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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第十九話 周と孝治

周は技で、孝治は力で挑みます。

「ここからのフロントはオレ達だ!」


オレはレヴァンティンを向けながら鬼に向かって宣言した。


「遅いぞ、周隊長」


「悪い。みんなに説明したら遅れた。悠聖、浩平、援護は頼むぞ」


オレと孝治が同時に地面を蹴る。鬼はすでに体勢を整えている。


オレはレヴァンティンを鞘に戻した。


高速の抜刀術だけがこのオレの剣技の真髄ではない。ただ、抜刀術はかなりう強力で、先ほど鬼を吹き飛ばしたのも抜刀術だ。


オレが使う抜刀術を含む剣技は、


「白百合流紫電一閃!」


白百合家にしか伝わらない唯一の剣術。


鬼はギリギリでレヴァンティンの切っ先を回避する。そのまま隙の多いオレに向かって手を伸ばす。


「逆閃」


そこに、まるで巻き戻したかのような動きでレヴァンティンが返った。鬼はどうすることもできずまともにレヴァンティンの一撃で腕を叩き落とされる。


オレはすぐさま鞘に戻したレヴァンティンを抜き放つ。


「連閃」


勢い良く切り上げたレヴァンティンを両手で柄を握り切り下ろす。


白百合流の神髄がこれだ。ただの抜刀術ではない。抜刀術の後の連撃こそが白百合流の神髄である。


鬼はどうすることもできず、勢いよく後ろに弾かれた。その体にはうっすらと切り傷がある。


鬼は完全にオレを睨みつけている。そう、一緒に飛びかかった孝治を忘れて。


黒い斬撃が鬼の右腕を切り落とした。


「もらった」


そのまま背後に現れた孝治が鬼の胴を薙ごうとする。だが、黒い剣は胴に当たった瞬間に弾かれた。


鬼が振り返りながら左腕を振るうが、そこに孝治の姿はない。


「あいつは硬いぞ。バッテリー三本全消費だ」


オレの背後で孝治が黒い剣についた単三電池の様なものを外しながら情報を伝えてくれる。オレはその情報を聞いてにやりと笑みを浮かべた。


「十分」


オレは地面を駆ける。


最悪、自分の隠している能力を出すことになるが、この敵を相手ならそれは大丈夫だ。いや、多分、隠し事をして勝てる相手じゃない。


鬼は自分の右腕を拾うとそのまま付け根に当てた。たったそれだけの動作で腕がくっつく。


オレはすかさずここに来るまでにストックしていた魔術をいくつか放った。


氷の槍と雷撃。


鬼は氷の槍を弾こうと腕を振るうが、氷の槍に雷撃が移った瞬間、氷の槍が爆発した。


かなりの高等なテクニックだが、水、又は氷の魔術に熱量を急激に与え水蒸気爆発を引き起こす技。


予期せぬ攻撃に鬼は大きく後ろに下がる。だが、水蒸気の間を抜けてオレの体が鬼の懐に飛び込んだ。鬼が対応できる状況じゃない。


そのまま叩き込むのは肘。勢いよく叩き込んだ肘は鬼の体をくの字に曲げるに十分な威力を誇った。もちろん、空中に浮かんでいる。


そのまま鬼の横に移動し、わき腹にもう一度肘を上から叩き込む。


鬼は地面にぶつかって大きく跳ねた。


そこに黒い斬撃が直撃する。


鬼の体を上半身と下半身に分けて吹き飛ばした。


「やはり硬いか」


孝治が単三電池の様なものを交換しながら小さくつぶやく。


オレはレヴァンティンを鞘に収めたまま腰を落とした。


「そんなに硬いのか? 殴った感想を言うなら人と変わらないけど?」


「剣に対して、いや、魔力が宿る者に対して硬いのだろう。だが、そんなに気を抜いていていいのか?」


「誰に物を言っている。そっちこそ大丈夫か?」


「愚問だ」


鬼がゆっくり体を起こす。近くに転がっている自分の下半身をくっつけてゆっくり立ち上がった。


そして、鬼の口が開き、


「右!」


「左!」


オレと孝治が同時に跳ぶ方向を口にしながら横に跳んだ。


それと同時にオレ達がいた場所を魔力の塊が通り過ぎる。巻き込まれたら大怪我では済まない。何故なら、向かった先にあった山の先が消滅したのだから。


「おいおい。いきなりラスボス級の攻撃か?」


「任務の相手はあいつだ。ラスボスと見なせばいい」


そんな中でもオレ達は軽口を叩き合っていた。


多分、ダウンバーストに指向性を持たせた攻撃。くらえば死ななくても気絶は確実にする。


「悠聖、浩平、援護の準備は出来たか?」


「我らの準備を含めて出来ておる」


何故かそこにアル・アジフもいるみたいだ。物置から出る時に都達を頼むと言ったのに。多分、連れて来たな。


「じゃ、各自頼んだ!」


「そこでその命令はないじゃろ!」


「了解!」


「悠聖、そなたも普通に返事をするのではない!」


まあ、これがオレ達のコンビネーションだし。


オレが地面を蹴ると同時に孝治が後ろに下がった。孝治の手には黒い剣ではなく弓が握られている。ちなみに、黒い剣は腰の鞘に収まっている。


オレ達三人が一緒にいる時によくするシフトだ。


オレ一人が前に出て、他の二人が後方からありったけの後方支援を行う。


オレはレヴァンティンを勢いよく鞘から走らせた。


鬼は口を開く。しかも、直線状にはオレがいる。


だけど、オレは笑っていた。レヴァンティンをしっかり握りしめる。


「レヴァンティン!」


『了解です!』


そして、鬼の口から魔力の塊が放たれて、消え去った。


オレに当たる寸前に消えたのだ。鬼はあまりのことに動きを止めて固まっている。


当り前だ。鬼からすれば絶対の威力だと思っていたのだろうが、それが何の前触れもなしに消え去ったのだ。固まるのも無理はない。だが。ここは戦場。その動きの停止が命取りになる。


オレは一気に近づくと肘をまず叩き込んでからレヴァンティンを大きく上に切り上げた。


鬼の体が浮き上がり、そこに大量の後方支援が迫りくる。


オレはすかさず横に跳びながらストックしていた残りの魔術を全て放った。


本当ならここで追撃に入りたかったが背筋を覆う寒気が全力でそれを否定してきた。


結果、七色の暴風とでも表現したらいいのだろうか、わけのわからない量の魔術が鬼に直撃していた。


あのまま追撃したら確実にあれを使わないと死んでいたと断言できるほどの魔術の量。


すさまじい爆発と共にオレの体が爆風に吹き飛ばされた。


土煙を避けるように後ろに下がりつつ、レヴァンティンを構えながら鬼の出方を待つ。


「これならさすがに無理だろ」


そこに黒い閃光が土煙の中に突き刺さった。孝治の弓での援護だ。


でも、どうしてだろう。いやな予感しかしない。鬼に対してではなく孝治に対して。


「全てを吹き飛ばす」


その言葉が聞こえた瞬間、オレは孝治の横に全力でダッシュしていた。


「ストップ! お前、その技を使うつもりか?」


「倒したかわからないからな」


「焦土にはするな」


孝治は弓と黒い剣が一緒に握られていた。本音を言うなら止めて欲しい。


「わかった」


「逃げられた」


孝治が納得すると同時にクロノス・ガイアが小さくつぶやいた。


クロノス・ガイアが作り出す地図には何も記されていない。


「とりあえず、窮地は脱したというべきか?」


腰が抜けたのか浩平がその場に座り込んでいる。それを見たクロノス・ガイアがクスッと笑みを浮かべた。


「だらしない」


「仕方ないだろ。あそこまで強い奴と会ったことないんだから」


「でも、凄い技術だった」


「ありがとさん。周、悪いけど、ちょっと休ませてくれないか?」


「まあ、いいさ」


約一名ほどいろいろ聞きたいことがあるという目でオレを見てきているし。


オレが休むことを許可すると、孝治や悠聖もその場に座り込んだ。クロノス・ガイアも座っている。立っているのはアル・アジフだけ。


「向こうに行こうか」


「そうじゃな。説明してほしい事柄がいくつかあるからの」


孝治の持つ剣の単三電池の様なものは中身が魔力の電池です。

剣自体にあるとある能力を使用するためには膨大な魔力を必要とするため、それをサポートするために使っています。

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