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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第二百四十一話 国連

『GF』と『ES』以外の第三勢力についてです。

新聞各社の一面。そこは基本的に興味を引くような内容が書かれる場所で、よほどの大事件が無ければ各社は違うはずだった。


でも、今回は違う。新聞各社の一面は全て同じ。内容は、


『GF』が国連を圧倒!


だった。中身を読んでも確かにそうなっている。国連が開催した各勢力首脳会談において、『GF』と『ES』を糾弾した国連が『GF』の反論によって全て封じられた。


さらには、国連が用意した警備員が『GF』の連絡役を中に入れなかったため、テロ未遂容疑で逮捕されたことも書かれている。


二面や三面にはそのことに関する様々な政治家や専門家の意見が乗っていた。


「あれ? 悠人って新聞読むんだな」


「浩平とは違う」


その言葉に僕が振り向くと、見回りから帰ったきた浩平さんとリースの姿があった。ちなみに、二人はちゃんと手を繋いでいる。


「日本の新聞って色々書いているから面白くて。それに、日本のこともよくわかるから」


僕はほとんど中東で過ごしていた。日本語はアル・アジフさんから習ったし、英語もペラペラに話せる。


でも、日本のことに関しては調べるものが少なかった。時々、アル・アジフさんと一緒に日本について行くけど、わかることは少しだし、時間制限もある。


だけど、今は楽々と調べられる。


「新聞って漢字が難しいから目がクラクラするんだよな」


「それは浩平がバカなだけ」


それは僕も同意だ。確かに難しい漢字もあるけど、内容が読めないというわけじゃない。小学生でもギリギリ読めるんじゃないかと思う。


僕は新聞を閉じた。


「それに、お前が一人って珍しいな。普通はアル・アジフかリリーナ、鈴がそばにいるのに」


「孝治さんと光さんが奥にいるよ。楓さんとエレノアさんはまだ見回り中で、リリーナや鈴はアル・アジフさんや亜紗さん、七葉と一緒に買い物。悠聖さんは和樹さんに誘われて遊びに行った。アリエとベリエは訓練中だったかな」


「理解できた。悠人、新聞一部貸して」


「うん」


僕は無造作に選んだ新聞をリースに渡す。リースはその中身を見てパラパラ捲り、そして、返してきた。


リースは今ので新聞を全て読むからね。


「『GF』の記事が多い」


「仕方ないよ。『GF』にとって国連は鬱陶しいって言われているくらいだしね。その国連を『GF』が圧倒したとなれば、色々な人が食いつくと思うよ」


だから、新聞各社が一面にその記事を置いている。


「それって昔からなのか?」


「アル・アジフさんからそう聞いている。『ES』は国連の手が届きにくい中東を中心に活動していたから国連と仲は良かったよ」


「『GF』は国連と同じ地域にいる。国連と意見がぶつかり合うのは当たり前。『GF』自体が最初は傭兵部隊みたいなものだから嫌われていた。でも、増加する犯罪に対して『GF』の必要性が高まって今の形になった」


「へぇ~、そうなんだ」


「僕達は少し前まで『ES』だったんだけど」


どうして浩平さんが知っていないのか不思議に思ってしまう。


国連が『GF』を嫌っているのは子供だって知っていることだし、その理由も知る人は知っている。


「というか、国連ってどうやって出来たんだ? 『GF』や『ES』の歴史は聞いたことがあるけどさ」


「リースは知ってる?」


「知らない」


リースも首を横に振ったから答えられる人はここにはいないだろうな。誰が知っているだろうか。


その時、入り口が開く音がした。僕達が振り返ると、そこには入り口から入ってきた琴美さんが周囲を見渡している。誰かを探しているようだ。


「悠人、都はいる?」


「都さんは今日非番だけど」


「あちゃ。まあ、約束はしていなかったしいいとするわ」


琴美さんが小さく溜息をついて背中を向けて出て行こうとする。その背中にリースが声をかけた。


「琴美は知ってる? 国連の成り立ち」


「成り立ち? リースは知らないの?」


リースはコクリと頷く。それを見た琴美さんは小さく頷いた。


「わかったわ。暇だったから都を探していただけだし、ちょっとした歴史の授業でもするわ」






「国連の始まりは第四次世界大戦の後よ。第四次世界大戦前はそれぞれの地域に分かれて連合を作っていた。だけど、それぞれの思惑から世界が分裂し始まった第四次世界大戦を繰り返さないためにヨーロッパ連合のマイザー・ハウゼンが提唱したの」


マイザー・ハウゼンの名前なら聞いたことがある。慧海さん達と同じ旅の仲間で、人気もかなり高かったらしい。


第四次世界大戦の話は有名だけど、その後はかなりごたごたしていたから歴史が少し途切れたところもある。


「第四次世界大戦で主導で戦争を止めた日本、サウジアラビア、アメリカの三国をトップに起き、その下に様々な連合を一つにしたのよ。今では各国が平等だけど、今でも日本、サウジアラビア、アメリカは特殊権限である拒否権があるわ。まあ、日本とサウジアラビアは一回も使ったことがないけど」


拒否権の話に関してはかなり有名だ。アメリカは気にくわないことに拒否権を使いまくっているが、日本やサウジアラビアは一度も使っていない。


日本は特に拒否権に関しては否定的でもある。


「国連の目的が第四次世界大戦に匹敵する戦争を起こさないため。そして、犯罪者の勢力に対して一致団結して戦うため。まあ、昔は『ES』に突撃しようとしたけど」


『赤のクリスマス』のすぐ後に国連軍が『ES』に矛を向けたことがある。この時はアリエル・ロワソと全く関係のない勢力だったため、『GF』が両者を止めたことでも有名だ。


「国連が無ければ世界はもっと混乱しているわよ。貿易の枠組みや経済の枠組みを組み立てているのは国連だし、新聞じゃ悪者みたいに言われているけど、実際は必要な組織よ」


「へぇ~、国連って優秀な組織だったんだな。初めて知った」


「『GF』が強すぎるだけよ。国連は縁の下の力持ちだし。国連の話はこれでおしまい。私は都を」


「あれ? どうして琴美がここにいるんですか?」


入り口には今日非番なはずの都さんが麦わら帽子を被って駐在所に入ってきた。そして、ハンカチで流れている汗を拭く。


「都を探してここに来たのよ。まさか、非番だとは思わなかったわ」


「今日は家でゆっくりしようと思ったのですが、暇だったので」


琴美さんがクスッと笑みを浮かべる。僕も思わずクスッと笑みを浮かべた。


どうやら、二人は本当に仲がいいみたいだ。


僕は新聞を開ける。そこに書かれている内容を見ながら僕は少しだけ物思いにふけった。


8月30日のことを考えながら。


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