第百七十八話 狭間の夜、再び
短くなりました。
浩平の指が特殊鉄鋼弾にかかりベルトから特殊鉄鋼弾が弾かれる。そして、フレヴァングを目の前にいる真柴昭三に向けた。
「終わりだ。もう、お前を守る兵はいない」
真柴昭三が周囲を見渡すが、そこにいるのは都と冬華の姿。それ以外に誰かの姿は見当たらない。
「傭兵共め。私の崇高なる理想を見捨てるというのか!?」
「崇高? あなた馬鹿じゃないの?」
冬華が真っ正面から反論する。
「世界が滅亡しようがなんだろうが、崇高な理想と言う甘い言葉でみんなをたぶらかしているだけでしょ? 世界はそんなにも甘くない!」
「甘い言葉ではない! 最強の精霊。そして、狭間の力があれば世界を滅亡から救える」
「たった二人の力で世界が救えるなら、周様が必ず救います」
世界はたった二人の力で変わるものじゃない。過去にいた英雄だった少年と英雄になった少女は二人の力ではなく、たくさんの人の力を借りていた。
だから、二人で変えられるほど甘いものじゃない。
「世界を救うのは一人ではありません。確かに、英雄が世界を救います。でも、英雄一人が世界を救ったわけではなく、英雄達の仲間と一緒に世界を救ったのです」
「私の計算が確かなら、世界は救える。これは事実だ。私は事実を」
「例え事実でも、そんな不確かなものには賛同できねえよ。それに、お前は自分が苦しまずに他人が苦しむのを見ているだけだ。そんな奴に世界を救うなんて言葉を吐く資格はねえ!」
自分が経験、体験したからこそ、その時にようやく口を出すことが出来る。そして、世界を救うことを叫べるのは、必死で戦っていた奴だけだ。
別に戦闘で戦っているというわけじゃない。宿命や運命など不確かなものから地位や立場など戦闘とは関係のないものまで、必死に戦っているからこそ言える。
「世界を救うのは声高に叫ぶ奴らじゃない。世界を救うために動いた奴らだ。時雨総長だって善知鳥特務隊長だって、世界を救うために戦っていた。お前は戦っているのかよ? 世界を救うということは今の世界の流れに逆らうってことだ。だったら、お前は何かに逆らっていたのかよ?」
「ふ、ふざけるな!」
真柴昭三が浩平に飛びかかる。浩平は冷静にフレヴァングを引き金を引いた。
特殊鉄鋼弾が真柴昭三に直撃して昏倒させる。
浩平は小さく息を吐いた。
「ミッションコンプリートってな」
そう言って拘束竜言語魔法を発動させる。こういうのもあるから竜言語魔法は便利だ。
フレヴァングを戻した浩平に都と冬華が近づいてくる。
「終わったわね。まあ、残存勢力に気をつけないといけないけど」
「それなら大丈夫だろ。真柴昭三が倒れたんだ。敵に戦う意志はねえだろ?」
「気を抜かない方がいいと思いますよ」
この時ばかり、三人は完全に安心していた。もちろん、周囲への警戒は全く緩めていない。
でも、今回の元凶でもある真柴昭三捕まえたのだから戦いは一区切りだと完全に考えていた。
そう、この瞬間までは。
世界に闇が覆う。太陽が差していたはずなのに世界は一瞬にして暗闇に染まっていた。
いや、暗闇の中に存在する光の塊。月だ。満月の月が彼らを照らしている。
それは1ヶ月近く前の光景と酷似していた。
「狭間の、儀式」
都の口から漏れた言葉に汗を一筋流している冬華が首を横に振った。
「儀式ではないわ。狭間の夜。狭間の鬼のホームグラウンドよ」
次の話は悠聖&リースVS狭間の鬼です。懐かしいキャラも登場する予定。