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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第百七十五話 精霊の力

優先順位については位が高いほど優先されます。ちなみに、同順位内でもかなりの差はあります。

オレの体が勢いよく吹き飛ばされる。だが、オレはすぐさま体勢を戻して地面に着地した。


「最強という割には弱いな!」


クラスメートAの持つ薙刀がオレねいた地面を砕いていた。オレはその前にさらに後ろに下がっている。


はっきり言って相性が最悪だ。


隔離結界は場所が極めて小さい。だけど、それだけだったら幾らでも戦い方があっただろう。


だが、一番の問題が優月の精霊としての力。こちらが放つものを全て無効化している。


術者殺しマナシンクよりも凶悪な魔術殺しマジックキャンセラー


はっきり言うならゼロ距離から発動する魔術以外効かない。ゼロ距離まで効かないなら魔術殺しマジックキャンセラー自体が発動しない。


ちょっとした空間があるからこそ、魔力を使用する魔術が使用出来る。


『悠聖、大丈夫?』


大丈夫だ。


オレはアルネウラに言葉を返す。でも、状況が悪いのは事実だ。


クラスメートAはまだ傷が無いがオレはすでに何ヶ所も怪我をしている。特に、左肩に出来た切り傷。これだけはかなり深い。


「泥棒にはお似合いの状況だな。もうボロボロだろ? 楽になれよ」


「まるで三下みたいな言葉だな。いや、お前は三下だな。圧倒的な力の差がないのにそんな台詞を吐く奴がいると思うか? 三下以外に」


オレの記憶の中ではいない。いないからこそ、こうやって挑発する。


「どうやらお前の目は節穴みたいだな。この俺の力がわかっていないようだな。このあらゆる魔術が効かないものを使えば、オレは最強だ。最強の精霊召喚師だ」


オレは呆れたように溜息をついた。こいつも根本的なことから間違っている。というか、完全に三下だ。


まさか、こんな奴と本当に出会うとは。


「俺は最強だ。この最強の力でお前を倒す」


「はあっ」


オレはまた溜息をついた。こいつは色々な意味でバカだ。


「あのな、精霊の力が優月だけなわけないだろ。精霊の力はシンクロした全員が使えるんだよ」


「どんな力にせよ、俺の力には適わない。何故なら、魔術が効かないのだからな」


まあ、確かに魔術殺しマジックキャンセラーは強い。無茶苦茶強い。はっきり言うなら精霊召喚師の天敵と言ってもいいだろう。


というか、精霊自体が魔力に近いから、下手すれば消される。


だけど、魔術殺しマジックキャンセラーにはとある弱点がある。ゼロ距離攻撃が効くのもあるが、もう一つある。


優月の精霊としての力は魔術殺しマジックキャンセラー。それに対抗出来るのは同じ精霊の力。


オレはチャクラムを投げつけた。


魔力によって操作するチャクラムは魔術殺しマジックキャンセラーによって落ちる。


それを知っているクラスメートAは憐れみの視線をオレに向けて、チャクラムが左腕を微かに斬り裂いた。


「がっ」


クラスメートAが斬られた左腕を押さえてうずくまる。オレは戻ってきたチャクラムを掴み取る。


「お前! 何をした!」


クラスメートAが泣きながらオレに向かって喚き叫ぶ。多分、斬られることなんて全くなかったんだろうな。


流動停止フリーズ


名前は短いが、能力という点では究極に近い防御力と強力な攻撃が出来る。


能力は簡単に言って動きの変化を操作する。


精霊の力でなくても可能だが、アルネウラの精霊としての力はそれを超える。


「バカな。魔術殺しマジックキャンセラーが何故効かない!」


「そこに驚かなかったらオレが驚いていたよ。魔術には優先順位が存在する」


オレがそう言うとクラスメートAは言った意味がわからなかったのかポカンとしていた。


まあ、優先順位なんてほとんど使わないから仕方ない。うん、仕方ない。



魔術殺しマジックキャンセラーは第一級能力。つまり、優先順位が極めて高い奴だ」


それは魔術殺しマジックキャンセラーに驚いてちまちま出だししていて計ったものだ。だから、確実に合っている。


まあ、優先順位を探すのは精霊召喚師としては必須だからな。特に、精霊が特殊能力系の力を持っている時は。


優先順位を守らなければ発動したところで他の魔術が優先されて効果自体が発動しない。つまり、無駄撃ちとなる。


だから、精霊召喚師は普通にこういうことをする。まあ、優先順位関係なく魔力任せに発動するなら話は変わってくるけど。


「対するアルネウラの力が特一級。まあ、魔術殺しマジックキャンセラーとよく似た技だ。そっちが魔力を消し去るなら、こっちは魔力を止める」


魔力そのものの動きが止まれば魔術は形を保つことが出来ず消え去っていく。


魔術殺しマジックキャンセラーとは相性が最悪に悪いけど。


「そ、それで勝ったつもりか。俺はまだ負けていない。俺に勝ちたかったら殺すんだな。さもなくば、お前は負ける」


「そうか? まあ、お前はオレが優月を心配して攻撃に消極的となる希望的観測をするなら話は変わってくるよな。だけど、オレは優月を助ける。お前みたいな三下はお呼びじゃないっての」


クラスメートAが地面を蹴った。荒々しく怒りに満ちた突撃。オレはそれを待っていた。


「シンクロ解除!」


ここからは間違い一つで負ける。だけど、絶対成功するという奇妙な感覚はあった。


「儚き風を運ぶ者。奏でよ、聡明たる歌声を。エルフィン!」


魔術殺しマジックキャンセラーの範囲に入るより早くエルフィンを呼び出す。そして、すかさず叫んだ。


「シンクロ!」


事前の打ち合わせ通りにシンクロを行う。そして、オレも地面を蹴った。対するクラスメートAは薙刀を振り上げている。


迫る振り下ろされた薙刀をギリギリで回避し、オレはクラスメートAの懐に飛び込んだ。


魔術殺しマジックキャンセラーの範囲外である内側に。


「お前の心の音を聞かせろ!」


それはエルフィンだからこそ出来る能力。吟遊詩人になりたいらしい(さっき聞いた)エルフィンが語った能力。


エルフィンの精霊としての力は精神感応クリアマインドと言った。


周の持つ精神感応とエルフィンの精神感応クリアマインドは違います。精神感応クリアマインドは相手の心の中に入って会話するだけの能力です。ちなみに、優先順位は最低クラスです。

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