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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第二百二十九話 新たな『ES』

中東のとある空港。『ES』過激派専用機に乗ってオレと亜沙は『ES』過激派本拠地に来ていた。


中東に行く用事というのは『ES』との狭間市に関する話だ。穏健派の吸収は上手くいっているらしく、もう少ししたら『ES』には過激派も穏健派も無くなるらしい。


『ES』のその行動は各国が支持してもいるので『GF』が出る出番ではないのだが、アルから聞いた話では色々複雑な議題があるという。


「厳戒体制だな」


本拠地飛行場に降り立ったオレの視界に何人もの警備兵やフュリアスの姿がある。


音界で開発された第五世代フュリアス『アシューム』だ。ギガッシュと比べて遥かに丸みを帯びていてシルエットはまさに相撲取り。

中古ではあるが戦力としては充分らしく安く買ったという話を聞いている。


『仕方ないよ。ここは過激派本拠地なんだから。周さん』


亜沙は自らのデバイスをオレに渡してきた。矛神を収納しているデバイスを。


『周さんに持っていて欲しい。アリエル・ロワソに襲いかかりたくないから』


「そういうことね。わかった。ちゃんと預かっておく。アルもアリエル・ロワソも参加だからな。どんな大規模な会議になることやら」


多分、『ES』の幹部級は参加していると見ていいだろう。この厳戒体制を見る限り、凄まじいメンバーが、


「あれ? リマ?」


「海道さん?」


本拠地建物に向かって歩いていると、厳戒体制の中で格納庫前にいるリマを見つけてオレは話しかけていた。


ロングコートを身に付けたリマはオレの姿を見て話していた人物に断りを取ってからこっちに向かって来る。


「どうしてこのような場所に?」


「『ES』から呼ばれていてな。色々と決めるから来て欲しいと。リマは?」


「そういうことですか。私は護衛です。ここからは見えませんがギガッシュ部隊もいますよ」


つまり、メリルも来ているというわけか。


思っていたよりも、いや、思っていた以上に厳戒体制というわけか。


「つまり、格納庫内部にはアストラルブレイズとアストラルソティスがあるのか?」


「エクスカリバーとソードウルフ、イグジストアストラルもいますよ。悠人さんやリリーナさん、鈴さんの三人は格納庫待機です」


多分、第一特務がぶつかっても多数の犠牲者を出すだろうな。明らかな戦力過多だ。


「私は今から向かう先も海道さんと同じのはずです。これでも歌姫様の護衛ですから」


「そうなのか? 音界の住人は近接戦闘が苦手なんじゃないか?」


「苦手な人が多いだけです。それに」


リマがロングコートをはためかした。そこにあったのは腰に身に付けられた拳銃。逆にもホルダーが見えるから二丁拳銃なのだろう。


リマがにっこり笑った。


「武術の心得もありますし。横の方には叶いませんが」


確かに、亜沙は世界でも屈指の実力者だ。若手フロントの中では音姉や孝治、アルトクラスと言われておりその強さはかなりのもの。


確かに、年齢が近いリマじゃ話にならないか。


『二丁拳銃は珍しい。浩平くらいしか見たことがないけど』


「拳銃は片手で支えるようなものじゃないからな。撃った時の反動が大きすぎる。ただ、浩平のものはフレヴァングの中にあった二丁拳銃らしい。分解させてもらったけど素材から低反動になっていたからな」


「この二丁拳銃はオーバーテクノロジーの一種です。歌姫様を守る護衛筆頭に代々与えられるものですから」


「えっ? ルーイが護衛筆頭だと思っていた」


「ルーイはただにフュリアスバカなだけです」


リマがそっぽを向く。それを見たオレ達は顔を見合わせて吹き出していた。


フュリアスバカとは言っているが、その言葉はどこか誇らしげだったからだ。全くの嫌みがない。


「どうして笑いますか?」


『気のせい気のせい』


「笑ったまま言っても説得力ねえぞ」


「あなたもです!」


オレ達の笑いとリマの怒りはほんの少し歩き過激派本拠地のエントランスに入るまで続いた。






オレ、亜沙、アル、メリル、アリエル・ロワソ、それ以外にもたくさんの顔ぶれがある。ただし、座っているのは今挙げた五人以外に三人だけだ。


過激派の副代表であるタタナ。副代表の右腕であるレバンとユカナ。


立っている面々の中ではルーイやリマの姿がある。


「集まってもらったのは他でもない」


アリエル・ロワソがゆっくり口を開いた。亜沙の目がデバイスの入っているオレのポーチに向くが、すぐに外される。


オレはレヴァンティンを腰にさげている。


「我ら『ES』穏健派についてのことだ。これには『GF』や音界にも関係することなので彼らも呼んだ」


オレ達に飛ぶ殺気がものすごい。まあ、『ES』の勢力が拡大出来ないことを歯痒く思っている奴らも少なくないだろうしな。


でも、アリエル・ロワソは動かないから誰も動かない。


「穏健派代表アル・アジフ。今回の件について君が説明したまえ」


「わかった」


アル・アジフが立ち上がる。


「全ての始まりが結城家及び音界の造反組が我の持つフュリアス、マテリアルライザーを奪うために穏健派本拠地を攻撃したことじゃ。これにより、穏健派の大半は死亡。生き残った者は非戦闘員。いち早く結城家の企みに気づいた第76移動隊がいなければ我はこの世にはいないじゃろう」


実際の事はかなり深刻だった。もし、オレが遅れていたらどうなっていたかは想像に堅くない。


でも、もっと早くついていれば、もっとたくさんの人を救えたんじゃないかと思う。


「穏健派をもう維持することは出来ぬ。じゃから、我は今まで穏健派の面々を過激派に組み込むのを躍起にやっておった。先日、全ての工程が終了し、ここに穏健派の廃止を宣言する。過激派はこれより『ES』を名乗るがよい。もう、内部に二つの勢力がないのでの」


「了解したよ。『GF』代表。何か意見は?」


「アル・アジフが決めたならオレ達は何も言うことはない」


「ガキのくせにふてぶてしい態度だな」


レバンが小さく毒づく。それに対してオレは笑みを浮かべて返した。


「オレは『GF』代表としているんだぜ? アリエル・ロワソの言葉を聞いていなかったか?」


レバンは小さく舌打ちをするとそのまま黙った。タタナやユカナはそれが分かっていたらしく何も言わない。


「そうか。今より、穏健派の廃止を正式に決定する」


拍手は起こらなかった。ただ、レバンが見えないような角度で笑みを浮かべたのが気になる。


「そして、元穏健派代表から重大な発表がある」


その瞬間、アリエル・ロワソがまるで子供のように一瞬笑い、タタナが呆れたように溜息をついたのが分かった。


オレは嫌な予感が背筋をかける。


「我は『ES』を辞め、第76移動隊への入隊を希望する」


「「はぁーっ!!」」


何故かオレとレバンの声が完全に重なっていた。ちなみに、オレは思わず立ち上がっている。


「ちょっと待てちょっと待てちょっと待て! 『ES』を辞めてこっちに来る? 何でだ?」


「何でと言っても、我はそなたが好きだから」


「そんな理由で簡単に所属を代えるな! というか、全て過激派に入れたと言ってもお前は『ES』では必要な存在なんじゃないのか?」


「アリエル・ロワソは許可しれくれたぞ」


あの笑みはそういうことか。完全に外堀を埋められているし。


「ちなみに、亜沙も知ってる」


『黙っててって言われて』


しかも、四面楚歌になっているとは。オレは小さく溜息をついて椅子に座った。


もう、反論する材料がない。


「来る面々は? アルだけじゃないだろ?」


「そうじゃ。我、悠人、鈴、リュリエル・カグラ、冬華の五人じゃ」


楓と冬華までもかよ。


「アリエル・ロワソ、いいのか? か、リュリエル・カグラも冬華も『ES』の中じゃ一線級だろ?」


「一線級以上に、彼女達の意志を反映したい。それだけだ」


なら、仕方ない。


『ES』はアル・アジフがいない中、新しくやり、第76移動隊は新たに戦力増加となるのか。


書類提出が色々と大変だな。


「分かった。第76移動隊隊長権限において、入隊を許可する」


アルの顔が見違えるくらいに輝いた。こんな顔を見られるなら悪くはないかな。


「では、新たな枠組みを決めて行こう。次は音界との取引の話だ」


アリエル・ロワソの声にオレは背筋を伸ばした。

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