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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第二百四十話 幼なじみ

楓の姿が宙に舞った。風魔術によって宙に舞いながら方向を上手く定め、目的地に向かって一直線に落ちる。狙いは、


半額の値札がついた弁当。


商品棚にある弁当を手に取り、楓はもう片方の手で商品棚を勢いよく押してさらに飛び上がった。


そして、楓が光の隣に着地する。


「どう?」


「才能の無駄遣い」


見事なVサインを送る楓に対して光は呆れたように溜息をついていた。


今、二人は調味料が少ないことに気づいて買い出しに来ていた。そこで、ちょうど半額シールが弁当各種に貼られたので、それを狙っての争いに楓が参加したというわけだ。


ちなみに、光は買い物カゴに醤油と味噌を入れている。


「楓って風魔術が得意やねんな。リュリエル・カグラっていう収束砲撃の有名人なのに」


「基本的には光属性の方が得意かな。でも、飛行補助とかは風属性が慣れている。あっ、光みたいに属性翼は出せないよ」


「うちのは属性翼やなくて『炎熱蝶々』って言うレアスキルや。これでも珍しい能力を持ってんねんで」


『炎熱蝶々』自体はかなり珍しく、光、エレノア以外に二人ほどしか使用出来ない。それくらいに珍しい。


珍しいとは言っても能力的には他のレアスキルに劣りやすい。


「あれ? 楓って飛べるよな?」


「うん。私のデバイス、ブラックレクイエムって言うアリエル・ロワソが開発した人造神剣試作型だから」


「人造神剣? レーヴァテインみたいな?」


「それはオーバーテクノロジーだから。アリエル・ロワソが言っていたけど、周君のレヴァンティンと光のレーヴァテインは製作時期は大きく違うけど、中のオーバーテクノロジーは似通っているって聞いたし」


「まあ、そうやな」


光は自分のデバイスを見た。


レヴァンティンもレーヴァテインも同じようなオーバーテクノロジーを使っている。その仕組みは周と光、二人の秘密である。


二人共、その片鱗しか見せていないから。


「ブラックレクイエムと比べれば光のレーヴァテインともう一つのレアスキルの方がすごいよ。私なんてブラックレクイエムと神剣『カグラ』を持ってから有名になったし」


光は世界でも珍しい二つのレアスキルを持っている。その二つを上手く使いこなすことで光は今までやってきた。


だけど、光は自分の中で自問自答をする。


確かに能力を使いこなせば強力だが、数の暴力で来られた場合、どうしようもない事態が起きることがある。


狭間戦役中でも自爆によって敵を巻き込もうとしたのも同じだ。あの時は楓と冬華に助けられたが、次に助けられるかはわからない。


「もう少し、近接戦闘の練習をした方がいいんかな?」


「どうだろう。光は弾幕を張れるから別に」


「弾幕を張れるだけで勝てないと思っている。違う?」


急に話しかけられて二人は振り返っていた。そこには買い物カゴを手に提げたエレノアとアリエの姿。


光は不思議そうに首を傾げた。


「ベリエは?」


「知らない!」


怒ったようにそっぽを向くアリエが答えたので光と楓は思わず顔を見合わせていた。


エレノアがクスッと笑みを浮かべる。


「今、二人は喧嘩をしているから。私も『炎熱蝶々』を持つから気持ちはわかる。弾幕だけじゃ戦いには勝てないって」


「そういうものかな? 収束砲撃の弾幕を張ったらアリエル・ロワソも近づけないよ」


「それが出来るのは楓だけやから」


光が呆れたように言うが、エレノアも同意見だったらしく頷いていた。


そもそも、収束砲撃は弾幕を張るようなものじゃない。


「弾幕で戦えるとは思わない方がいい。弾幕を張っても周は抜けてくる。私の場合は気づかれないように浮遊機雷を設置するけど、それでも無理がある」


「うちは収束系と設置系は苦手やからな。出来れば、別のがあったらいいんやけど」


「よく砲撃役できたね」


楓は純粋に驚いているが、砲撃系の面々なら何ら不思議がない反応だ。


基本的に、砲撃を行う面々のほぼ全てが収束系を得意とする。対する光はレーヴァテインのコピーを能力解放することで砲撃のようにすることが出来る。


厳密には砲撃とは違うのだが、砲撃ですら相殺する威力のため砲撃にカウントされている。


「収束系と設置系が苦手。得意なタイプは?」


「実は、魔術ってあまり得意やないねんな」


「本当に、よく砲撃役できたね」


砲撃役としては前代未聞ではあるが。


「近接戦闘も苦手やし、どうすればいいかなって」


「召喚とかは? 精霊にフロントを任して砲撃に専念するとか」


「あっ、具現化もいいんじゃない? 私だって風王具現化出来るし」


「あの、具現化ってレベル高いですよ」


ちなみに、具現化は周やアル・アジフですら出来ない。


光は呆れたように溜息をついた。


「ほんま、どうしたらええかなって思ってる。第76移動隊も砲撃役が入ってきたやろ。砲撃しか出来ないうちなんて」


「そんなことはない! 絶対に!」


落ち込みかけた光に対し、アリエが必死に語りかける。


「私とベリエなんて完全なサポート要員だよ。周お兄ちゃんよりも弱いサポート要員だけど、周お兄ちゃんは私達が活躍出来るように色々教えつける。だからね、えっとね、あれ? 何を言おうとしたんだっけ」


多分、この場にベリエがいたら何かと口出しいるだろうが、ベリエがいない今は誰も何も言わない。


だけど、アリエの言葉は光にちゃんと届いていた。


「そっか。そうやんな。決めた。うちはこのままで行く。楓、収束系教えて。エレノアは設置系。孝治からは近接戦闘を聞く。うちだって足手まといは嫌だから」


「結局手当たり次第になるんだね。でも、光らしいかな。うん、不肖、木村楓が光の教官になるよ」


「お願い。なあ、エレノア。何でアリエとベリエって喧嘩してるん?」


ふと思いついた疑問。エレノアは複雑そうに顔を歪めて、そして、


「ソフトクリームはバニラかチョコか」


「「はい?」」


光と楓、二人の声が重なった。


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