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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第二百二話 星空

最近亜紗の出番が少なくなっているような気が

満天の星空が見えるその下にオレと亜紗の二人は屋根に寝転がっていた。周囲は静けさが支配し虫の音しか聞こえない。第76移動隊のみんなは疲れでもしたのかもう眠っている。


みんなが寝静まり返っているのにオレと亜紗の二人は屋根の上で寝転がりながら空を見上げている。


『綺麗だね』


亜紗が話しかけてくる。精神感応を使って。これなら会話を邪魔されることなく話せるからだろう。


ああ。


オレも精神感応を使って返す。もし、由姫が起きてきたならこんな静寂はあっという間に破られるだろうしな。今は、静かであることの方がいい。


『周さんは凄かった。魔術が使えなくても今まで鍛えた体がちゃんと反応していた』


自分の鍛えた体は裏切らない。まあ、一生懸命鍛えていたらだけどな。それにしても、亜紗もだいぶ楽しんでいたんじゃないか?


オレの疑問に亜紗は無言だった。でも、この雰囲気からしっかり楽しんでいたということだけはわかる。亜紗だって人の子だ。楽しいことは楽しいはずなのに、オレのように、いや、オレ以上に普通であることを怖がっている。


もしかしたら、自分が話せないことに引け目を感じているのかもしれない。


亜紗は、普通の人生は歩みたくないのか?


『そういうわけじゃにあ。私だって普通の人生を歩みたい。周さんと結婚するとか』


オレの顔が赤くなるのがわかった。多分、亜紗の顔も真っ赤に染まっているだろうな。


『でも、学校というのは私の心を揺らす。みんな優しいから、その優しさに頼りたくなる。私は非常じゃなければならないのに』


多分、第76移動隊の中で一番人を殺した回数が多いのが亜紗だ。もっともフロントに立ち、ひたすら刀を振り続ける亜紗の姿は『殲滅姫(マーダープリンセス)』の名前をもらえるほどになっている。


だから、人とかかわることを極力減らしたいのだろう。自分が殺すのもまた人なのだから。


別に非常じゃなくてもいいさ。むしろ、オレは非常だった方が心配だな。いつか、亜紗が戦場の中で独りぼっちになって死ぬかもしれないから。


『私は死なない。ううん、死ねない。私にはまだまだやることがあるから』


気負いすぎるなよ。お前は一人じゃないんだから。


亜紗の手がオレの手に触れる。そして、オレはその手を握り締めた。


亜紗はどこか一人で戦っているような感じがある。オレといたとしても前に出て敵を倒そうとする。前に出る精神はさすがというべきだが、それが自分が傷を負う可能性を考えていないならただの無謀な行為だ。


『周さんは私が戦わない方がいいと思っているの?』


争いなんていい方がいい。


それはオレの本心だ。でも、人は争うことを止めることはできない。戦いはそんなに平和な世の中でも存在する。殺し合いという意味での戦いだけじゃない。学校だってそうだ。受験戦争とは誰がつけたか知らないけど的確すぎて笑えない。


人は争いを編めることが出来ない種族なのだから。でも、殺し合いという意味での戦いを止める方法ならある。


『GF』の存在は力の無いものを守るため。そして、無益な争いを起こさないため。国家間で行われる自分達の思惑通りに支配しようとするやり方じゃない。オレ達はその土地にあったものを目指している。もちろん、反発はあるさ。戦いだって起きるさ。でも、戦いを止めて話を聞く。それが一番大事なんだ。誰もが争わない世界はむしろ退屈なんだけどな。


だけど、オレは戦争は許容しない。そう言うことだ。まあ、今の言葉は亜紗もわかっているだろう。昔に効かせたことがあるし。


案の定というべきか、亜紗は頷いていた。もちろん、そんな夢想が実現できるなんて亜紗も思って以内だろう。オレが言いたいのは、力に頼ったものではなく、話し合いをしようというのだ。


大国が小国にするような話し合いは力によって圧力をかけながら従わせようとする。従わないなら戦争を勃発させるとでも言うかのように。


それをさせないたもの組織が『GF』だ。


『もし、争いがなくなったなら、私は普通の人生を歩まないといけないの?』


わからないなら一緒に歩けばいい。戦いに身を付けた人なんていくらでもいる。いくらでもいるから、亜紗みたいな人がいても同じような人達がいるんだ。もし、そんなことが起きるなら、戦っていた敵とも仲良くして友達になりたいな。オレはそう思う。


『周さんらしいな。私、時々思うの』


オレが手を握っている反対側の手をまるで星を掴むかのように伸ばした。もちろん、星なんて掴めないのだが、その握りしめられた手には何か力がこもっているような気がする。


まるで、この星空に何かを思ったかのように。


『私の立ち位置がわからなくなる時がある。周さんと一緒に戦う私と、学校の中でクラスメートと談笑する私の二人がいるような気がして、少し怖い。いつか、私が私じゃなくなるんじゃないかって不安が押し寄せてきて』


不安か。確かにそうだな。オレだって今の日常がどうしようもないくらいに楽しいんだ。『GF』の海道周、総長の孫としてのオレ、じゃなくて、普通の海道周として見てくれるからかもしれない。普通に接してくれる。力があるなんて関係なしにな。


亜紗が不安に思うことはよくわかる。実際にオレが不安に思っていることでもあるから。時々、逃げ出したくなる。全ての戦い亜から。でも、オレは絶対に逃げ出さない。この力をもらった茜のために。


それに、今は出来る限りお金を稼がないとだめだよな。


『私だけじゃないんだ。周さんも不安なんだ』


誰だって不安だよ。戦うことが怖くない奴なんていない。それでも、オレ達は戦う。今の過ごした普通である日常を守りたいから。


もし、『GF』が存在せず、それに近い組織もなければ、今頃世界は世紀末だろう。オレはそう思っている。だって、世界の治安の半分は『GF』によって保たれていると自負しているから。違っていたらかなり恥ずかしいけどね。


『この星空のように自由に輝きたいな』


「急にどうした?」


あまりにもらしくなかったので思わず口に出していた。亜紗がクスッと笑う。


『双子星のように周さんと一緒にいたい』


夢壊すようで悪いけど、双子星ってかなり距離があるからな。ちょっとやそっとじゃたどり着けないぞ。


『夢を壊さないで』


亜紗の言葉にオレは笑う。なにはともあれ体育祭は終わった。これから色々と騒がしくなるだろう。だから、


「精一杯暮らして、精一杯思い出を作ろう。それが今のオレ達にできる最良の方法だ」


これからは色々とあるに違いない。正規部隊として可動出来る以上、移動隊を生かした行動をスk¥るかもしれない。だから、今はこの暮らしを楽しもう。


『うん。自分を見つめなおすのも忘れないようにしながら』


次からエクスカリバーVSアストラルソティスについて本格的に書いていきます。

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