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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第二百四話 演目披露予定

「リリーナ」


僕は近くの椅子に座って息を吐いているリリーナに話しかけた。


リリーナは疲れたような顔をしている。僕も疲れているけど、エクスカリバーは爽快感があるため疲労は心地よい。


リリーナがやはり疲れた顔で僕を見上げてくる。


「悠人、ご苦労様~」


その声もどこか疲れている。まあ、リリーナが今やっていることを考えると仕方ないか。


「リリーナも。僕はエクスカリバーに慣れたしね」


御披露目が明日になり、僕はさっきまでエクスカリバーを扱っていた。今日は追加装備をふんだんに使いながら。


追加装備を使ってわかるけど、エクスカリバーの凶悪さが桁違いに上がる。特に、旋回式電磁砲は反則だ。弾数制限があるけど。


「あう~、リリーナはまだ慣れないよ~」


私ではなく自分のことをリリーナと呼ぶリリーナは疲れている時やぼーっとしている時だ。リリーナにとってあれは疲れるだろうな。


「明日なのに~、悠人に恥ずかしい姿を見せちゃうよ~」


「気ままにやればいいと思うよ。リリーナはソードウルフの演技と新兵器の披露だよね」


「うん」


新製品の披露は昨日急に決まったことだった。対フュリアス用、対人用の兵器ではなく、巨大フュリアスであるゲイルナイトのような要塞に対する新兵器。


対要塞用グラビティキャノン。


威力はバスターマグナムを遥かに超えるが追加装備をつけたソードウルフ以外撃てないという凄まじい兵器。


ただ、反動が桁違いでリリーナでも心身共に疲れている。


「披露が先だからまだマシだよね」


「そうだよ~。でも、グラビティキャノンなんて誰が考えたのかな~?」


リリーナが椅子の上で肩を落とす。


グラビティキャノンを作ったきっかけが僕だとは言えない。


ソードウルフの最大出力は出力エンジンを三つ搭載するエクスカリバーと同等な上に攻撃出力ならエクスカリバーより遥かに上だから、ゲイルナイトを一撃で落とせる武器を作れないかなと言ったのが始まりだ。


本当に完成するとは思わなかったけど。


「悠人の方は大丈夫? 明日の模擬戦はたくさんの職人の命がかかっているんだよ」


いつの間にかリリーナは背筋をしっかり伸ばしていた。どうやら疲れがとれてきたらしい。


それに対して僕は軽く肩をすくめる。


「どうかな。エクスカリバーは確かにダークエルフを超える最高傑作だと思うよ。でも、アストラルソティスがどこまでの飛翔能力があるかで大きく変わるから」


エクスカリバーの最大の特徴を戦闘機形態における高速空中戦闘だとするなら、アストラルソティスの最大の特徴はあらゆる敵に対して対応出来る能力だろう。だから、エクスカリバーにどこまで追いついてくるかが問題だ。


エクスカリバーを最大限まで使って勝つ確率は大体五分くらい。ただし、アストラルソティスが何らかの能力を隠していなかったら。


「明日か。悠人、最近なんか時間が早くなったように思えない?」


言われてみればそうだ。僕がリリーナや鈴と出会ってから周囲の環境が目まぐるしく変わったように思える。


全ては狭間市に行ったことから始まった。


「『狭間戦役』。それが私達の始まりだよね」


「うん」


『狭間戦役』の最初、狭間市の最も長い一日と呼ばれた日に僕とリリーナは出会った。


僕はダークエルフの初実戦を行い小破したためパワードスーツで防衛に参加していたところ、殺されかけていたリリーナを助けたのが始まり。

それから、復興の最中に鈴と出会いたくさん宝探しに出かけた。あれは鈴が結城・真柴家の目的僕達を遠ざけるために出かけたけど、あの時間は本当に楽しかった。


そして、結城・真柴家の戦い。ルーイと出会い、イグジストアストラルに乗った鈴を取り戻すためにかなり無茶をした。


でも、みんなと戦い、ルーイと仲良くなり、語り合えたから今では音界とは仲良くなっている。


明日はアストラルソティスとの戦い。周さんから託された聖剣の名を冠するフュリアスで僕は大空をかける。


その日には周さんやアル・アジフさんだけじゃなく、各国の代表も来る。失敗は出来ないけど、それ以上に戦いを楽しみたい。


「悠人?」


リリーナの言葉に僕は我に帰る。


「えっ? あっ、ごめん。考え込んでいた」


「やっぱり? 悠人の顔が本当に楽しそうだったから。そんなにルーイと戦うのが楽しみ?」


「うん」


僕は即答で頷く。ルーイと、人界と音界の現時点で最高傑作同士が戦い合うのに楽しみじゃないなんてありえない。僕はそれほど楽しみにしている。


それに、


「メリルを絶対にアッと言わせてやるからね」


「メリルって、確か音界の歌姫だよね? 喧嘩したの?」


「こっちの世界のフュリアスはポンコツだって言うんだよ。確かに、ダークエルフなら言われても仕方ないけど、エクスカリバーはNGF、次世代フュリアスなんだからポンコツって言われる理由にはならない! というか、戦闘能力を見てないのにポンコツ言うな!」


僕の言葉にリリーナが呆れたように乾いた笑いを浮かべる。ちょっと興奮しすぎたかな。


「悠人、NGF、次世代フュリアスって今までのフュリアスとどう違うのかな?」


「えっと、今までのフュリアスはほとんどに精神感応システムを使っていないんだ。ダークエルフとか特殊な機体を除けばね。エクスカリバーは最新の精神感応」


そう言ってパイロットスーツの内側に隠してある首輪をリリーナに見せた。


「この首輪を使って精神感応を作用させるんだ。ダークエルフでも試作型を搭載していたけど、エクスカリバーは正式なもの。だから、NGFって呼ばれてるんだ」


「あれ? フュリアスって精神感応無かった?」


「うん、あるよ。全ての機体に」


だから、僕は使っていないと言った。


精神感応はこの首輪タイプを除けば脳にチップを埋め込むために手術が必要だ。それにはかなりのリスクを伴うため普通のフュリアスでは使わない。


「NGFの機体、エクスカリバー。それが演目披露予定とあらば、たくさんの人が否が応でも参加するしね」


「ああ。NGD現象だね」


リリーナの言うNGD現象は次世代デバイスが開発され、それなりの成果を収めて御披露目された時のことだ。


全世界のマスコミが集まり、NGDの特集がかなり組まれた。どういうルートを通ったかわからないが、NGDを持つ都さんのところにも取材が来ていた。


周さんの話では第76移動隊全員がNGDを持っているし、エクスカリバーの集積デバイスはNGDの集まりだ。


「新作の演目披露予定。みんなが食いつく物事だよね」


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