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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第百七十話 白川悠聖 前編

長くなる予定なので三つに分けます。

「貴様ーーーッ!!」


オレの声が周囲に響き渡る。そして、オレは地面を蹴った。狙う相手は優月とユニゾンをした男。


こいつだけは、こいつだけは!


「力の差を思い知れ」


男はニヤリと笑みを浮かべ、手に持つ薙刀を振る。オレは回避することをせずに真っ直ぐ駆けた。


左肩に激しい痛み。だが、そんなものを気にしてはいられない。今はこいつを倒す。


一気に距離を詰めて速度を載せたまま男に肘を叩き込む。いや、叩き込んだつもりだった。だが、そこに姿はいない。


そして、背中に激しい痛み。この時、オレはようやく斬られたことに気づいた。左肩も。


体から力が抜けてその場に倒れ込む。


「はははっ、ざまぁないよ。人のものを勝手に奪った挙げ句、奪い返されたらキレるって。人間として終わっているよ?」


「がっ」


傷口を激しく踏まれる。痛みのあまり口から声が漏れた。痛い。とても痛い。だけど、こんなものは我慢しないと。


「往生際が悪いね」


そして、お腹の部分を何かが貫通する感触。これは、薙刀か。


「さっさと死ねよ」


薙刀が引き抜かれてまた突き刺さる。痛みで視界が狭くなってきた。


『させるか!』


そこに聞こえてきたのはディアボルガの声。それと同時に薙刀が引き抜かれた。


『ルカ、下がれ!』


オレの近くに誰かが降り立つ。だが、オレはそこに顔を向ける力すらなかった。


オレは、こんな場所で死ぬのかよ。


「これ以上の戦闘は無意味ですよ。犠牲者を増やしたくないなら今すぐに」


「お断りします」


その言葉と共にオレの体を魔力が包み込んだ。魔力による強制的な治癒速度上昇させる技。極めて保持魔力の多い周しか見たことがない。


まさか、都さんが使えるなんて。


オレは激痛が走る体をゆっくり起こした。そして、前を向く。


そこにあるのはフォトンランサーを50ほど展開する都さんの背中だった。優月とユニゾンをしたクラスメートは真柴昭三の横にいる。


「まずは一つですね。狭間の巫女、都築都。この囲まれた状況でどうするつもりですか?」


フォトンランサーを展開しながら都さんはオレに魔力を送り続けている。こんなこと、普通は出来ない。


「私は第76移動隊の隊員です。守ることが私の指名ですが、今回ばかりは許しません」


都さんの言葉には怒りが満ちていた。そして、都さんがデバイスを取り出す。


「デバイスの能力をオフにしました。どういうことかわかりますよね」


場の戦局が一気に変わった。今まで主導権を握っていたのが真柴昭三なら、今の都さんの行動で主導権が都さんに移った。


本職の『GF』ならまずしない行動。魔術の完全非殺傷設定の解除。つまり、フォトンランサーは一撃で人を殺せる凶器となった。


「正気ですか?」


真柴昭三の言葉もわかる。おそらく、周がこの場にいても同じことを言うだろう。『GF』は常に非殺傷設定でいなければならないのだから。


義務であって強制ではないからこそのやり方。


「正気です。どうしますか?」


「駐在所の中には人質が」


「悪いわね。人質って彼らのことかしら?」


その言葉にオレは安心しながら振り返ると、隣にフェンリルを従える冬華の姿があった。


駐在所の中には男達を拘束する七葉の姿も。


「悠聖、無事?」


「優月が連れ去られた」


冬華はオレのことを聞いてきたと思うが、オレはそれを無視して優月のことを言った。冬華が不満そうな口になるが小さく溜息をつく。


「わかったわ。真柴昭三。あなたはアリエル・ロワソ様から捕まえるように言われているわ」


「あの小僧め。私の誘いに乗らないとは、彼は世界を救うつもりはないのですかね?」


オレは息を整える。召喚するなら今だ。


「封印の証を作る者。集え、儚き結晶より。アルネウラ」


すかさずアルネウラを呼び出す。他の精霊も呼び出したいところだが、傷が深く、アルネウラぐらいしか呼び出せない。


オレは呼び出したアルネウラの体を借りて起き上がる。そして、アルネウラの体に寄りかかった。


『悠聖、無茶はしないでよ』


「悪い。真柴昭三。世界を救うというのはどういうことだ?」


「そのままの意味ですよ。世界を救う。そう、近い将来に迫る世界の滅亡から。私はあなた達と違って見ている世界が違うのですよ」


見ている世界が違う。そういう真柴昭三は自分のやることが全て正義とでも言うかのようだった。


そういうものは本当に虫酸が走る。自分の、自分達のやることにどれだけの人が犠牲になっても、こいつらは確実に知らないようにするはずだ。


それが精霊ならなおさら。


「そうか。お前が精霊召喚符をバラまいた張本人か」


「そうですよ。この世界を救うために、精霊達には犠牲になって」


「何が犠牲だ」


オレは拳を握りしめていた。


「精霊だって生きているんだぞ!」


「人からすればただの道具ですよ」


その言葉にフェンリルが唸りを上げる。ディアボルガやルカは何も言わないが、完全に怒っていた。


でも、オレやアルネウラとはほど遠い。


「ふざけるな! 精霊だって人間と同じく、喜び、怒り、哀しみ、笑い、恋をする。姿は違うくても生きているんだ! 誰かを犠牲にして救われる世界なんて糞くらえ! 世界が滅びるとしても、魔界、天界、精霊界、音界のどこにも、犠牲になっていいような人なんていないんだよ!」


昔に聞かされた周の夢。とある任務でオレ、周、孝治の三人だけで野宿した時に交わしあった夢。その中で周が語った夢がこれだ。


それの影響をオレも孝治も強く受けている。


「『誰かを犠牲にして世界を救えたとしても、それは世界を救えたことにはならない。世界を救うということは、自分も仲間も知り合いも誰もかも救うことだ』。オレはそう思っている。だから、お前のやり方を認めるわけにはいかない」


「民衆がついて行きますか? 人間なら人間にメリットのあることをすればいいのですよ。あなたとは必ず相容れませんが。まあ、いいでしょう。今は精霊を確保出来ただけでよしとします。行きますよ」


真柴昭三が歩き出す。その後を追いかけるのは数人だけ。もちろん、クラスメートもだ。他の面々はこちらに武器を向けている。


オレは歯を強く噛み締めた。


またかよ。また、オレは、何も出来ずに終わるのかよ。また、フィネーマのことと同じになるのかよ。


また、大事な奴を失うのかよ。


オレは、オレは、


『今は我慢して』


オレの頭の中にアルネウラの声が聞こえる。その声はあの時と同じだった。


オレが突っ込む前にアルネウラが言った言葉と。


『今は、戦力で勝てない。それに、罠が確実にある。今向かうことは止めて。じゃないと、悠聖が』


オレはアルネウラの顔を見た。その目には涙が溜まっているけど、その瞳に映る意志の光は強い。


オレは小さく頷いた。そして、周囲を見渡す。


囲まれてはいるものの、主導権を握っているのはこちらだ。都さんは撃たない。いや、撃てないのだろう。今、完全に囲まれているから。


「どうすれば」


都さんが小さく呟いた。確かに、この状況ではどうすればいいかわからないよな。


オレは空を見上げる。誰か助けが来ればいいけど。


真柴昭三が歩いている方角から車とトラックが現れた。その二台は真柴昭三の近くで止まり、真柴昭三達を中に入れる。


追いつけないというわけではないが、もし、ダミーを大量に作り上げているなら捜索は困難だ。


どうすればいい。とうすれば。


『今だよ!』


その瞬間、アルネウラが叫んだ。それと同時に降り注いだ光の柱が周囲にいたパワードスーツを着ていない男達に降り注ぐ。


都さんもフォトンランサーを放ち、見える角度にいるパワードスーツの男達にぶつけていく。


「一体誰が」


オレがそう呟くと同時に最後の一人がルカによって壁に叩きつけられた。オレは空を見上げる。


一体誰が援護を。


「悪い。遅れたぜ」


そこにはゆっくり降下してくる浩平とリースの姿があった。もしかしたら、アルネウラはこの二人に気づいていたのかもしれない。


二人が地面に降り立つ。


「ちょっとばかし周から用事を預かっていてよ。それを済ましていたら遅れた」


「用事?」


「これ」


リースが都さんに何かを渡す。あれは、デバイスか? 都さんはデバイスを持っているはずだけど。


「NGD。Next Generation Device。次世代型デバイスらしい。周が都さんのために設計した史上最高の集積デバイスさ」


「集積デバイスですか? 一つにしか見えませんが」


都さんの握るデバイスは確かに一つしか見えない。一体、どうして集積デバイスなのかわからない。


都さんが首を傾げると、NGDから光が放たれた。その光はまるで都さんの顔をスキャンするように動く。


「これは」


「周から詳しいことは聞いていないからな。都さんなら使えるって言っていたけどな」


浩平が不思議そうに首を傾げてからオレを見てくる。そして、フレヴァングを肩に担いだ。


その目は明らかにオレの言葉を待っている。


「みんな、力を貸して欲しい。優月を助けたいんだ。だから、力を」


「いいぜ。それに、真柴昭三が出てくるなんて俺らの中じゃ予想外だしな。リース、追えるよな?」


「大丈夫」


リースが手のひらを空に向ける。すると、周囲の地図が浮かび上がった。そこにあるのは一つの点。


「でも、罠が必ず待っている。それでも」


「当たり前だ」


そんなのはわかっている。でも、今を逃せば優月が戻ってこない、そんな気がするのだから。


何が何でも助けてみせる。そのためなら、何だって使う。


「仕方ないわね。向かうのは最大人数の七人。一直線に向かったとしてこの場所だと市街を出るまでに追いつきそうね」


「市街では手を出さねえよ。市街を出てからじゃなければ戦闘の被害が大きすぎるからな。追跡するしかないか」


市街で戦闘するわけにはいかない。もし、相手がフュリアスを使ってきたなら被害が一気に多くなる。たくさんの犠牲者が出る。


その時、都さんが手を挙げた。


「私が運びます。皆さんを目的地まで」


「運ぶ? リース、瞬間移動ショートジャンプの最大距離はどれくらいだったっけ」


「2km」


それだと市街にしか入らない。市街外に出ることが極めて困難だ。


「都の場合は5kmほど飛ばせるわよ」


琴美さんの何気ない言葉。だが、その言葉に誰もが驚いていた。一応、ギネスに登録されている瞬間移動(ショートジャンプ)の距離は6km弱。それに匹敵する距離。しかも、一人でだ。


なのに、今の言い方だとこの人数で5kmほど飛ばせることになる。その時点で世界記録だ。


「5km。わかった。少しだけ時間がある。今の内に準備を」


リースが全員の顔を見渡しながら言う。こちらがどんな行動を取って追いかけてくるかわからないからほとんど全方位に策を張っているはずだ。つまり、敵の真っただ中にいる。それをオレ達は気づいているからこそのリースの言葉。


都さんを除くオレ達は頷いていた。次は敵地だ。どこまで戦えるかわからない。敵地で戦うと言うのは全滅する危険性のある戦いだということだ。


すると、アルネウラがオレの服の袖を引っ張った。


『悠聖、少しだけ、いいかな? 私と、えっと、レクサスの二人で話したいことがあるから』


「わかった」


オレはアルネウラの手を強く握る。短時間だけだが、精霊界と人界を繋ぐ魔力孔の中。精霊と力でこの中で術者は会話することが出来る。


オレの前にいるのはアルネウラとレクサス。昔からオレと一緒にいる二人。


「話は何だ?」


『うん。悠聖に話したいの。ユニゾンがどういうものなのか。悠聖にだけ話したい。じゃないと、優月を助けることが出来ないから』


次は中編。悠聖の過去、フィネーマとの話を入れて書いていきます。

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