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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第百八十話 ソラ

狭間の鬼が動く。だが、その前を塞ぐように刹那が紫電をまとませて襲いかかる。


刹那の武器はナイフであり、最速の属性である雷属性の加速でヒット&アウェイを行う珍しい戦い方だった。


鬼は刹那に向かって腕を振るが、それより速く刹那が動き、鬼の体に傷を付ける。だが、その傷はほとんど見えない。


「硬いッスね」


鬼が刹那に肘を叩きつけようとするが、刹那は大きく後ろに下がった。その瞬間に灼熱の塊が狭間の鬼に直撃して吹き飛ばす。


『小癪な!』


鬼が立ち上がった。そして、立ち上がった鬼が見たのは大量の銃口。


鬼の周囲に展開していた銃が一斉にエネルギーを吐き出し、まるで、小石を雨あられのぶつけられたダメージが通る。


しかし、鬼は倒れない。


『我が力の前にひれ伏せ!』


「させないわよ!」


対暴徒鎮圧用魔術ダウンバーストを放とうとした鬼の体に氷がかすかに突き刺さる。しかし、鬼はそのままダウンバーストを放った。


だが、そのダウンバーストは広がらない。まるで、止められた空間内部で反響する音のごとく、自ら放ったダウンバーストの衝撃が鬼の体を揺さぶる。


『貴様ら!』


戦場は完全に悠聖達の有利だった。鬼は必死に動こうとするが、刹那か都の作るフォトンランサーによって押し戻される。


強引に動こうとすればベリエとアリエによって障壁(障壁魔術とは違う物理属性によるただの壁)が作り出され、浩平の射撃によって撃ち落とされる。


その全てを指揮しているのは悠聖だった。


そもそも、精霊召喚師はシンクロしていない時は精霊に指示を出して戦う。だから、他人を指揮するのは悠聖は得意だった。


「都さん、お願いします。浩平は都さんの援護。エレノアは収束準備。ベリエとアリエは障壁展開。都さんは下がって、浩平、前に。刹那は浩平の援護を受けつつ道を塞いで。ベリエとアリエは刹那の背後に障壁。エレノアは障壁を破壊しないように砲撃。冬華はダウンバーストだけを処理することを警戒して」


いくつもの指示を流れるように指示していく。それは一朝一夕で見につくようなものじゃない。


自ら大量の精霊を率いているからこそ、悠聖は他人を動かすということに慣れていた。


だけど、このままではじり貧であることも理解している。そもそも、この数だけで狭間の鬼をその場から動かせないで攻めまくることはできても、倒すまでは至っていない。それに、疲労がたまってきている。特に都は。


初めての実戦で魔力消費が桁違いのフォトンランサーを何個も展開しながら何百という数を放ち続けているのだから。おそらく、周ですら魔力が枯渇して動けなくなるだろう。


都が崩れれば他も一気に崩れると気づいている。だから、悠聖は小さく頷いた。


「浩平、10秒間だけ一人で止めてくれるか? 都さんとエレノアは最大出力での攻撃の準備。冬華は都を、刹那はエレノアを守れ。ベリエとアリエは障壁をいくつも展開して道を塞げ!」


全員が悠聖の言葉に従って動き出す。悠聖も次の手が成功しない限り確実に勝ちはないと思っていた。浩平も同じ様に思っている。思っているからこそ、浩平はフレヴァングを構える。


「最大出力。本気の本気行くぜ」


浩平の周囲に浮かびあがる大量の銃口。その全てが狭間の鬼を狙っている。


「くらえ!」


銃口の全てが火を噴いた。エネルギーの嵐が狭間の鬼の体に直撃する。いくら狭間の夜という狭間の鬼にとって最高のフィールドにしていたとしても、この攻撃を受け止めることは不可能だった。


一瞬にして展開した防御魔術を砕かれ体が弄ばれる。


「都さん、エレノア、全力砲撃を」


その言葉と同時に悠聖が魔術陣を展開する。魔術陣の形から支援型の魔術。ただし、効果を及ぼす相手はこの中にいる誰でもない。


「フォトンバスター!」


「プロミネンスレーザー!」


二人の放つ砲撃が狭間の鬼に直撃した。だが、狭間の鬼の体を貫通はしない。でも、これでいくらか装甲は削った自信が悠聖にあった。


そして、降り注ぐエネルギーの柱。


竜言語魔法の中で中規模殲滅竜言語魔法『ジェネシス』。冗談抜きの光の暴風に狭間の鬼は完全に呑みこまれた。


勝った。


その場にいる誰もがそう思った瞬間、エネルギーの柱が消え去った。


何が起きたかわからない。でも、完全に消えたのは確かだった。


狭間の鬼が一直線に動く。一直線に悠聖に向かって。障壁を飛び越え、刹那の攻撃を気にすることなく突き進み、狭間の鬼は悠聖の目の前まで来ていた。


「悠聖!」


冬華が叫びながら駆ける。でも、確実に間に合わない。


狭間の鬼が腕を振り上げ、振り下ろした。悠聖の展開した防御魔術を刹那で砕き、悠聖の体に腕が迫る。


浩平の射撃も、冬華の攻撃も間に合わない。悠聖は死ぬことを覚悟した。


「させない!」


だが、その間に入ってきた何かが狭間の鬼の腕を吹き飛ばした。そして、巨大な剣が狭間の鬼を殴り飛ばす。


悠聖の目の前に立つ一人の少女。背中から光の翼を出し、手に持つ薙刀を構えている。その姿を見た全員が目を見開いていた。


「ゆ、づき?」


全員を代表して悠聖が尋ねる。少女は振り返り、そして、頷いた。


「うん。優月だよ。これが、精霊としての私の姿。精霊王の娘ソラとしての姿」


精霊王ということは精霊の中でも一番偉い人物。過去何百年の間に精霊王の家系を契約できたのはたった一人しかいないらしく、精霊王の血族がどのような人物かすら知られていなかった。


悠聖はその話を知っているから信じられないような表情で優月を見ている。そして、背中の翼に手を伸ばした。


悠聖の手に触れる感触。柔らかく滑らかで温かい。


「悠聖! ちょっとばかしこっちも見てくれ!」


その言葉に悠聖が我に返った。狭間の鬼をめぐる戦いはだいぶ変わっている。


フロントにいるのは刹那とルカ。センターにライガ、エルフィン、浩平が位置し、バックはエレノア、ベリエとアリエにグラウ・ラゴスがついている。


ちなみに、都さんとイグニスはレクサスの治療を受けていた。


浩平がすかさずフレヴァングを三連射する。それは、ルカのわきの下を通り、狭間の鬼の額に突き刺さった。


体勢を崩した鬼に刹那の紫電を纏う斬撃が襲いかかった。それと同時に飛来する射撃。多分、このまま鬼に主導権が移ることはない。


悠聖はそれらを見ながら小さく頷く。


「アルネウラ、いるか?」


『うん。私は常に悠聖のそばにいるよ』


アルネウラはいる。優月もいる。信じている大切な二人の精霊がここにいる。


「ダブルシンクロ、いけるか?」


『悠聖? 私を誰だと思っているのかな?』


悠聖の耳に聞こえる頼もしい声。アルネウラだからこそこういうことが言える。シンクロのために生まれた存在は、シンクロの中でも最も特別な存在。


優月は頷いている。でも、怖いのかその手は震えていた。悠聖は優しくその手を握り締めてあげる。


「優月。いきなりのシンクロでダブルシンクロはないと思うけど、狭間の鬼を倒すために必要なんだ」


ルカの剣が鬼によって弾かれ鬼の腕がルカに迫るが、それより早く大地の壁が間を塞いだ。鬼はすかさず後ろに下がり、灼熱のエネルギーによって体を焼かれ、足元を足ごと凍りつかされる。それを砕こうと動くが、まるで鋼のごとく壊れない。


そこに刹那のナイフが突き刺さり、ライガの紫電と共に流れ込んでいる。


「うん。少し、怖いけど。私は頑張るよ。アルネウラも手を繋いで」


優月の言葉にアルネウラが手を繋ぐ。そして、残った手で悠聖の手を掴んだ。


「「『ダブルシンクロ』」」


三人の声が重なる。それは、信じ合う三人によって出来る新たなシンクロ。アルティメットシンクロを超える力を持つ悠聖の中でも最後の切り札。


二人の精霊と同時にシンクロをするというシンクロの概念をほとんどぶち壊したようなもので、その力は二つの力を同時に使用できる。一体ずつシンクロする複数シンクロのデュアルシンクロとは桁違いの能力を持つと悠聖は信じている。


悠聖の体に二人が入る。それと同時に悠聖の背中から光の翼が現れた。そして、その手に握られているのは薙刀。周囲に浮かぶ四つの氷を纏うチャクラム。


「さあ、行くぞ。二人共。戦いをここで終わらせる!」


シンクロの種類は三つあります。

一つは平凡なただのシンクロ。

一つはデュアルシンクロと呼ばれる精霊とシンクロした後にさらにシンクロする方法。ただし、この時は精霊の力を一方しか使えない。悠聖は絶対に使用しないシンクロ。

最後がダブルシンクロ。悠聖とアルネウラ+他の属性の精霊とで出来るシンクロ。もちろん、悠聖にしか使用できない。

デュアルシンクロが急に出てきたのは悠聖が使うつもりが全くないから考えることすらしていないからです。

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