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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第二百二十四話 祝勝会

ルーチェ・ディエバイトが終わった。結果は由姫とリコの同時優勝。


ルーチェ・ディエバイト史上、初めての出来事らしい。だからか、ルーチェ・ディエバイト公式の賭博であるトトカルチョは大いに荒れた。


該当者がたった一人だったからだ。もちろん、亜沙のことで、賭け金総額が史上最高の200億ドルに達していたこともあり、本気で荒れた。


どれくらい荒れたかと言うと、暴動が起きたくらいに荒れた。本気で洒落になっていないが事実だ。


まあ、そんなことはオレ達ルーチェ・ディエバイト参加者及びセコンドみたいな面々には今は関係のない話(一人だけ当事者がいるけど)であって、祝勝会を開いていた。


ただし、公式の祝勝会じゃない。オレ達だけのこじんまりとした祝勝会だ。参加者はオレ、由姫、亜沙、リコ、アルト、エリオットの六人だけ。


オレ達六人は録画していたエクスカリバーVSアストラルソティスの映像を見ていた。


「おお、すげー、すげー! さすがメイドインジャパン」


「エクスカリバーはアメリカで作ったし、アストラルソティスはそもそもこの世界で作られていない」


目を輝かせているエリオットに対してオレは呆れたように溜息をついた。というか、一番年上なのに一番興奮していないか?


「エリオットは相変わらずだな。あっ、お嬢さん、私がつぎましょう」


「あ、ありがとうございます」


由姫が頬をひきつらせながら紙コップにアルトからジュースを注いでもらう。どうやらまだ由姫を狙っているようだ。


どうやって懲らしめてやろうか。


『一つ気になったけど、周さんから見てエクスカリバーとアストラルソティスはどれくらいの強さ?』


「難しいな。エクスカリバーは下手をすれば一線級の実力。アストラルソティスはそれに少し劣ったくらいか?」


計ったことはないが、戦闘結果を見る限りそれくらいであることは確かなはずだ。


『そんなに強いんだ』


「勘違いするなよ。こいつらがかなり強いだけだ」


オレは映像を指差した。そこにはフレキシブルカノンによる曲線射撃フレキシブルショットを避けるエクスカリバーの姿があった。


それを見ているアルトやエリオットの顔は本気で見ものだ。


曲線射撃フレキシブルショットを全て避けるのは理論上可能だ。理論上は可能なのだが、それを実行するにはフレキシブルカノン自体の曲線率を計算しなければならず、今回の場合は完全に勘だろう。


「フレキシブルカノンの射撃に関してはマテリアルライザーでも難しいところがあるからな」


『マテリアルライザーの回避力はおかしいから』


亜沙は不満そうに言う。まあ、確かにマテリアルライザーはすごいけど、回避力がすごいというわけじゃない。


駆動系に関しては開発中のフュリアスに取り入れたいとは思うけど。


エクスカリバーがアストラルソティスに突撃し、腕と頭を破壊する。これがエクスカリバーの最強技だ。


最大の加速で研ぎ澄まされた剣は断ち切れぬもののない刃となる。


オレがエクスカリバーを作る時からこれを狙っていた。だから、エクスカリバーの機体には鉄を少し多めに使っている。


「すっげー、ほんますげー。周、俺にエクスカリバーをくれ!」


「無理だ、バカ。エクスカリバーはスペックの高さから生産中止になったものを悠人専用にスペックを高めたやつだ。素人に扱える機体じゃない」


「へぇ~、エクスカリバーってそんなにスペックが高いんですね。ちょっと戦ってみたいです」


「あたしはやだな。刃が通らないと思うし」


オレは小さく溜息をついた。こいつらは頭の中から戦闘狂かよ。


「周ちゃんも酷いよね。まさか、由姫が八陣八叉の型にはまっていないことを逆手に取って戦い方を覚えさせるなんてね」


オレがそれに気づいたのは狭間戦役で狭間市での鬼との戦い以降だ。里宮本家八陣八叉流の型を取らなければ使えないのを知ったオレは戦場で有利になるために他の戦い方を教えた。


どちらかというと白百合流に近いものだ。ルーチェ・ディエバイトが近くなってからは由姫と音姉の二人で訓練させた。


その結果がこれだ。八陣八叉流にとらわれない白百合流も使いこなす完成系。


「ルーチェ・ディエバイトに出したのは由姫に自信を持って欲しかったからだ。由姫が白百合流も使いこなすことで白百合の名を誇って欲しかったからだ。まあ、移動術だけだけどな」


本来はもう一つ教えていたけど、由姫が効き手である右腕を壊していたのでルーチェ・ディエバイトでは使わなかった。


でも、由姫はオレ達の思いに答えてくれた。


「兄さん、一つ質問なんだけど、第76移動隊の模擬戦じゃあまり通用しない私の移動術がどうしてルーチェ・ディエバイトでは通用したのですか?」


確かに、過去の模擬戦を見ていても、由姫が勝てたのはほとんど力任せだったなと思い出す。


確かに、由姫のステップはほとんど合わされてやむなく八陣八叉流の型をうろ覚えで使ったこともあったような。


「そりゃ、由姫に教えたのは白百合流だからな。白百合流を使う現役はオレ、音姉くらいだ。慣れてる奴らがルーチェ・ディエバイトに出るわけないだろ」


ルーチェ・ディエバイトに勝てた原因はそれが多い。白百合流は相手の動きを誘う部分があり、対する八陣八叉流は相手の攻撃にカウンターを入れる技術がある。


二つが合わさったら反則に近いのだが、白百合流の距離の取り方には少し欠点があって孝治とかはそれをよくついてくる。


まあ、音姉は剣技が桁違いだからそんな欠点はものともしないけど。


「まあ、俺はリコにやられたけど、まさかアルトも負けるとは思わんかったわ。『鋼鉄騎士マテリアルナイト』は蹴り飛ばしていたし」


「そうだね。あれには僕も驚いたよ。まさか、『鋼鉄騎士マテリアルナイト』どころか『鋼鉄処女アブソリュート』も抜いてくるとはね。さすが周の妹だ」


「どういうことですか?」


アルトの言葉に由姫が不思議そうに首を傾げる。すると、リコがクスクス笑い出した。


アルトは顔を真っ赤にしてリコを睨み付けている。そんなに恥ずかしいことじゃないと思うんだけどな。


「アルトは周ちゃんに負けっぱなしだからね。『鋼鉄処女アブソリュート』も最初に抜かれたのは周ちゃんだったし」


「あの時は屈辱だったよ。レアスキルの御披露目で対戦した周に『鋼鉄処女アブソリュート』が簡単に割られたからな」


あの時は試したい技があったから使ってみたのだが、どうやらそれが『鋼鉄処女アブソリュート』の弱点だったらしく、瞬間で砕けたからな。


あの時はオレも驚いた。


「アルトの場合は『鋼鉄処女アブソリュート』に傾倒しすぎているんだよ。『狂乱騎士バーサーカー』ももう少し上手く運用すれば良かった。実際に、由姫との勝負はお前が勝てたぞ」


鋼鉄処女アブソリュート』、『鋼鉄騎士マテリアルナイト』、『狂乱騎士バーサーカー』の使い方次第ではアルトが由姫を圧倒しただろう。由姫も恐れがあったみたいだし。


「私が勝てたのは兄さんのおかげですから。あの時、兄さんからの言葉がなかったらアルトさんにやられてました」


あの時はオレも必死だったからな。あのまま後ろに下がったなら由姫がもう戦えなくなると思った。


それでも良かったけど、一番安心出来るのはそばにいることだから。


「それはそうと話を変えて」


リコが明るく言いながら亜沙の肩を掴んだ。そして、みんなの真ん中に押し出す。


「トトカルチョの単独的中者の亜沙さんでーす。で、一体いくら貰えるのかな?」


そう言えば、リコは孝治と同じでお金を貯めるために『GF』に入っているって聞いたことがあるな。それだからか?


亜沙はスケッチブックを恐る恐る開いた。


『130億』


オレは持っていた紙コップを落とす。それはその場にいた誰をも同じだった。円ではない。レートが桁違いに低いものでもない。


トトカルチョはドルしか受け付けていない。つまり、


「お兄ちゃん。今の円のレートは?」


「素に戻っているぞ。ちょっと待ってろ」


オレはレヴァンティンを取り出して震える手でレートを調べた。今の値段は、


「1ドル=103円91銭。大体一兆三千億強か?」


「一人で国家を動かせるね」


アルトは冗談を言ったつもりなのだろうが、誰も笑っていない。あまりの額の高さに呆然とするしかない。


一兆三千億の使い道なんてない。寄付をするにもどこに寄付をしたらいいかわからない。


すると、亜沙はスケッチブックをまた開いた。


『私に一つの案があるんだけど』


ルーチェ・ディエバイトを書いた理由。それは膨大なお金を手に入れるため。

ちなみに事実です。お金の使い道が出るのはもう少し後に。想像しながらお待ちください。ヒントは移動隊の足。


次から夏休み編です。戦闘はなくなる予定です。

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