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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第二十五話 対策会議

鬼についていろいろわかり始めます。第一章前半の重要なポイント。ただし、物語全体の中でもこの話は前の方に位置しますが。

狭間市『GF』駐在所には様々な部屋がある。もちろん、トレーニングルームや隊長室などの平凡なものから取り調べ室や勾留室など存在価値のわからないものまである。そもそも、勾留するのは警察の仕事であり、『GF』の仕事ではないのだが。


そんな中の一つ、会議室において、第76移動隊代表にオレと孝治に音姉。『ES』代表アル・アジフとクロノス・ガイア。そして、狭間市代表の都が集まっていた。もちろん、これからのことを話すためだ。


「とりあえず、最初に今回の事件を整理する。ことの発端は約一ヶ月前。狭間市『GF』地域部隊全員が失踪。最初は謎に事件として警察が捜査に乗り出すが原因は解明できず、市長の昔のつてから『ES』に護衛依頼があった。そうだよな?」


アル・アジフは無言で頷く。無言でいてくれるから話は進めやすい。


「『ES』到着から三日後、『ES』メンバーの三人が失踪。現場ではアル・アジフが人を喰らう金色の鬼と遭遇し戦闘。しかし、逃げられる。それからいくらか日にちは経ち、一昨日にオレ達第76移動隊と鬼が遭遇し戦闘になるが、鬼に逃げられる。何か質問は?」


真っ先に手を挙げたのは音姉だった。


嫌な予感しかしなけれど、オレは音姉を当てる。


「鬼が使った体術又は武術の種類を」


「わかるか」


こういう質問が来ることは予想していたけど回答は考えることができない。音姉は不満そうな顔をしているが、アル・アジフは小さくため息をつくだけだった。


「音姫、それがわかれば勝てると思うのか?」


「勝つ確率を上げることはできるかな。あの映像を見る限り、空戦能力が高くてスピードもある。正直に言って難しい相手だと思うよ」


「その意見には俺も賛成だ。あの時は飛ばなかったが飛ばれていたら危なかった」


孝治の言うように、あの時に空に飛ばれたら、孝治と精霊以外に飛べないオレ達はかなりの窮地に立たされていたに違いない。なら、どうして飛ばなかったのか?


その答えは簡単だろう。


「今の空戦戦力が第76移動隊が孝治と中村の二人だけだからな。『ES』は?」


「満足に飛べるのが我とクロノス・ガイアだけじゃ。ただし、空戦となるとそちらには劣る」


「こっちは上手いこと分かれているからな。まあ、一応戦力の開示はしておくべきか?」


「いや、我らはそなたらを知っておる。『ES』じゃからな」


「ごもっともで」


第76移動隊は空戦戦力が2に、準空戦戦力が2だ。飛行ができるのは孝治と中村だけで、跳ぶことができるのはオレと音姉。


『GF』の対抗組織とでもいうべき『ES』からすれば、そういう情報は常日頃から集めているのだろう。まあ、オレ達は良くも悪くも有名人だけど。


「『ES』側は空戦戦力が2.準空戦戦力は8じゃが、あやつにはダウンバーストがある」


対暴徒鎮圧用魔術(ダウンバースト)の威力は極めて高い。準空戦は確実に地面に落とされると言ってもいい。空戦も五分の確率で地面に落ちる。


放たれたら一巻の終わり。


「あの、少しよろしいでしょうか」


そんな中、話にほとんどついていけないであろう都が手を上げる。もちろん、この会議に出席している以上、発言権は普通にある。


「重力魔術は利用できないのでしょうか?」


「面白い考えだな。周はどう思う?」


「確かにありだけど、重力魔術はコントロールが難しい。アル・アジフとクロノス・ガイアは?」


「無理じゃな。一定範囲に重力を叩きつけるならともかく、個人個人に叩きつけるとなるとレアスキルの部類に入るぞ。クロノス・ガイアはどうじゃ?」


「相手が動かないなら有効」


つまり、相手が動くなら不可能ということだ。オレが知る重力魔術も二人が言ったような制限のあるものが多い。つまり、戦場では使えない。


「難しいのですね」


「いい戦にはいっているんだけどな。そう言えば、クロノス・ガイアの探査術式はこの世界にいる限り有効だと言っていたよな?」


「そう。もし、他の世界に出ても、戻ってきたなら有効」


「レベルが高い普通のやり方なら不可能だな」


孝治が冷静に答えるが視線はオレを見ている。今の時間をくれただけで十分な方法は見つかった。


「一応、オレが考える対策を三つあげる。現実的非現実的を除いてだ。疑問があるなら対策を一つ言い終わるごとに聞いてくれ」


全員が無言で頷いた。


「一つ目が結界を張り続ける方法。常に狭間市を守るように結界魔術を展開し続ける。欠点としては、維持がかなり苦労することと、鬼相手に通用するかわからないこと。そして、鬼の被害が別の町に及ぶ可能性があること」


「確かにそれも考えたが、難しいの。そなたらにはわからぬと思うが、この狭間市は魔力が溜まりやすい地形になっておるのじゃ。そんな場所で結界を作れば暴走する危険がある」


「聞いたことはあります。この土地は魔力の恩恵を受ける土地だと代々言われてきましたから」


まあ、オレが上げた欠点以外にもいくつかの欠点があるのだが、アル・アジフの言葉と都の話を考えてこの案は没か。


「二つ目。応援を要請する。もちろん、第一特務の連中だ。欠点を言うなら世界の勢力バランスが崩れる。第76移動隊の存在意義がなくなるってところか?」


「反対だ。そこまで強大な兵を連れれば鬼が何をするかわからない」


「そうじゃな。今でさえ、我らとそなたらがいる上に第一特務が来たなら戦争でも起きる可能性があるの」


つまり没。


まあ、今までの二つの案は非現実的な部類に入ることだけど。


「じゃあ、最後に。対策と言うより提案だな。鬼と戦うための訓練をしつつ、その時期まで普通に暮らす」


「弟くん、ちょっと待って。それは対策とは言わないよ。提案と最初につけていたけど」


「わかってる。アル・アジフに聞きたいけど、鬼に喰われたメンバーの素行は?」


「素行? 少し荒れておったの。それが何か」


アル・アジフの言葉に何かに気づいたように都が手を挙げた。狭間市の地域部隊の素行の悪さを知るものならオレがこういう提案をした理由がわかる。


「鬼が狙うのは素行が悪い人。いえ、悪事を働く人というですね」


「オレもそう思っている」


「周、説明を頼む」


この場で分かっているのがオレと都だけだからオレは頷いた。


「オレ達の前任の地域部隊は素行の悪さで有名だったんだ。狭間市からすれば薄気味悪いけどいなくなって良かったって感じだな。オレの考えから言って、金色の鬼は狭間市の守り神。いろいろあって聞くのを忘れていたけど、都はオレ達が鬼に会う前に『狭間の鬼』って言っていたのを思い出してな。この地について説明してくれるか?」


「はい。私が知っていることならいくらでも。ただし、最初に言っておきます。金色の鬼はおそらく狭間の鬼のことですが、それは守り神ではありません」


そこで都は言葉を切った。


まあ、オレの予想だから外れることはあるけど。


「崇り神です」


その言葉にオレ達は呆然とするしかなかった。


第一特務について


『GF』の最強部隊。通称『ケルベロス』

音姫を除く世界で五指に入る強さのメンバーが入っており、第一特務だけで国連と真正面から戦えるほど。

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