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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第百七十四話 知らない未来

冬華が一歩踏み出しながら握りしめた刀を鞘から振り抜いた。


飛んできた魔術を正確に斬り裂いて消滅させる。そのままさらに踏み出しながら振り抜いた刀を戻して術者を斬り裂いた。斬り裂いたとは言っても、『GF』ので戦闘デバイスを使っているため気絶させただけだが。


「数、多いわね」


斬り込んできた相手の剣を弾きながら素早く回転して刀の柄で相手のこめかみを打ち抜く。


「しゃあねえだろ。ここは敵のど真ん中だ。手の内全てさらけ出しても十分なくらいにな!」


浩平がフレヴァングを右手で撃ちながら左手から魔力で編まれた剣を振る。それに近づいてきていた相手の剣詩が後ろに下がった。その瞬間に浩平はフレヴァングを両手で構えて引き金を引く。


フレヴァングは正確に額を撃っていた。


「大体」


そして、すかさず竜言語魔法を発動させる浩平。光弾が敵を撃ち抜いていく。


「戦闘の要のはずの悠聖が他の場所で戦闘してんだ。今は、俺達が全員と相手するしかないっしょ。にしても」


浩平は素早くベルトから特殊鉄鋼弾を一つ抜き放った。そして、流れる動作でフレヴァングの銃身に詰め、相手に向かって放つ。


だが、それも相手は予想していたのか幾重もの防御魔術を展開した。しかし、特殊鉄鋼弾にそれは通じない。防御魔術を貫通し、相手にぶつかった瞬間、特殊な魔力粒子を撒き散らして周囲一帯の敵を昏倒させる。


「どこからこんな数がいるんだか」


「多分、周囲に散っていた人達が戻っていると思う」


その屍を越えて駆けてきた斧使いにリースは容赦なく光弾を叩きつけた。そして、すかさず竜言語の魔術書を全て取り出し、その中の一冊を手にとってページを開く。


膨大な量の水流が攻め込んできた敵兵をさらって流していく。だが、それにも負けず突進してきた相手に水流から形取られたドラゴンが襲いかかった。


一瞬にしてさらわれていく。


「でも、この数は問題じゃない」


リースは飛んできた魔術の群れに防御魔法を展開する。魔術は防御魔法の前に一瞬で散って行った。竜言語魔法の防御魔法は防御魔術とは違って桁違いの防御力を持つ。障壁魔術以上に。


「問題は、真柴昭三を逃げさせないようにすることのはずよ」


冬華が飛んできた八つの炎弾に手を向ける。すると、炎弾は動きを止め、そして、飛んできた方向に向かって飛ぶ。


その先にいる術者に炎弾が直撃して吹き飛んだ。


「だな」


浩平が真柴昭三の位置を見るとほとんど動いていない。この状況では逃げた方がいいのだが、最強の精霊と呼ぶ優月と都がここにいる以上、全てが奪われたなら全ての苦労が水の泡と化すと思っているのだろう。


だから、動けない。


だから、真柴昭三が見限るより早く拘束しないといけない。かなり命がけになるかもしれないが。


「一つ、質問していいかな?」


七葉が槍を頸線に解き、それを使って魔術や攻撃を弾きつつ、そして、相手の行動を阻害させながら口を開いた。


「どうして会話しながら戦闘出来るのかな?」


頸線の網をくぐり抜けた魔力の矢が七葉の頬にかすり、一筋の血が流れる。


確かに、浩平や冬華は普通に話しながら戦闘していた。しかも、戦闘能力はほとんど落ちていない。


都は黙々と戦っているのに。


フォトンランサーを展開しながら時折、瞬間移動ショートジャンプを繰り返しつつ敵を上手く攪乱かくらんさせている。


どれだけ練習したかわからなかいが、飛んでくる攻撃にもフォトンランサーで相殺していた。


「そういや、いつの間にか体力がついているよな」


フレヴァングを上に放り投げ、浩平が二丁拳銃を取り出して周囲に乱射する。だが、そのほとんどは防御魔術に受け止められた。


だが、その防御魔術に光の塊が直撃して吹き飛ばす。


リースは小さく溜息をついた。


「私も思う。多分、訓練」


「あれね。あれはあれでないと思ったわ」


冬華も第76移動隊の訓練にはしたことがある。はっきり言って、訓練という名前では確実におかしい。


言うなら強化合宿。


七葉は一番実力が低いから基礎の部分しかしていないため、その辛さは体験したことがない。


「あれに慣れれば並みの戦場じゃ息は切れなくなるわね。ところで」


冬華は大量に放たれた魔力の矢を空中で静止させ、上空に向かって無理やり方向を変える。


「悠聖の精霊はすごいわね」


まるで他人事のような言葉。だが、それはこの人数が完全に囲まれている状況で生きている理由を示す言葉でもあった。


悠聖の精霊達は少し離れた所で戦っている。


フロントはセイバー・ルカとグラウ・ラゴスにイグニス。センターにレクサス。バックにはディアボルガとライガ。


六体の精霊が上手く駆け回り、戦場の一角を完全に支配している。指揮官であるレクサスによって。


多分、精霊達がいなければさらに危険なことになっていただろう。


「フェンリル! あなたも暴れなさい!」


冬華の言葉と共にフェンリルが現れる。召喚した気配はない。だが、フェンリルは瞬間で現れていた。


周囲の敵が動揺する。だが、その動揺の間にフェンリルは飛びかかっていた。


「さすがに頼もしいぜ。最上級精霊が三体もいればな」


浩平は笑みを浮かべてフレヴァングの引き金を引く。


完全に囲んでいるはずなのに浩平達のモチベーションが上がっていっていることに気づいた真柴昭三が怒りに顔を歪めている。


それを見た浩平はニヤリと笑みを浮かべた。


「自分の思い通りに行かないことがそんなにも悔しいか?」


「貴様!」


真柴昭三が杖を取り出す。だが、その瞬間を浩平は狙っていた。


特殊鉄鋼弾をベルトから指で弾き、芸術的な軌道でフレヴァングの中に収め引き金を引く。


真柴昭三の近くにいた男達が準備していたように障壁魔術を展開するが、特殊鉄鋼弾はそれすらも貫通し、真柴昭三の杖に突き刺さった。


基本的に、魔力を込めたものにさらなる魔力を入れると二つの反応が起きる。一つは攻撃強化。そして、もう一つが爆発。


真柴昭三の杖が小さな爆発を起こした。特殊鉄鋼弾によって膨大な魔力が叩き込まれたからだ。


「なっ」


真柴昭三がすかさず杖を取り落とす。


「へっ、次はお前の体に風穴開けてやるよ」


「貴様、言わせておけば!」


真柴昭三は気づいていない。自分の話し方が変わっていることに。それは、真柴昭三側の兵が動揺する原因ともなる。


その瞬間に冬華は刀を地面に突き刺した。


「オリジン・クラスター!」


戦場の至る所から氷柱が生まれていく。それに気づいた敵が冬華の魔術を止めようと動き出す。


しかし、それをフェンリルの吐き出されたアイスブレスが動きを止める。下手に当たっても一撃で死ぬレベルの威力だからだ。


だが、その一瞬があればいい。


氷柱が砕けた。そして、周囲にいる敵に破片が直撃する。


氷属性最強の魔術と言われるオリジンがある。それの劣化拡散型がオリジン・クラスターだ。


一瞬の動揺をついた攻撃に真柴昭三側が大きく動揺した。


冬華が刀を引き抜く。このまま攻撃すれば勝てそうだから。今の冬華の攻撃で敵の大半が倒れてもいる。


しかし、冬華は前に進むことが出来なかった。七葉に突き飛ばされたのだ。驚く冬華の視界に瞬間移動ショートジャンプによって距離をつめてきた槍使いが入ってきた。そして、一直線に槍を突く。


冬華のいた場所に。そして、七葉がいる場所に。


槍は七葉の左胸を捉えていた。


七葉の体が吹き飛ばされて、腰から地面に叩きつけられる。


「かはっ」


「七葉!」


冬華は素早く地面を踏みしめて刀を槍使いに叩きつける。もちろん、力任せに。


突かれた場所は左胸。瞬間移動ショートジャンプによる加速も使った突き。そして、防御魔術すら発動していない。


冬華は七葉に駆け寄った。


「七葉ッ!」


「大丈夫、だよ。あくっ」


駆け寄った冬華に七葉は気丈に笑みを浮かべるがすぐに痛みで顔を歪めた。


すぐに治療しようと胸を見るが、左胸から血は全く流れていない。


「七葉、どこが痛いの?」


思わずそう尋ねていた。


「腰、だよ。あれ?」


七葉自身もおかしいことに気づいたらしい。左胸を突かれたはずなのに七葉が痛がっているのは腰だった。


「こんな未来、知らないよ」


七葉の声はとても小さく、少し混乱している冬華の耳には聞こえていなかった。


「ちっ」


そんな中、浩平が舌打ちをする。何故なら、真柴昭三が動き出したからだ。まるで、逃げるように。


冬華が立ち上がる。いや、立ち上げられる。立ち上げたのはリース。


「行って」


たった一言だが、リースがこう言った意味を冬華、そして、浩平は気づいていた。


浩平が頷く。


「冬華、都さん。真柴昭三を追おう」


「ええっ」


冬華が刀を握りしめる。その二人を見ながら都は周囲を見渡した。


「ですが、どうやって突破します?」


確かに、浩平達は完全に囲まれている。ここを突破しなければ真柴昭三に追いつけない。


浩平の指が特殊鉄鋼弾にかかった瞬間、浩平達を包囲していた敵にイグニスが飛びかかった。


『行けっ! ここは我らが食い止める』


『肯定』


ライガの雷が真柴昭三との道を塞ぐ敵を薙ぎ払った。それにより道が出来上がる。


「助かる」


浩平は走り出した。手に取った特殊鉄鋼弾をポケットに戻して真柴昭三を追いかけて走り出す。


その後ろを追いかけてくる冬華と都。


「絶対逃がさねえ。真柴昭三」


浩平がフレヴァングを握りしめた。


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