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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第二百二十八話 出発

亜沙がルーチェ・ディエバイトのトトカルチョによって手に入れた大金は様々なマスメディアが由姫以上に食いついていた。


宝くじどころじゃない。本当に億万長者になったからでもある。普通は放送されないものだが、その大金がすでに消費されたからか、マスメディアは食らいつきは半端なかった。


そう、終業式があった今日も。


「相変わらず人多いな」


委員長を送って駐在所に戻って来ると、そこにはたくさんの記者の姿があった。その中の一人がオレに近づいてくる。


フリージャーナリストの寄本よりもとだ。NGDの時に何回も取材を受けたことがある。


「周君じゃないか。今帰り?」


「まあな。今日はやけに多いな」


「どこかのバカな放送局が特集を組んだからな。ルーチェ・ディエバイト関連で亜沙さんも出すらしい。ちなみに僕は君のことだ」


「だろうと思ってた」


寄本は何故かオレにご執着らしい。まあ、寄本の話は面白いからオレを退屈にさせないためやりやすい。


「次世代関連? それとも」


「NGDについて。ここで聞きたいところだけど、うちの編集長がね、一度周君を呼んで周君一冊の本を作りたいと息を巻いているよ」


「売れるのかよ」


「売れるよ。それに、僕も記事の書き応えがあるからね」


それは良かった。オレの記事を嫌々書かれていたらこっちが困っている。


「そうだな。7月30日。ちょうど学園都市に向かう用事があるから、3時頃からはどうだ?」


「わかった。7月30日だね。すごく楽しみだよ。それにしても、今まですぐだったのに今回は時間がかかるんだね」


「ああ。今日から一週間ほど中東に向かうんだ。亜沙を連れてな」


その言葉に駐在所の前に集まってきていた記者達の動きが固まった。完全に亜沙の名前を出したからだろう。


「それと、ルーチェ・ディエバイトのトトカルチョで手に入れたお金だけど、発表は8月29日まで待ってくれ。その日まで関係者の誰も話さない。無理に聞き出そうとするなよ」


「それはどうしてでしょうか?」


記者の一人が純粋な疑問と共に尋ねてくる。それに対してオレは苦笑で返した。


「軍法会議に参加したいならどうぞ」


脅すと共にこれは歪曲的なヒントでもある。


軍法会議に参加ということは使われたお金が『GF』関連の最新兵器に使われたということになる。これでも十分な情報を与えた。後は、


「ヒントは足。楽しみにしておけよ」


記者の間をすり抜けて、オレは駐在所の中に入った。中ではすでに亜沙が荷物を整えて準備をしている。


リュックサックの中に入った着替えと、腰に身に付けられた矛神。対するオレは自分の机の上に置いていたポーチを掴んだだけだった。


「さて、準備は出来てるし行きますか」


「慌ただしい奴だ。もう少しゆっくりしていったらどうだ?」


駐在所の中にある一般人用のソファーで寝転がって雑誌を読んでいる孝治が言ってくる。こいつは相変わらずだよな。


現在はまだ営業時間じゃないから出来る方法だ。


「悪いな。色々押し付けて」


「構わん。お前は元から詰め込みすぎだ。今日は俺と光が受付の日だから見送りは俺だけだ」


中村はシャワーを浴びているのだろう。まあ、下手に刺激しない方がいい。


「由姫と七葉は? あいつらは自由時間だろ?」


「由姫は友達と一緒に街の中心に。七葉は和樹とデートだそうだ。けっ」


彼女がいるお前がどうしてそんなことをする?


「悠聖は俊也と訓練。音姫さんは浩平、リースと見回り。都さんは生徒会長の仕事だろう」


「そっか。じゃ、オレ達は行くとするか。亜沙、準備はいいか?」


『いつでも大丈夫。周さんは荷物が少ないけど大丈夫?』


「大丈夫だ。問題ない」


ちなみに、着替えはレヴァンティンの力で収納している。ちなみに、本来収納していた他のモードのパーツは自室の机の上に積み重なっている。


ポーチの中に入っているのはお金だ。スリに会わないよう気をつけないと。


『羨ましいな。レヴァンティンの性能が高くて。私なんて未だに部隊で一人だけNGDじゃないし』


ヤバい。亜沙が拗ねだした。あのことを言うべきか。


『安心してください。中東に亜沙さんを連れて行くのはマスターとアル・アジフが作り出したNGDを渡すためでもありますよ』


「おい、漏らすな」


せっかく隠していたのに。


オレは小さく溜息をついた。


「亜沙のための新しい武器をアルと開発していたんだよ。ついでにNGDもプレゼントしようってことに。一人だけ仲間外れは悪かったな」


『ううん。周さんが私のことを忘れたと思っていた。由姫ばっかり見ていたから』


「悪い。でも、亜沙が大切なことは」


『わかってる』


オレの言葉を制して亜沙が満面の笑みを浮かべる。オレも笑みを浮かべ返した。


「あっついな。本当に熱々や」


その言葉にオレ達は同時にそっぽを向いていた。あまりの恥ずかしさに顔が熱い。というか、孝治の存在すら忘れていた。


孝治の方を向くと、孝治はニヤニヤしている。


「亜沙、行くぞ」


オレは亜沙の手をしっかり握りしめて歩き出した。そんなオレに背後から中村が声をかけてくる。


「やる時は避妊しやんなあかんで」


「そんな破廉恥なこと誰がするか!」

次からは中東に三話ほど移ります。

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