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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第百九十話 結界術師

オレは小さく溜息をついていた。溜息をつきたくなるくらい大変だったので溜息をついていた。


結論から言うなら悠人とルーイにしこたま怒られた。


まあ、ルーイは全力の悠人と戦いたかったから許してくれたけど。


GFFー03エクスカリバー。


一応、設計図を作って送ったものの、今のパイロット技能では操作出来ないと言われた。


まあ、作った本人が言うけど、悠人が乗ることを前提に作ったからな。乗られたらむしろ落ち込む。


「それにしても」


オレは小さく息を吐いた。そして、空を見上げる。


空は雲一つない青空が広がり、太陽の光がじりじりと周囲を焼いている。


『どうかしましたか?』


レヴァンティンが不思議そうに尋ねてくる。急に空を見上げているから不思議に思ったのだろう。


「いや、ふと思ってな。狭間の鬼のことだ。封印はしっかりしているから再度破られることはないだろうし、このまま夏休みの最後まで見る必要はあるけど多分大丈夫だろうとは思う。でも」


『でも?』


「あいつは一体何なんだ? まるで、正と不が一緒になっているような」


オレ達が来た理由がこの地の地域部隊が全滅したからだ。そして、市長が『GF』の介入を拒否し、『ES』を呼び寄せた。


でも、『ES』だけでは無理だと判断したアルが『GF』を呼んだ。だから、オレ達がいる。


『GF』からも『ES』からも狭間の鬼は敵だと判断出来る。判断出来るのだが、オレと殴り合った時と悠聖が殴り合った時とは話を聞く限り雰囲気が違うように思えた。


まるで、


『まるで多重人格のようですね』


レヴァンティンの言葉にオレは頷いた。


「ああ。狭間の鬼が世界を滅ぼした存在と聞いているけど、もしかしたら違うのかもしれない」


『どういうことですか?』


「推測なんだけど、世界を滅ぼす存在又は原因は別の場所にあるんじゃないかなって」


狭間の鬼は確かに強大だ。強大だが、あの程度の力では第一特務、特に慧海と戦えばあっという間に終わる可能性がある。


完全復活すれば世界を滅ぼすかもしれないとあいつの口から聞いたことはあるけど、そうなると、完全復活には様々な要因が必要だと考えていいだろう。


そうじゃなかったら都や琴美を殺していれば完全復活になったはずだ。


「犠牲を出して救われる世界。狭間の鬼によって滅びを見なくて済む可能性がある。力も聖剣も伝説も手に入れる力がない、か」


悠聖や浩平達から聞いた悠聖と鬼との会話で鬼が言ったこと。この部分だけを聞けば明らかに今までのイメージが違いすぎる。


『まるで、ヒントの少ないクイズですね。さすがの私でもわかりません』


「何かあればいいんだけどな」


明日に期待するしかない。明日になれば古文書を調べるから。


「ん? 誰かいる」


オレは森の中で誰かが動いているのがわかった。レヴァンティンを軽く叩いてそっちに向かう。


茂みを掻き分けてそこに向かうと、ペリエとアリエの二人がナイフを使った戦っている。


動きを見る限り準備運動だな。


ペリエのナイフ捌きは素早く、アリエがだんだん押されていく。というか、ナイフを使う奴って少ないんだよな。リーチが短いし壊れやすい。


使う場合は都みたいに片手銃と一緒に使うなどサブみたいな役割だ。まあ、都は今杖が基本だけど。


ペリエがアリエのナイフを弾き飛ばす。


「はぁ、アリエはちゃんとやってよ」


「やっているよぅ。でも、ペリエちゃんが強くて」


「私達結界術師はサポート要員なんだから、あいつに迷惑かけないように相手の攻撃を捌けるようにならないと」


どうりでナイフを使うわけだ。


ナイフは小回りが効く上に狭い地形でも使えるから守るという点ではかなりの及第点がある武器だ。


それ以外は悲しい性能だけど。


「頑張っているな」


オレは茂みから出て二人の前に歩いていく。ペリエは驚いて固まって、アリエは嬉しそうにオレに近づいてきた。


「周お兄ちゃん~!」


そして抱きついてくる。由姫に見られたらどうなっていたことやら。


「今日は訓練がない日だろ? ゆっくり休めよ」


「そういうわけにはいかないわよ。私達は第76移動隊の中でも下なんだからね。気を抜いていたらいつクビにされるかわからないじゃない」


ペリエとアリエの二人は第76移動隊に入った。正確には、第76移動隊がエレノアを観察処分することになったため、そのサポートのために魔界から貸し出されたが正しい。


エレノアも第76移動隊のメンバーに登録している。


「負けっぱなしは嫌なのよ。でも、みんな化け物みたいに強いし」


二人からすればエレノアクラスがごろごろいると言うべきか。ちなみに正規部隊の中でもここまで戦力が極端なのは第一特務を除けばここだけだ。


下手をすれば正規部隊によるチーム戦で優勝出来るような戦力。


「私達は結界術師。だから、それを伸ばそうと思って」


「一芸特化か。まあ、サポート要員は第76移動隊にほとんどいないしな」


オレと音姉を除けばサポートがない。音姉の場合はサポートと言うには生易しいか。


「うん。だから、ペリエちゃんと考えて、戦闘能力を上げるんじゃなくて、サポートを強くしようって決めたんだよ」


「私は足手まといは嫌だから。お姉様の苦しみをわかってあげられなかった。もっと力があれば、お姉様は」


「今のエレノアは幸せに見えるか?」


オレの質問にペリエはキョトンとし、そして、ゆっくり頷いた。


「憑き物が落ちたようだわ」


「だったら、今を大切にしろ。オレ達は第76移動隊だ。何か困ったことがあれば相談しろよ。後、サポートについてもな」


サポートに関してなら第76移動隊どころか同年代の中でトップの自信がある。


というか、フロントやバックの立ち位置は一芸特化が好まれるが、センターに関しては器用であればあるほどいいからだけど。


「そうなの?」


「信じていないな。だったら見せて」


『医者から言われた言葉を忘れましたか?』


レヴァンティンに諫められてオレはしょぼんとする。


夏休み入るくらいまで魔術は使用禁止だ。教えたくても教えてくれない。


すると、ペリエがクスッと笑った。


「わかったわ。夏休みになったら教えなさいよ。結界術師として第76移動隊のみんなを助けたいから」


その顔に浮かんでいた笑みは満面の笑みだった。


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