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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第二百一話 合わせ鏡の世界

体育祭が終わった。それは学校内部にあった熱気が消え去ったことを意味する。少し寂しさを感じながら、跡形もなく片付いた校庭をオレは屋上から見下ろしていた。


勝負はオレの、二組の勝ち。戦いで全ての力を出し切った心地良い感じは久しぶりだった。


「これが、普通の日常なんだな」


オレは屋上のフェンスに手をかける。普通の人生からはかけ離れた人生。もう、普通の日常なんて諦めていたはずだった。


でも、ここに、この狭間市に来てから普通というものに深く関わっていると思う。そして、それが本当に楽しい。楽しくて楽しくて、戦うことを忘れそうになる。


でも、戦うことを止めることは出来ない。オレに力をくれたあいつのために。


「ごめん、遅れた」


エレノアの声にオレは振り返っていた。そこには『炎熱蝶々』を展開しながら降りてくるエレノアの姿。


そう言えば、エレノアとはここで再会したよな。


「大丈夫だ。黄昏ていたから」


「名残惜しい?」


オレは頷いていた。体育祭に向けてチーム一丸となっていた。まるで、戦場に向けて力を合わせあうチームのように。そういう空気が心地良く、名残惜しい。


「まあな。普通は捨てたはずなんだけどな。やっぱり子供だ。でも、今はそれで良かったと思ってる」


「別に無理に大人にならなくてもいいのに」


「わかっているさ。でも、早く大人にならないと、この年齢を理由に色々難癖つけてくる奴が多いしな」


例えば評議会。第76移動隊が正規部隊として登録されることになったとしても、まだまだ文句を言う爺共がいる。特に孝治はそいつらにキレていたな。


例えば世論。第76移動隊は平均年齢が極めて低い。だから、世論の一部が反発している。子供に戦わすなと。そいつらと喧嘩したのはいい思い出だ。


子供を親のおもちゃだと思うな、と言った時に反論を全て潰した時の相手の顔はすごかったし。


「仕方ないと思う。私だって、『炎帝』になった時は年齢から反対されたし」


「エレノアは実力があるさ。オレなんて最強の器用貧乏だしな」


あまり活躍出来ないのが少し痛いか。それでも、オレにはやれることがたくさんある。


「まあ、頭の回転が早いのはいい利点だけど。エレノア、話の続きだ」


「うん。世界の滅びと文明の滅びは別物だということまでは聞いた。まだ、少し納得出来ないけど」


「まあ、急に話されたら突拍子もないことだと思うさ。でもな、この世界と音界のことを考えたら納得がいく」


エレノアは首を傾げた。だから、オレは最大の疑問点をエレノアにぶつけた。


「何故、この世界で魔術が極めて発展し、音界で魔科学が極めて発展したと思う? まるで、二つで一つ。合わせ鏡の世界のように別々に発展したと思う?」


「この世界だって魔科学は発展してるよね? あっ、でも、元は全てオーバーテクノロジーか」


オレは頷いた。


今の世界に溢れた魔科学製品は全てオーバーテクノロジーから生まれたということを知っている人はどれだけいるだろうか。


ここ五十年の間にアルタミラなどのオーバーテクノロジーの産地から発掘されたもので文明が発展したと知る人は少ない。少ないからこそ気づかない。


フュリアス、第二世代のアイゼンや第三世代のダークエルフは元はアル・アジフが持っていたオーバーテクノロジーからだ。


「デバイスも、テレビも電話も全てがオーバーテクノロジー産物。それを魔科学の発展と言えるか?」


形が残りやすかったからこそ、魔科学は今でも発展している。だが、音界では常に魔科学が発展していた。この世界とは逆のように。


「まるで、合わせ鏡の世界だ。最初から重なり合うのが目的だったみたいに」


「でも、それが滅びと何の関係があるの?」


「これからは文明が発展する。文明が発展するということは人類が力を持つということだ」


「まさか、人が世界を滅ぼす?」


オレは頷いた。力を持てばそれを使う人達が出て来る。その力のために誰をも虐げようとする。


そう考えれば結城、真柴両家の行いもわかる。


結城家は世界を制して社会のゴミを戦わせると言った。つまり、弱者を使い世界を統べるということだろう。星喰いは精霊と鬼の力を得ようとした。力によって全てを押さえつけようとした。


「狭間の鬼が悠聖に言った言葉も大方はこれで理解出来る。世界を滅ぼさせないための鬼ということだ」


「でも、そんな力があると思うの? それに、周はその答えを信じていないよね?」


エレノアの言葉にオレは微かに動きを止め、諦めて溜息をついた。そして、フェンスに背中を預ける。


「どうしてわかった?」


「周にしてはあまりに推測すぎるから。周はもっと理路整然として言うのに、希望的観測はありえないし」


エレノアはよくオレのことを見ているみたいだ。そういう奴がいてくれてオレは本当に嬉しい。


オレは笑みが浮かぶのを隠さず口を開いた。


「滅ぶのがここじゃないとすれば?」


「どういうこと?」


エレノアは首を傾げる。


「魔界は魔力粒子が極めて多い。天界は魔力粒子が少なめ。これはエレノアも知っているよな?」


「うん。魔界出身だし。それが何の関係があるの?」


普通はそうだろう。それが何を意味するのかオレだって言われてもわからない。でも、今までに世界が滅んだことと、この世界のことを考えたら一つの推測が出来上がる。


「オレが別のことを言ったのは次も推測だからだ。途方もないくらいにな。魔界と天界、人界と音界。どちらも合わせ鏡の世界だとしたなら、それらは関わり合いがあるということだ」


二つが関わり合って一つになるということは合わせ鏡ということだ。それは二つが関係している。つまり、


片方に何かが起きたらもう片方にも変化がある。形が歪んだものと合わせても、元の形にはならない。


「四つの世界が全て合わせ鏡の関係だとして、その合わせ鏡たる中心の存在があるとしたら?」


その中心を合わせる場所だと仮定した場合、この推測が出来上がる。


「その根源たる世界が滅んだ時、連鎖的に世界が崩壊する」


「ちょっと待って。もし、その世界が滅ぶとしたなら、どうして未来を知る者が」


「その世界に行けるとするなら?」


今では魔界、天界、音界へのゲートが見つかっている。音界のゲートなんてつい最近見つかったものだ。なら、他の世界へのゲートがあってもおかしくはない。


近い未来にその世界に行けるなら? その世界が滅ぶから兵力を出して阻止しようとするなら?


「滅びが何なのか未だにわからない。でも、あらゆる世界で滅ぶ未来が存在するなら、それの元凶があってもおかしくはない」


「確かに、周の言う通りかも。根源界、にするけど。そこが魔界や人界の根っこだとして、そこが何らかの力で破壊されて、魔界も人界も共倒れなら納得出来る。周、魔界に戻っていい? ベリエとアリエを連れてその線から探ってみる。本当なら第76移動隊の監視下にいないといけないけど」


「そうだな。ギルガメシュと刹那に頼んでみる。オレも時雨や慧海に聞かないとな。あいつらなら、何か知っている」


だんだん第一章の終わりに近づいてきました。これからはエクスカリバーVSアストラルソティスの後にルーチェ・ディエバイト。そして、夏休み編です。夏休みはあまり長くしないので6月入った頃に終われたらなと思っています。

次回は久しぶりに時雨と慧海が出ます。

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