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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第百九十八話 平穏

周の趣味はヴァイオリン。

オレはヴァイオリンを下ろした。手入れは定期的にしていたものの久しぶり弾いたのでかなり腕が墜ちているのがわかった。でも、こいつらの前だと気にしなくていいだろう。


「どうだった?」


ヴァイオリンをケースに収めて尋ねる。オレの質問に誰もが無言だった。オレは苦笑しつつ一番前にいた都の額をコツンとつつく。


「どうだった?」


そして、同じ質問をした。


「周様、すごいです。本当にすごいです。私、感激しました」


「いや、オレよりすごい奴はいくらでもいるから。浩平やリースはどうだった?」


都から少し離れた位置にいる二人に尋ねる。


「周って何でも出来るんだな。いや、まじですごかった。お金は払わないけど」


リースもコクリと頷いている。みんなの反応が聞けてオレは満足だった。


今いる場所は都の家。時刻は放課後になって一時間後。


ちょうど息抜きをしたかったから都にヴァイオリン聞いてもらおうと思い来てみれば、浩平達もいたので一緒に聞いてもらったのだ。


まあ、評価は概ね良かった。


「良かった。これで罵詈雑言が飛んできたらどうしようかと思っていたよ」


「今の音色ならお金を払うなら満足いかないけど、個人がやったり街角でやるなら十分だと思うぜ。リースはどう思う?」


「吟遊詩人になれる」


「それが天職だといいたいのか?」


リースが笑みを浮かべながら頷いた。こいつのこういう顔は浩平と付き合い出してから頻繁に見れるようになった。最初は無表情だったから少し怖かったところもあったけど。


すると、部屋にチャイムの音が鳴り響いた。都が立ち上がって玄関に向かう。


「客人か? 誰だろうな。周のヴァイオリンを聞き逃すとはもったいない」


「多分、知り合いだろう。そうじゃなかったら宅急便。都の家に訪問者があることが珍しそうだし」


すると、廊下からこっちに向かって来る足跡がやって来る。一人じゃない二人だ。


二人ということはつまり、


「あら、あなた達もいたの?」


顔を出してきたのは案の定琴美だった。琴美は少し驚いたようにオレ達を見ている。


「まあな。ちょっと休息を含めて。最近は調べものが多くてさ」


「そう言えばそうですね。私は訓練や調べものですけど、周様は常に調べものですし。どなたと連絡を取っているのですか?」


オレが連絡を取りながら調べものをしていた姿を都は知っている。だからこその言葉だろう。


オレは頷きながら肩をすくめた。


「アルトだよ。今度、ルーチェ・ディエバイトで由姫が戦うアルト。一応、あいつは大学に通っているからな。そっちの方で調べものを頼んでいた。まあ、時間はまだかかるみたいだけど」


「アルト」


リースが少し苦々しい顔になる。何かあったようだ。


「リース? アルトって奴がどうかしたのか?」


「あいつにコテンパンにされた」


アルトとはよく一緒の任務になっていたからあいつの能力は知っているけど、確かに当時のリースとは相性が悪かっただろうな。


オレみたいな相性の悪さではなく、速度という点で。由姫も下手をすればコテンパンにされるし。


「周、アルトってそんなに強いのか?」


「まあな。音姉、孝治に続く若手三番目の強さを持つ奴だ。『鋼鉄騎士』の異名を持ち、その防御力は極めて高い。七人チーム戦でよく取った戦法が、フロントに音姉とアルトを置いて、バックに孝治と中村。フロントがオレ、亜紗、悠聖でいったからな」


あの時はオレも音姉もレアスキルはほとんど発動させなかったのに正規部隊をいくつも倒した。


その時に手に入れた異名が亜紗と孝治以外継続している。


「ほうほう。つまり、フロントを任せれるくらいの戦闘能力なのか。周、そいつも第76移動隊に勧誘すれば良かったんじゃないか?」


「アルトは母国大好き人間なんだよ。それに、『僕はドイツ語より日本語の方が得意なんだ。だから、ドイツ語を勉強するよ』とか言う奴だ」


「その人はドイツ人なの?」


琴美が疑いの目でオレを見てくる。まあ、そうなるわな。


アルトは孝治と同じで外国語は堪能だ。まあ、孝治には勝てないけど。日本語に至ってはプロと言ってもいい。ただ、国語だけはダメだ。


どれだけダメかと言うと、孝治に確実に負けるくらい。


「ドイツ人だ。まあ、オレ達の兄貴分みたいな感じだな。感じ的には浩平みたいかな」


「ああ、バカなのね」


「バカなのですね」


「俺にバカって言われてる気分なんだが」


まあ、そうなるけど。


オレは小さく溜息をつきながら時計を見る。時刻から考えてここにいれるのは後一時間ほどか。


「そう言えば、琴美はどうしてここに来たんだ?」


「借りていたCDを返しにきたのよ。そしたら上がっていってと言われて来てみれば」


オレ達がいたということか。


「そうだな。琴美、何かリクエストはあるか? 今なら拙いヴァイオリンの腕で曲を奏でてやるけど?」


「へぇ、あなたはそんなことまで出来るんだ。そうね、ドラマ『Just a love』の最終回に流れた曲」


「『Just Alive』だったっけ。あれなら何とか出来るな」


オレはヴァイオリンのケースを開けてヴァイオリンを取り出す。


「あのドラマは斬新でしたね。恋愛ドラマだったはずが大地震が起きてサバイバルものの新ドラマに続きましたし」


あの展開には一緒に見ていた由姫や音姉も呆然としてしまったからな。まさか、次回予告にあった衝撃の最終回という言葉が現実になるとは思わなかったし。


オレは苦笑をしながらヴァイオリンを構える。


それにしても、平穏が続くな。


最後のドラマはとある雑誌に載っていたものを使いました。最初見た瞬間に呆然したので記憶に残っていましたし。

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