第二百五十一話 ラストバトル
白い軌跡がオレに襲いかかる。オレはそれをレヴァンティンで受け止めた。
速度も剣の切れ味もオレの知っているギルバートさんにはほど遠い。それを知ってオレの顔がにやけるのが分かった。
レヴァンティンでシュナイトフェザーを弾き飛ばす。
「さすがに、キツいか」
ギルバートがそう言うと共にラファルトフェザーが迫っていた。
ギルバートさんの戦い方は双剣。両手にシュナイトフェザーとラファルトフェザーを持つことで広範囲への攻撃と高速連撃を可能とする。
というか、万全ならまず止められない。
ラファルトフェザーを受け流し、レヴァンティンを振る。だけど、それはシュナイトフェザーで受け止められた。
「やっぱり、抜けないか」
「周も万全じゃないね」
お互い同時に距離を取り、そして、ぶつかる。
オレはレヴァンティンをモードⅢに変更してシュナイトフェザー、ラファルトフェザーとぶつけ合った。
「いつもなら、鍔迫り合いになれば隙あらば魔術を放ってくる。僕の今の状況は特にね」
「時雨に雷王具現化さえされなければ、な!」
シュナイトフェザー、ラファルトフェザーを弾き振り上げながら勢いよく振り下ろした。
ギルバートさんの肩に微かにレヴァンティンが当たって受け止められる。
「オレは魔力が枯渇しているだけだが、ギルバートさんは肉体的ダメージだろ? そんなに由姫と亜紗は強かったか?」
「やられたよ。由姫ちゃんは僕を直接倒そうと、亜紗は僕にダメージを与えるつもりで向かってきた。おかげで体力も魔力も枯渇気味だ。でもね」
ギルバートが後ろに下がり、シュナイトフェザーを振り上げる。
来る。
オレは全ての神経を集中させた。シュナイトフェザーとラファルトフェザーの斬撃は不可避の斬撃。あらゆる障害物もあらゆる魔術もそれごと斬撃が破壊する。
避ける術は一つだけ。しかも、シュナイトフェザーの斬撃のみ。
振る軌道を見切り、動く。それをするしかない。
まるで、時間が遅くなるような感覚。ギルバートさんの腕が遅くなり、オレは感覚と共にその場に滑り込んでいた。
ギルバートさんがシュナイトフェザーを横に振る。その斬撃はオレの頭上を通過し、木々を切り裂いた。
「なっ!」
ギルバートさんは驚きながらもラファルトフェザーを振る。それに対してオレはレヴァンティンを突き出していた。
「レヴァンティン!」
『消します!』
ラファルトフェザーの斬撃がレヴァンティンの力によってかき消えた。今度こそ、ギルバートさんが完全に動きを止める。
「モードⅣ!」
レヴァンティンを振り上げ、振り下ろす姿勢のままオレは叫んでいた。
レヴァンティンが巨大な剣の形に変わる。魔力が尽きた今の状態では持ち上げることは出来ない。でも、このまま下ろすことが出来る。
ギルバートさんがシュナイトフェザーとラファルトフェザーで受け止めようとした。だけど、モードⅣになったレヴァンティンはそれを叩き落とし、ギルバートさんを切りつける。
横にゆっくり倒れるギルバートさん。
「これで」
オレはレヴァンティンを通常の剣に戻していた。油断していた。だから、ギルバートさんが倒れる間際に振ったシュナイトフェザーに気づかなかった。
体が真っ二つになったような感覚と共に、オレの意識は闇に包まれた。
漆黒の剣が虚空を走る。慧海さんはそれをたった一本の頸線で受け止めていた。
「化け物だろ!」
それを見ていたオレは薙刀を振り下ろす。魔力をたっぷり溜め込んだ薙刀の一撃は頸線を全て断ち切っていた。
しかし、蒼炎によって受け止められる。
「孝治、疲れてるな」
「くっ」
慧海さんの笑みに孝治が顔を歪める。
慧海さんはボロボロのはずだ。なのに、その魔力の質は全く衰えているようには見えない。
オレですら優月から借りている魔力を乗せに乗せてようやく頸線を斬れるくらい。孝治の斬撃は受け止められる。
確かに、こうなると無敵の異名が相応しく思えてくる。
「お前の力はそんなものか?」
「うるさい!」
孝治が新たなエネルギーバッテリーを差し込み運命を振り切る。慧海さんはオレを蒼炎で弾き飛ばして運命を蒼炎で受け止めた。
そして、ニヤリと笑みを浮かべる。
「できるじゃねえか」
「優月!」
オレは魔力の流れを掌握し、魔力を収束させる。これなら受け止められることはない。
「ニュートロン!」
魔力の塊をドリル状に回転させながら放った。これなら、
「甘いな」
その言葉と共にニュートロン、放った魔力の塊が全て頸線によって受け止められていた。本音を言うならありえない。
そのまま慧海さんが飛翔を振ってくる。オレは薙刀を構えた。
「流動停止!」
だが、飛翔から放たれる頸線は止まらない。
「んなバカな!」
オレは叫びながら魔力任せの防御魔術を多重に展開した。かなりの枚数の防御魔術が細かな刃を持つ頸線によって砕かれる。
流動停止は対象が一つに対しては絶対の威力を発揮する。考えられる可能性は、方向性が多すぎて流動停止が発動しなかったか。
それをするだけでも人間離れしているのに、そんな気の遠くなるような作業と並行して孝治の猛攻を凌ぎきっているところだろう。動きは多少荒いが、一撃一撃の威力が極めて高く、さらには闇属性魔術であるエネルギーを凝縮させたレーザーを大量に放っているのだが、それすらも簡単に防いでいる。
ここは、賭けにでるしかないか。優月、アルネウラ、ちょっと無理をする。
オレはシンクロしている二人に話しかけた。
『サポートするから』
『任せて!』
二人の声が聞こえてくる。オレは薙刀を地面に突き刺した。
「孝治!」
今のオレ達にはその一言で十分だった。
「魔術殺し(マジックキャンセラー)!」
優月の力を解放する。魔力が少なすぎて範囲はかなり小さくなったが、慧海さんを呑み込み、孝治をちょうど呑み込まない位置に展開していた。
慧海さんの目が見開く。
「駆けよ、運命!」
その言葉と共に弓に矢の代わりに運命を構えた孝治が手を放した。黒の閃光が慧海さんの体を貫く。
「これで」
勝ったと思った。慧海さんはそこまで人間離れしていないだろうと思った。だけど、慧海さんは倒れない。そして、蒼炎を周囲に向かって振っていた。
蒼い炎が周囲を焼き、オレと孝治の意識は完全に闇に呑み込まれた。
慧海がその場に蒼炎を落とす。気力と気合いとその他諸々で何とか立っていたが、もう限界だった。
慧海が小さく息を吐く。
「ようやく終わったか。ギルバートの奴はどうなった?」
負けたとは思えないが相手はあの周だ。慧海が考えている通りなら、周は時雨を倒している。
「まだ、戦いは終わっていないみたいだしな。残っているのは周だけ」
その時、空に巨大な魔術陣が浮かんでいた。それを見て慧海が空笑いを浮かべる。
「都残っているの忘れてた」
そして、エターナルバニッシャーが慧海の体を直撃していた。
都は忘れていたわけじゃありません。瞬殺されるので置かれていただけです。(笑)