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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第百七十七話 ユニゾンの脅威

オレ達は現実世界に帰還した。もちろん、優月の手をしっかり握ったまま。ユニゾンを強制解除できたということは、優月と契約を結べたと言うことだ。


クラスメートAが膝を折ってそのまま地面につく。


「何をした」


クラスメートAが青ざめた顔でオレに尋ねてくる。オレは優月の手を取って距離を取りながらクラスメートAを見る。


まるで何かに脅えているかのようにその体は震えていた。ここまで行くとどこか異常だ。


「何をしたんだ!」


「優月が選んだ。お前の精霊ではなく、オレの精霊として正式に契約を結んだんだよ」


「なっ」


クラスメートAが絶句する。まあ、契約の上書きなんてほとんど不可能に近い状況だからな。


やり方はいくつかあるが、最低条件として、お互いに相手のことを深く思っていなければならない。そして、何らかの接触が必要。手を握ると言うレベルではなく、キスをするという風な接触だ。


それをしなければ契約の上書きが不可能だ。


「俺の、俺の精霊を、返せ!」


「相手のことを深く考えない奴は最低だぜ」


オレはそう言ってクラスメートAに背中を向けた。アルネウラが笑顔で向かってくる。


「悠聖」


そして、アルネウラはオレに跳びかかり、全力で頬を殴られた。


オレはそのまま地面に打ち付けられる。


『優月になんてことをするんだよ。優月、大丈夫?』


顔を上げると、そこには優月をしっかり抱きしめるアルネウラの姿があった。まあ、契約を上書きしたということはキスしたということだからこいつには普通にわかるよな。うん、確実にわかるはずだ。


まあ、軽い嫉妬だろうと思うけど。


「大丈夫、だけど。悠聖は?」


「心配してくれるのか。アルネウラと違って優月は優しいな」


オレは立ち上がって優月の頭をなでる。優月は満面の笑みでえへへっと笑っていた。その光景を見ているアルネウラの顔がどんどん不機嫌になっていくが、気にしない、気にしない。


本当に気にしない。気にしたら確実に死ぬ。


『悠聖? 今ここで死ぬ?』


「嫉妬か? アルネウラも可愛いな」


オレがそう言ってアルネウラの頭を撫でようとした瞬間、何か嫌な気配が背中を襲った。


オレは二人を後ろにやりながら振り返る。そこには、複数枚の精霊召喚符を握るクラスメートAの姿があった。


「絶対殺す。殺してやる。白川悠聖! お前だけは、殺してやる!」


クラスメートAが精霊召喚符を発動させる。オレは隔離結界を破壊して後ろに下がった。


周囲を素早く見渡せば、精霊達が固まっている。その中央にいるのは倒れた七葉。


「っく。アルネウラ、七葉の様子を優月と一緒に」


『わかった』


アルネウラが優月の手を取って走り出す。オレはクラスメートAを注視した。精霊の同時召喚。それは、下手をすれば最悪の結末が起きる。


いくつもの召喚陣が重なり合い、一つの大きな召喚陣が出来上がった瞬間、オレは周囲に叫んでいた。


「下がれ! 死にたくない奴は下がれ!」


その言葉に真っ先に反応したのがオレの精霊達だった。


アルネウラが優月を抱え、オレを含めて距離を取る。それをリースが追いかけてきて敵も動き出す。


「悠聖、何が?」


何が起きるかわからないリースがオレの横を飛びながら尋ねてきた。オレは一回だけ振り返る。


クラスメートAを黒い触手のようなものがまとわりついていた。いや、何本かは突き刺さっている。しかし、その顔に浮かんでいるのは悦楽の表情。


「邪神の降臨だよ。精霊召喚陣は数十組み合わせることで邪神を召喚する。術者の命と一緒にな。精霊召喚符は通常召喚と違うから危惧していたが」


案の定起きてしまった。はっきり言うなら最悪に近い状況から最悪な状況に踏み込んだ。


今いる数で対抗出来る可能性は不明。


「どうして知っているの?」


リースの疑問は最もだろう。オレは小さく頷いてディアボルガを指差した。


「教えてくれた」


このことは出来るだけ誰にも教えないようにとも言われている。そもそも、精霊召喚を複数することは術者への危険が高い。精霊が一斉に牙を向けば死ぬからだ。実際に精霊が牙を向くことがある。


だから、普通は一対一で行うのが普通だ。


しかし、邪神の召喚方法が複数の召喚を組み合わせるということは一部にしか知られていない。


どうして一部なのかというと、過去に復活した神が同じやり方で復活しているからだ。どこかで漏れたと考えるのが妥当だ。


しかも、召喚される邪神は基本的にその土地に何らかの関係があるものが多い。だから、復活させたい邪神の場所で行えばいい。


「全員、準備しておけよ。今回の敵は今までとは違う。嫌な予感が確かなら」


オレは身構えた。今ここに、あの時最前線で戦っていた奴らは一人もいない。


「狭間の鬼がやって来る」


そして、周囲が闇に包まれる。次の瞬間には空から明るい光が降り注いでいた。


空を見上げると、そこにあるのは満月。強制的に周囲を夜にする力。通称、狭間の夜。


『久しいな。だが、まだ完全ではないか』


クラスメートAがいた場所には狭間の鬼がいた。周達が全力を出してようやく互角になったという怪物。


背中に冷や汗が流れるのがわかった。


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