第二百八話 旋回式電磁砲
この話に切り札です。
ペダルを踏み込みブースターを動かす。レバーを操作し不規則に出力を上げることで予測を不可能にする。スラスターでそれらの変動を限界ギリギリまで操作する。
はっきり言って、僕でなければ今頃落ちていても不思議ではない行動だった。ほとんど無意識に、自分の勘が告げる場所に最高の技術力で到着する。そうしていると不思議なことに攻撃は当たらなくなっていた。
でも、限界は近い。アストラルソティスの攻撃がどのようなものかわからないけど、ほぼ全方位から攻撃できるなんてありえない。マテリアルライザーと戦う方が楽なように思える。あっちはあっちであらゆる攻撃を避けられる絶望を味わえるけど。
アストラルソティスの位置を確認する。エネルギー弾は直線的にほとんど飛んでこない。だったら、近接格闘戦に持って行くのが一番か。
僕は出力を上げペダルを勢いよく踏み込んだ。スラスターの力で強引な姿勢制御と方向転換を成功させアストラルソティスとの一直線のルートに入る。アストラルソティスはエネルギーライフルを構えたままだ。距離は1400m。ちょうどいい距離だ。
「今だ」
僕は機動オプションを身に付けた。
ニトロブースターだけじゃない。エクスブースター、ジェットブースターなど同時装着が可能なブースターをこれでもかと取り付ける。そして、出力を最大まで上げた。
「がはっ」
体がシートに押し付けられる。パイロットスーツの力でも耐えきれないほどの圧力。僕は全ての機動オプションをパージした。
減速が始まる。それと同時に視界に入るアストラルソティス。その距離はほぼ400m。
「今だ」
エクスカリバーの形態を戦闘機形態から人型に変形させて地面に着地する。その時点で距離は300mを切っていた。ペダル操作とレバー操作で距離を詰める。
アストラルソティスはエネルギーライフルを構え、引き金を引いた。放たれるエネルギー弾は一直線にエクスカリバーを狙う。だから、レバーを横に倒した。
戦闘機形態に変わったエクスカリバーの頭上をエネルギー弾が駆け抜ける。それがわかっていたのか戦闘機形態のエクスカリバーに迫るエネルギー弾。完全な直撃コースだ。だから、僕は出力を上げながらレバーを立てた。代わりに機動オプションを取り出す。
ペダルを踏み込みつつ取り出した機動オプションに精神感応を繋げ、ブースターを起動した。
轟音。
表現としてはそれが一番だろう。少し盛り上がっていた地面の大地が吹き飛び、エクスカリバーの体が浮かび上がる。しかも、高速に。
エクスカリバーの足元をエネルギー弾が通り過ぎた。今のルーイの顔はさぞかし面白いことになっているだろう。
エクスカリバーに取り付けられた機動オプションはカスタムブースター。本来は人型で翼が正面から見た場合完全に体に隠れるように移動するが、カスタムブースターを付けた場合だけはその翼が翼をもっているかのように横に開いている。空気抵抗が極めて高くなるが、カスタムブースターの出力がそれを補っていた。
本来ある翼の上からぴったり装着されたカスタムブースター。その先には自由に360度旋回が出来る旋回式ブースターが取り付けられていた。つまり、浮かび上がるのも前に進むのもこれ一つで済むということだ。しかも、カスタムブースターにはエクスカリバーに積んである出力エンジンと同等のものが積み込まれている。
ただ、周さんの話ではカスタムブースターを一つ作る値段でエクスカリバーがもう一機作れるらしい。
カスタムブースターの旋回式ブースターを最大限まで使ってアストラルソティスとの距離を詰める。
アストラルソティスはエネルギーライフルを捨てエネルギーサーベルを引き抜いていた。僕は対艦刀を取り出しエクスカリバーの両手で握り締める。そして、地面を蹴りながらさらに距離を詰めた。
『その装備、その技能、その性能。何から何まで羨ましいまでの機体だな!』
ルーイの声と共に対艦刀とエネルギーサーベルがぶつかり合い火花を散らす。アストラルソティスは足を振り蹴りつけてくるが、それを僕は旋回式ブースターの力で回り込んで回避する。そして、また対艦刀とエネルギーサーベルをぶつけ合った。
出力は同じ。小回りはアストラルソティスに軍配が上がるけど、機動力は確実に上だ。向こうの行動を先読みしてこちらの有利な条件に持っていく。僕は悟られないように新たな武装を取り出した。
「そっちこそ、まさか、僕がここまで追い詰められるとは思わなかったよ!」
『僕もだ。まさか、あそこまでしてほとんど当たらなかったのは悠人が始めただ。誇っていい。だが、近接格闘戦では負けるわけにはいかない!』
アストラルソティスの姿が前から消える。急激な加速で横に回り込んだのだ。対艦刀とエネルギーサーベルをぶつけあったまま。でも、ルーイは気付いていただろうか。僕がアストラルソティスに回り込むことでプレッシャーをかけていたのと同じように、アストラルソティスを僕が誘っていたのも。
人にする嫌がらせはされると一番嫌がることがある。その言葉通りにアストラルソティスが背後に回り込んでいる。そして、今頃目を見開いているだろう。両手で握るエネルギーサーベルが対艦刀によっt阻まれているため避けることはできない。
アストラルソティスの目の前にある旋回式電磁砲を。
旋回式電磁砲から実弾を放った。アストラルソティスが慌てて回避するが左の翼が実弾によって貫かれバラバラに吹き飛んだ。
僕はエクスカリバーを動かして距離を取るのと同時にアストラルソティスが距離を取ろうとする。僕は振り向きざまに旋回式電磁砲の砲身を前に向け、実弾をもう一発放った。
アストラルソティスの右の翼を粉砕する。
カスタムブースターを付けている場合、正面からでは旋回式電磁砲が後方に向けられている時、その姿を確認することはできない。回りこむことによってその姿を見ることが出来る。今回はそれを使った。
左右の翼を破壊されたアストラルソティスの姿が消える。どこかに移動したのだろう。僕は小さく笑みを浮かべた。そして、弾切れを起こした旋回式電磁砲を収納する。
旋回式電磁砲は極めて強力だが、最大で二発の実弾、左右に一発ずつ、しか積めないため長期戦には不向きだ。でも、このような不意を突くことに関してなら真価を発揮できる。
「ルーイ、確かに今のタイミングで距離を取るのは正解だよ。でも、エクスカリバーの真価の前ではそれは失敗なんだよね」
次の話で勝負が決まります。