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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第二百三十九話 記事

周を特集する雑誌は少なくない。


第76移動隊隊長という最年少正規部隊隊長であり、技術者としても有名。さらには、性格もいいとあって、月に一度はどこかの雑誌に周隊長の名前はある。


だけど、これは特別だろうな。


その雑誌を読んでいた冬華が顔を上げる。


「何これ?」


「オレに聞くな」


オレは小さく溜息をついた。その雑誌、とある零細企業がフリージャーナリストから記事を集めて出しているものだが、今回はフリージャーナリストではなく一冊丸々海道周特集だった。


後半の方になると第76移動隊の記事も多くなり、オレや孝治の名前も出てくる。


「周ってすごいのね。たった一人の記事で雑誌一冊が完成するとは思わないわよ」


「周隊長は努力しているからな。これくらいしても不思議はない。中身はNGDか?」


「うん。NGDとNGFの製作秘話が少し。半分くらいは第76移動隊についてかな」


冬華から記事を受け取りながら中身を見る。そこに書かれているのは第76移動隊のメンバーを周の観点から見たものだ。


一人二ページずつ。総勢15名分。エレノア、ベリエ、アリエの名前はない。


「冬華のまであるのか。何々、剣技は我流が多く荒削りではあるが、宝石の原石であり、白百合音姫副隊長の下で訓練をすれば輝くだろう。かなりの高評価だな」


「あ、当たり前よ。私はこれでも『ES』では最前線にいたんだから。でも、私より悠聖の方がすごいわよ」


冬華の言葉にオレは自分のページを開いた。そこには大きくデカデカと文字が書かれている。


「ふぃ~、見回り終わったよ。あれ? 悠兄は何を読んでいるの?」


見回りを終わらせた七葉がオレの肩に手を置いて記事の中身を見てくる。そこに書かれているのは、


「未来の副隊長候補って、オレには身が重いぞ」


「荷が重い、ですよ。お疲れ様です」


七葉と一緒に見回りをしていた都さんがやって来る。そして、七葉の後ろからその中身を覗き込んでくる。


「お疲れ様。周隊長の奴、オレをベタ誉めじゃないか」


「周様は悠聖さんを高く評価していますよ。悠聖さんが副隊長では無かったのは音姫さんと孝治さんという実力のある二人がいたからだと思います」


「そうだね。悠兄は指揮も上手いし、精霊召喚師としては世界最強だから周兄も期待しているんじゃないかな?」


記事の内容を見ると、オレの強さの理由が書かれてあった。


何事も諦めない勇気。どんな敵にも立ち向かう力。そして、仲間を思う優しい心。


オレは顔が熱くなるのがわかった。


「あっ、悠聖が恥ずかしがってる」


「な、なんのことだかわけがわからないな?」


冬華がクスクス笑ってくる。それに対するオレの声は微かに高くなっていた。これじゃバレるのは当たり前だ。

「そういうことにしておくわ」


冬華がまたクスクス笑みを浮かべる。


オレは小さく溜息をついて次のページを捲った。そこに書かれているのは都さんのこと。


そして、そこにある大きな文字にオレの目が天になった。


「えっ? 私が潜在能力は世界一ですか?」


「だろうな。都さんって狭間の魔力を使えるから、実質無限の魔力があるし、神剣自体も敵の攻撃を打ち消す能力がある。ポテンシャルの高さなら第76移動隊随一ですよ」


「そうね。都はフォトンランサーを展開しながら近接格闘戦が出来るもの。フォトンランサーを好きなタイミングで打ち出せるおまけ付きで」


本音を言うなら一番戦いたくないタイプだ。しかも、都さんは音姫さんから剣技を習っている。おかげで時々苦戦するくらいだ。


ポテンシャルの高さで言えばずば抜けている。ただ、今はまだ言うほど強くはない。どこまで強くなれるかはこれからだろう。


「フォトンランサーの射出を極めたら雷属性でも練習したらどう?」


冬華の提案は妥当だ。


フォトンランサーはその場に停滞させて指向性を持たし放つ魔術であり、それを応用した電磁砲は距離が短いものの威力は桁違いに高い。


抑止力という点ではフォトンランサーはかなりのレベルだが、威力で見るなら明らかに電磁砲の方が上。


オレも練習しているけど、飛距離がなかなか伸びないんだよな。


飛距離さえ出れば牽制技としては最高だけど。


「雷属性はちょっと。私は収束系が得意ですから、今度は楓さんに収束砲撃魔術を習おうかと」


「出番が少なくなるわね」


冬華の言葉にオレは頷いていた。


すでに砲撃術師は二人いる。そこに都さんも入ったなら開始早々の砲撃によって相手は壊滅するだろう。


「あっ、私のことも書いてある」


いつの間にか雑誌は七葉が読んでいた。そして、自分のページを見ている。


「何々、結界術師としては優秀だが、魔界から来ている二人と比べては劣る。武器も頸線を使うため、乱戦では役に立たない。そうだけど、もっと褒めるようなことを言ってよ」


「ちゃんと読めって」


オレは七葉のページの最後の方を指差した。そこに書かれているのは今後のことだ。


「結界術師として腕はいいから防衛戦に強くしていく。頸線を使った結界防御は範囲が広く性能も高い、か。えへへ、周兄に褒められた」


「現金な奴だな。よくよく考えると七葉と都さんって相性いいよな」


結界防御を使える人は少ない。というか、第76移動隊で七葉くらいだ。結界防御は発動が難しい反面、半透過性を持ち、術者が許可した魔術を通すことが出来る。


様々な弱点は他にもあるが、フォトンランサーの発動速度から考えて、相性はかなりいい。


「都さん、これからコンビを組もうね」


「周様とコンビが組みたいのですが」


「それは無理ね」


冬華が一刀両断で切り捨てる。


「周の戦い方はオールラウンダー。あなたの戦い方はセンターとバックの両方であるサポーター。フロントも出来ないと難しいわ」


「サポーターって聞いたことがないな」


フロントとセンターを絶えず動き回るのがアタッカーだ。ただ、フロントだけをアタッカーという場合がある。


サポーターというのは初耳だ。


「別名支援要員ね。日本ならこっちの方よ」


「なるほど」


思わず納得してしまう。支援要員サポーターというわけか。


「近接に強くなるにはどうすればいいのでしょうか?」

都さんの質問に冬華は呆れたように溜息をついた。


「そういうことは簡単には行かないわよ。そもそも、近接というのは相手との読み合いよ。あなた、ボケッとしていそうだから性格的に難しいんじゃない?」


「冬華って遠慮がないよな。まあ、オレが考える限り、冬華の戦い方は近接に魔術を組み込まないタイプだ。周隊長ならこう言うんじゃね? まずは自分で考えろ、って。都さんが考えた近接の仕方。それの悪い点を教えてもらいながら変えていく。そういうものだろ?」


「悠兄がそう言うのは意外」


「意外ってなんだよ」


オレは呆れたように溜息をついた。


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