは主に商業エリア。『GF』の監視下じゃないからなかなか摘発出来ない。


「悪い方向ってことは」


「うん。中毒性が低いからすぐに抜けられる。痩せれる。気分が高揚する」


どれも全て当てはまっている。当てはまっているからこそ質が悪い。手を出す人が増えやすいのだ。合法ドラッグでもあるというのが追い風かもしれない。


中毒で倒れるのも少ないから見つけにくいし。


「試してみたいという人もいたかな。問題として、ナイトメア以外のクスリも回っている」


「ったく、どこからそんなクスリが出ているんだか。内部と外部を通る流通ルートは全て押さえているよな?」


「うん。多分、個人が個別にだと思う」


どれだけ水際で食い止めようとしても抜けて行く数はある。だから、これは止めることは出来ない。ずっと戦っていくものの一つだろうな。


問題としては、ナイトメアが学園都市内部の供給量より出回っている数が圧倒的に多いということ。


他のクスリ、覚醒剤とかよりも遥かに外部から入っているとしか考えられない。それを個人が個別にするのはかなり大規模である。


「で、次が琴美からの報告」


さて、どんな報告が来ることやら。


「ケリアナの花が大量に学園都市に入っている」


「はぁ?」


オレは思わず聞き返していた。今、何て言った?


「だから、ケリアナの花が大量に学園都市に入っているって」


「ケリアナの花って魔界原産の花だよな。観賞用としても使えるから人気が高い花だろ? それが大量に入ってきたからなんなんだ?」


「そっか。弟くんは魔界の草花に詳しくなかったんだ。じゃ、リリーナちゃんからの言葉。ケリアナの花の根は麻薬になる」


「ちょっと待て」


琴美がどうやって情報収集しているか気になってくるが、どうしてそこまで繋がるかはわからない。


でも、その情報はかなり使える。


「市場で出回っているのはもしかして」


「もしかしたら、私達が掴まされたのは本当の薬で、ナイトメア自体は別にあるかもしれない。これが琴美の結論」


「見当違いだったってわけか。オレ達が見事に踊らされていたのか」


久しぶりの経験だ。ここまで食い止められなかったのはナイトメア自体が別物だったなら納得出来る。


これで対策は立てやすくなった。


「レヴァンティン、孝治にコールを頼む」


『もう繋いでいますよ』


『話は聞いていた』


「勝手に繋ぐな」


オレは小さく溜息をついていた。ありがたいと言えばありがたいのだが勝手に通信を開くデバイスなんて聞いたことがない。


まあ、レヴァンティンは普通じゃないから仕方ないか。


「孝治、明日から張り込めるか? 学園自治政府にも気づかれないように」


『わかった。怪しいところは張り込もう。しかし、レヴァンティンがここまでハイテクだったとは』


「オレも驚いている。何かあったら連絡を頼む」


『ああ』


通信が切れてオレはレヴァンティンに軽く拳を入れた。


『何をしるんですか? マスターのために私は頑張ったのに』


「先走りすぎだ。まあ、ありがたいけどな。音姉はどうする? 明日は何か用事はあるか?」


明日は普通に平日だ。授業もあるが、音姉や孝治になら監視を頼める。出来れば、早々に根源を潰したい。オレの場合は今日の明日だからちゃんと行かないと。


音姉は少しだけ考えた。そして、ゆっくり頷く。


「明日は大丈夫かな。授業は一回サボっただけでもどうにかなるし。心当たりはなかなかないけど」


「だと思った。商業エリア中央広場付近。怪しい動きがないか見つからないように見張って欲しい。孝治が裏を探すはずだ」


「わかった。『悪夢の正夢ナイトメア』と相対してどうにか出来るのは私、弟くん、孝治くん、悠聖くんの四人だけだしね」


「由姫も何とかなると思うけどな」


色々と大変なことになるだろうけど。


オレは小さく息を吐いて立ち上がる。


「どこか行くの?」


「散歩。気晴らしにな」


レヴァンティンを手に取りオレは窓を開けた。心地よいくらいの空気が肌を撫でる。それを感じながらオレはその窓から飛び降りた。






ナイトメア自体が合法ドラッグとは違うものの可能性がある。おそらく、新たに作られた麻薬だと考えたらいいだろう。レヴァンティンがハッキングを駆使して調べた結果、ケリアナの花とナイトメアだと思っていた薬は微妙な違いがあるだけでよほど詳しく調べないとわからないらしい。


調べ方は本当に簡易なやり方だからな。


だけど、気づかなかった。その考えに至ることが出来なかった。まだまだだ。まだまだ能力が足りない。もっとすごくならないと。


「あれ? 周?」


その言葉に振り返っていた。そこにはジャージ姿のメグがいる。どうやら走っていたらしく腕が構えていた。


こんな夜中にまで訓練とは頑張るな。


「どうかしたの?」


「色々とな。お前は走っていたのか?」


「うん。体が動かし足りなくて軽く20kmほど」


「それ、軽くないからな」


体力をつけるために20kmほど全力疾走する訓練はあっても軽く走る距離じゃない。


まあ、オレも時々軽く走っているからとやかく言うものじゃないけど。


「私の場合は人一倍訓練しないと強くなれないから」


「戦闘ランクは?」


「聞いて驚きなさい。先月にAランクになったわ」


「なぬ」


オレは純粋に驚いていた。二個下でAランクというのはかなり強い方でもある。オレ達自体が別格でもあるが、Aランクならオレ達がやる任務についてこれる可能性がある実力だ。


見た目からして全くわからない。


「ただね、隊のみんなはAランク以上だからまだまだだよね」


「メグの部隊はどこだ?」

「学園都市第8地区地域『GF』」


全員Aランク以上の部隊なんて聞いたことがない。第76移動隊ですらBBランクが交じるからな。事務を含めて。


どこかきな臭い雰囲気を感じる。


「あれ? 何かマズいことを言った?」


「メグはまだ時間あるか?」


「あるけど?」


「軽くそこの公園で組み手でもしないか? 実力確かめてみたいし」


そう言った時、メグの目は輝いていた。まるで、最初から戦ってみたかったかのように。その手にはいつの間にか薙刀が握られている。よく使い込まれた薙刀だ。


一応、調べるついでに人材発掘でもしますか。

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