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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第百八十三話 戦いの終結

久しぶりの周視点です。

というか、一日に五話投稿はさすがに書くのが辛いですね。

オレは小さくため息をついて歩いていた。いや、その場をぐるぐる回っていたというべきか。心配事はただ一つ。悠聖や浩平達が無事かどうか。


あいつらは完全に連絡するのを忘れているだろうしな。もしかしたら、何かあったのかもしれない。『GF』駐在所の通信機器は妨害がほとんど効かないはずなのに。


まあ、レヴァンティンだと無理だけど。


オレはまた小さくため息をつく。連絡が入ればいいけど。


「落ちついてください」


その時、オレの頭が叩かれた。いつの間にか傍に由姫がいる。いつの間に移動したんだ?


「兄さんは動揺しすぎです。今は待っているだけしかできませんよ」


「わかっているけど、心配で心配で。悠聖と浩平なら大丈夫だと思うんだけどな」


『座る』


オレの目の前にスケッチブックが出される。オレはそれを見て小さくため息をつきながら近くのいすに座り込んだ。


今、オレ達がいるのは『ES』穏健派本拠地の地下シェルター。オレ達が相手の戦意を喪失させた後、過激派の援軍が遅れてやってきた。結城家の兵はすぐに武器を捨て、音界の兵はルーイとリマがまとめている。


いつの間にかリマの妹でもあるルナもいることに気付いたがオレ達は何も言わなかった。リマが苦笑しながらこっちに向かって頭を下げたからでもあるけど。というか、今までどこにいた?


アル・アジフは穏健派の生き残りをまとめてアリエル・ロワソと共に行動しており、オレ、由姫、亜紗、孝治、中村は著しく疲労の色が濃かったので休ませてもらっている。ちなみに、孝治と中村は仲睦まじく身を寄せ合って眠っている。


孝治のこんな姿は久しぶりだな。


ちなみに、悠人は右腕が折れていたらしく、疲労の色が一番濃かった鈴やソードウルフの急激な変形で体のいたるところを痛めたリリーナと一緒に医務室に運ばれていた。


音姉は第76移動隊代表として外に出ている。


『心配ないと思う。リースだっているし、周さんも信頼しているよね?』


「信頼はしているさ。でもな、相手が真柴昭三なんだぞ。どんなけ卑怯な手を使ってくるかわからないし。もしかしたら、バスターマグナムを使用するとかいうバカみたいなことをしでかす可能性だってあるし」


後に、本当にバスターマグナムが使用されており、周が数秒固まるのは後日の別の話。


「兄さんは心配性ですね。今は皆さんを信じましょう」


「わかっているけど」


わかってはいるけど心配になってしまう。悠聖や浩平は大丈夫でも、都が大丈夫かどうか。


オレが小さく溜息をついた瞬間、ドアが開いた。そこからアル・アジフとアリエル・ロワソ、そして、音姉がやって来る。


「アル、連絡はあったか?」


オレは思わず立ち上がってアルに詰め寄った。アルが呆れたように溜息をつく。実際に呆れているだろうな。


「落ち着くのじゃ。そして、我らが座るまで待て」


アルにそう言われてオレは渋々椅子に座る。その光景を見ていたアリエル・ロワソが楽しそうに笑った。


亜紗が刀を取り出す。


「いや、やはり、海道周も年相応だなと思ったのだよ。仲間を心配してあたふたする姿をね。海道時雨なら涼しい顔をしているだろうけど」


アリエル・ロワソがそう言うと亜紗は刀を戻した。渋々という感じだったが、オレを笑ったわけじゃないとわかったらしい。


多分、今でも理性と戦っているだろうな。


「全員座ったの。では、まずは狭間市のことじゃ」


アルがオレの顔を見て安心しろという風に笑みを浮かべる。


「『ES』は被害無し。『GF』は怪我人が二人、いや、精霊を含めて四人じゃな。その内三人は気絶。仲良く眠っているらしいぞ」


それを聞いてオレの体から完全に力が抜けた。安心し過ぎて何もする気になれない。


「アル・アジフさん。もう一人の怪我人は?」


よくよく考えてみるとそうだ。あまりに安心し過ぎて大事なものを忘れていた。


「大丈夫じゃ。槍で突かれた反動で転けて腰を強打しただけじゃからな」


「ちょっと待て」


オレは思わず声に出していた。一瞬、アル・アジフが何を言ったか理解するのが確実に遅れた。


槍で突かれた反動で転けて腰を強打って間抜けにしか見えない。おそらく七葉だろうけど。


「槍で突かれたダメージは? 戦闘服はそこまで硬くないぞ」


「いや、そこまでは来なかったの。一応、病院で精密検査するらしいの」


それなら安心だ。狭間市の病院は普通に設備がいい。七葉もゆっくり休めるだろう。


オレはもう一回安心したように息を吐いて本題を尋ねた。


「結城家は?」


「結城家は降参じゃ。当主が降参したことで兵も全員が武装解除に応じてくれた。今は過激派の面々が見ておる」


「大人しいものだよ。どうやら、あの巨大なフュリアスをみんなで倒したことで戦う理由が失ったらしいね」


アリエル・ロワソの言葉にオレは頷いた。おそらく、アリエル・ロワソの言う通りだろう。


あの巨大なフュリアスはいらないものだとしてオレ達は破壊した。敵味方関係なく一緒に。だから、戦意が無くなって当然だ。


「音界の者達はルーイがまとめておる。まあ、大丈夫じゃろ」


「つまり、戦いは終わった、というべきだな」


オレの言葉にアル・アジフとアリエル・ロワソの二人が頷いた。


結城家側の兵は武装解除に従い、音界の兵はルーイの下に結集しているから大丈夫だろう。


つまり、この地から戦う者はいなくなったというわけだ。そして、遠く離れた狭間市でも戦いが終わった。


「良かった。本当に良かった」


この戦いでたくさんの人が死んだ。でも、今は仲間がみんな生き残ったことに感謝しよう。そして、狭間の地に帰ることを考えよう。


「そうじゃな。アリエル・ロワソ、この場で話したいことがある」


「何かな?」


アル・アジフが息を吸う。そして、


「穏健派は中枢がやられ壊滅じゃ。機能も殆ど出来ぬ。だから、過激派に穏健派を吸収して欲しい。もちろん、我が過激派内部で残った穏健派の指揮をとる」


「ふむ。わかった。過激派や穏健派という名称は無くなることでいいかな。海道周。君はこのことを海道時雨に伝えてもらえるか?」


「別にいいけど」


オレはアルを見た。アルはオレにそばに居させて欲しいと言ったはずだ。それを叶えることも誓った。


オレの視線に気づいたからか、アル・アジフは笑った。今までのような笑みじゃない。まるで子供のような天真爛漫な笑みだ。


「我はやるべきことが残っておる。それが終わった時、そなたのそばに行く。今は大切な家族を守ることが先じゃ」


地位や居場所という意味だろう。


オレはそれに頷いた。アルも頷く。オレ達にはそれで十分だった。


「クロノス・ガイアに続いてアル・アジフも第76移動隊に引き抜かれるか。ふむ、さすがは女たらし」


「誰が女たらしだよ!」


オレは思わず叫んで反論した瞬間、地面が揺れた。そこそこ大きい揺れだ。震度は4ほどだろうか。


この地域は案外地震が多いからな。ユーラシア大陸とヨーロッパ大陸の境目にある断層があるし。


それにしても、長い。どうしてここまで長いのかわからないくらい長い。長いということは地震が大きいということだ。


「周」


後ろから声がかかる。こういう時はどうするか、正規部隊に入ったことのある奴ならわかっているからありがたい。


「第76移動隊は今から非常事態宣言。地震の被害を調べてくれ」


『GF』だからこそ、こういう時は迅速に動かないといけない。


オレは溜息をついて立ち上がった。


「ちょっくら、人助けにでも行きますか」


自然災害に対して戦争中でもメンバーを派遣する。それが『GF』です。

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