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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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幕間 シュナイトラファルト

シュナイトラファルトは中二くらいに作り出した言葉です。意味はドイツ語で言ってヴァイスシュヴァルツになります。日本語は本文に出てくるので。

一人の青年が地面を駆ける。青年の顔はフードを深くかぶっているからかよくわからない。でも、その腰にぶら下げられているのは白と黒の刀が二本。そして、身につけている服はフード付きの体を隠すようなコートだが、時おり見える場所には白の色が見える。


青年の走る速度はまさに風のように草原の中を全力疾走で駆けて行く。その後ろから追いかけてくる影が一つ。巨大な影でもあり、それは空を飛んでいる。


青年は微かに後ろを振り返り、そして、迫ってくる姿を見た。


「嫌な予感がして引いて正解だね。やはり」


青年が立ち止まる。そして、黒の刀を抜き放った。


「ここがあの地か」


黒の刀を振り抜いた瞬間、何かが潰されるような音が響き渡った。


潰されたものが地面に落ちる。大量の血と共に。その血の色は赤ではなく真っ黒だった。そして、その姿は地面に溶けるように消え去る。


「これ以上は進めないみたいだね。確かに、ここまで厳重に配置されているなら誰も行く心配がしないわけだ。あの語り部の言うこともわかるよ」


そう言いながら青年がフードを脱いだ。


現れる金髪。整った幼さを微かに残す顔。その顔は見た全員がイケメンと思うような神によって作られたともいえる顔だった。


青年が小さく息を吐く。


「さすがに、慧海に言われて顔を変えているとはいえ、やっぱりこの顔が一番かな」


そう言いながら青年、ギルバート・R・フェルデは息を吐いた。彼は気づいていないが、顔を変えた姿でも十分にイケメンのため何の意味もなしていない。


「あれ? 君は」


ギルバートはこちらに向かってくる影を見つけた。その影に近づく。


「ギルバートではないか。なにをしておる?」


アル・アジフだった。アル・アジフは周囲を見渡しながらギルバートに尋ねる。


周囲には生き物の動きがない。もちろん、虫の音も。


「調べものさ。君が単身で動いているのは珍しいね。どうかしたの?」


「いや、我も調べものじゃ。正確には場所を探していたというべきかの。ギルバート、ここは」


「ああ。そうだよ。ここまで来たなら君には話した方がいいかもね。その前に」


ギルバートが振り返る。そこにはやってきた者達を歓迎するかのように黒い異形達が並んでいた。


ギルバートが白の刀も抜く。


「歓迎者達は追い返させてもらうよ」


左右の刀を同時に横に振った瞬間、異形達の体が切断され一瞬にして潰された。まるで、握りつぶされたかのように。


「さすがじゃな。さすが、世界最強の剣士」


「よしてください。僕は最強じゃないよ。最強なのは音姫さんだから」


「そうじゃったな。ギルバート、聞いていいかの? ここはあの地なのじゃな?」


アル・アジフの言葉にギルバートが頷いた。それを見たアル・アジフがギルバートに背中を向ける。


「それだけを聞けば十分じゃ」


「十分? 君は周に答えを教えるために」


「それはせぬ」


ギルバートに振り返ったアル・アジフの顔には笑みを浮かんでいた。まるで、周を信じているかのように。


「周は必ず辿りつく。その時に説明するのが我の役目じゃ。それまでは我は話さぬ。それを周は嫌うからの」


おそらく、アル・アジフが言おうとすれば周はこう言うだろう。


何かを考えることを止めればそれは生きているとはいえない。答えだけを聞くレールの上を走る列車にはなりたくないな。オレはオレ自身の手で探す。もし、オレが道を見失ったときはヒントとしてくれよ。でも、答えだけは言うなよ。


そうアル・アジフは思っているから周には言わない。


「幸せだね。君は」


「そなたも見つけるとよい。そなたなら引く手数多じゃろ?」


「そういうわけじゃないよ。僕は(シュナイト)だから。探しているのさ。僕が自ら支えたいと思う、(ラファルト)の人を」


「過去にいた伴侶の様なものかの?」


アル・アジフの言葉にギルバートは頷いた。


「そうじゃな。そなたにそのようなものが見つかればいいが。そなたの望みは大きく、そして、深い。いつ見つかるかわからぬぞ」


「それでも君は僕にその考えを改めるように言わないのだろう?」


その言葉に満足した表情でアル・アジフは頷いた。


「我らを助けたものがようやく見つかったからの。我は周を助ける。それは我らの総意じゃ。そなたの言う伴侶の条件を見つけ出したからの」


「それはよかった。君が一番独り身だったからね」


その言葉にアル・アジフが魔術書を開く。でも、ギルバートは動じない。まるで、魔術を放つ隙を作ってくれと言わんばかりに。


アル・アジフは小さくため息をついた。


「そなたと話し合っても進まぬな。では、また会おう。今度はルーチェ・ディエバイト決勝じゃろうな。我は由姫の応援をするつもりじゃし」


「へえ、恋敵と応援するのかい?」


「そういうわけではない。我は由姫の成長を見てみたいのじゃ。周と由姫はお互いが気づいていない以上に根を絡ませておる。もう、対処しようのないくらいにの。じゃから、見てみたいのじゃ。由姫が周のいない場所でどこまで戦えるのかを」


今までほとんどが周のいた場所で戦っていた由姫だったからこそ、アル・アジフは見てみたい。本当の由姫の強さを。本当の意味での恋敵を。


「我は知りたいのじゃ。周を慕っている皆を。その中で勝ちたいからの」


「君らしいかもね。さて、僕も帰るとするよ。長居する気にはなれないからね」


「そうじゃな」


二人は歩き出す。そして、ギルバートは歩きながら振り返った。


(シュナイト)(ラファルト)か。僕はいつか、あいつを助けられるのかな?」


その言葉は本当に小声で近くにいるアル・アジフにすら聞こえることがなかった。


次から体育祭に向けて一気に書いていきます。そんなに時間はかからないかと。GW中には終わらしたいです。

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