幕間 探し求めるもの
幕間はかなり深い部分を書いていますが後々にまとめられるか心配です。
ニューニューヨークにある『GF』本部総長室。そこに慧海、時雨の二人は向かい合って座っていた。二人の手元にあるのはとある資料。さきほど、周から送られたとある資料だ。
「合わせ鏡の世界に。あいつ、面白いことを言いやがる」
「事実だろ。実際にそう言う意見はオレも行ったはずだ。人界、音界、魔界、天界、その全てが一つになる要素を持つ。そして、周が考えたとある推測」
資料の最後に書きなぐられた文字の羅列。時雨はそれを見ながら小さく息を吐いた。
「これは完全に盲点だ。確かに、今までのことを考えたら理解できる」
「そうなるな。科学時代は科学の発展により、魔科学時代は魔科学の発展により、神威時代は人が神を殺すほどの力を得、神剣時代は神剣が全て人間の手に渡り、そして、この時代は魔術と魔科学がついに合わさった」
今回の人界と音界との新たなゲートの出現。それは、魔術と魔科学が合わさったということ。つまり、どちらか片方しか発展していなかったものがお互いの技術を使ってどちらも発展するということだ。
「文明の発展ではなく、軍事力の発展により何かが起きる可能性。はっきり言うなら眉唾ものだが」
「文明の崩壊の仕方をオレ達が知る以上。無視できない」
「そうなる。ったく、周の奴も大変なものを送ってきたものだ。時雨はどう思ってる?」
「全面的に賛成だ。反対する要素が見つからない」
その言葉に慧海も頷いていた。そして、小さくため息をつく。
「オレが百年かけて探してきたものを周は簡単に見つけるんだな」
「ああ。周はオレ達の希望だ。力を知らなかったからこそ、力を手に入れても驕らない。そして、自分のために誰をも救おうとする。懐かしいな。昔のオレみたいだ」
「そうだな。昔のお前みたいだ」
慧海はそう言いながらニューニュヨークの街並みを見た。すでには太陽は沈んでおり、幻想的な魔科学の明るさが都市に満ちている。だが、周が見たら別のこと言うだろう。おそらく、変わったことを言うはずだ。
あいつはニューヨークの夜景が好きだったからな。
「まあ、あいつが見つけてくれたのは僥倖だ。オレは別のことに専念できる。『GF』はお前に任していいよな?」
「今はオレが総長だ。むしろ、お前の方がそっちの仕事は適任だ」
時雨と慧海が笑い合う。これからの方針を知っているからこその笑み。
「白百合の文献、里宮の文献はあらかた探しつくした。英国の博物館は入り浸っていたから中身は覚えている。世界最古のエジプト博物館の方はギルがあらかた探した。他にあるとするなら中国、かロシア。そして、アフリカだよな」
「中東は『ES』が探しつくしているだろう。それは周から聞けばいい。慧海、アフリカを頼めるか? ギルはロシアにつながりが深い」
「了解。エジプトを除くアフリカの探索だな。探すのは大変だけど、見つけるさ。じゃ」
慧海の姿が消える。それは魔術によって消え去ったわけでもなければ、普通に扉から出て行ったわけでもない。最初からそこに伊奈勝隆のように、まるで、糸が解けて見えなくなるくらいの繊維になるかのようにそこからいなくなっていた。
それは時雨は見ており、いつものことだからか椅子に深く腰掛ける。
「手掛かりは見つかっている。後は時間との勝負か。後七年。その間にデュランダルを見つけられるかどうか」
それはアル・アジフが探し求めている者であり、有名な聖剣の名前。時雨はその名前を言った。それが探し求めているものだから。
「今は、待つしかない。情報と、成長を」
その声はどこか切羽詰まった響きがあるように思えた。
慧海と時雨を活躍させたい。でも、能力がチート級なので活躍させれない。どうしたものか。