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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第十六話 狭間市『GF』駐在所

ここでようやく主人公達の年齢が判明します。この年齢から始まる主人公は珍しくないですか?

「ここです」


都が案内してくれたのは無人の建物だった。


「周隊長。オレの中の知識を再確認したいんだが」


「どうぞ」


「学生『GF』は必ず一人は駐在所にいなければならない」


「ただし、二十二時から翌朝六時までと授業中はその限りではない」


「駐在所を空ける時は必ず入口に張り紙等の案内が必要」


「緊急時は張り紙がなくてもよい。ただし、そんな緊急時が起きるのは大地震など大規模震災及び大規模戦闘中の時。その際は周囲にいる『GF』のデバイスにも連絡が来る」


オレはそう言いながらレヴァンティンを取り出した。


「そんな連絡は来ていない」


「だよな」


悠聖も同じようにデバイスを取り出して確認する。


「考えられる可能性はただ一つ」


オレの言葉に孝治と悠聖も頷きあった。


『サボり』


三人の声が重なる。


オレは小さくため息をつきながら駐在所の入り口を開けようと手をかけた。


だけど、入り口は開かない。


「施錠はしっかりされているだけマシか。ったく」


オレはポケットからカードキーを取り出し、入り口横にある認証機にかけた。すぐに施錠が外れる。


入り口を開けて中に入ると、そこは少しほこり臭かった。長い間誰も入っていない。


「孝治と悠聖だけ入ってきてくれ。換気するのに時間がかかる」


「そこまでか? ふむ、どれだけサボっているのだ?」


「さあ?」


近くの机の上を触るとうっすらほこりが積もっている。


地域部隊の『GF』全員がいなくなったのはこの場所ではないはずなので、いなくなってからずっと誰も入らなかったとしてもこの積もり様は酷い。


「周隊長。電気、つかないんだが」


悠聖がスイッチをぱちぱち鳴らしまくっているが電気がつく様子すらない。つまり、電気が通っていない。


「周、この様子だと三ヶ月はここに入った痕跡はないな」


「やっぱり?」


いなくなったのは約一ヶ月前。つまり、ここには『GF』がほとんどいなかったということになる。


カードキーが有効だったことや、室内の資料から考えてみても、ここが駐在所であることは確かだ。ちゃんとここの隊長の記録も今、発見したし。


それを捲ってみると。


「見るのが嫌になる内容だな」


中身はどうすれば不正をできるかという会議について書かれてあった。


オレは小さくため息をついたまま記録をもとの場所に置く。


「孝治、悠聖、他に異常は?」


オレは窓を開けながら尋ねた。


もうすぐ春だから暖かくなってきたけど、やっぱりまだ寒い空気が流れ込んでくる。


「無しだ」


「同じく。電気がつかないところ以外はなにもないかな。あっ、水道もか」


インフラ整備が壊滅か。


「みんなにお茶は出せないな。併設されている宿舎の方を見てきてくれないか? オレは説明してくる」


「了解」


悠聖がすぐ横にあった宿舎への入り口を開けて中に入っていく。ちなみに孝治は移動済みだ。電気つかないから暗闇が多いし。


オレは小さくため息をつきながら外に出た。


「琴美、都、ここの学生『GF』はどうなっているんだ?」


「学生『GF』? さあ? 都なら詳しいんじゃないの?」


「はい。見回りなどの活動はしていましたが最近はあまり見かけませんね。春休みなのだから思っていますが」


「そう言えば、今って春休みなんだよな」


『GF』の仕事をしていたら季節を完全に忘れてしまう。


「つうか、学生だろうが『GF』は休みでも仕事があるだろ。それなのにサボりなんて。羨ま、違った、けしからん」


「浩平が何を言いたいのかはわかった」


むしろ、いつの間に復活したんだ? 気配すらなかったぞ。


「誰か知り合いでもいたら紹介して」


「都に琴美? 何してるの?」


オレが話している最中に二人の知り合いであろう少女が二人に話しかけていた。二人は顔を見合わせて同時に少女の肩をがしっと掴む。


「な、何?」


「周、彼女が学生『GF』の一人よ」


「もしかして、正規部隊来るのが今日? それにしても小さいような。小学校中学年?」


「今年で中学生になるが?」


オレは思わずレヴァンティンを取り出しながら答える。もちろんまだ剣は呼び出さない。まだ.


「中学生で正規部隊なんてありえないよね。都もそう思うでしょ?」


「千春さん。悪いことは言いません。今すぐ謝った方がいいと思います」


「へっ?」


「オレの名前は海道周。狭間市に半年間駐在する第76移動隊隊長。学生『GF』なら、この中の惨状を説明できるよな?」


オレは笑みを浮かべながら、ただし、目は全く笑わずにゆっくり少女に近づく。


少女は額に汗を流していた。そして、助けを求めるように都達の方を向く。


「えっと、本物?」


「本物です」


「でも、でもだよ。正規部隊が来るのは明後日だって聞いていたんだけど」


「全員集合するのはな。オレ達は先遣隊だ。で、説明を」


「掃除忘れていました!」


少女が勢いよくその場に土下座した。まあ、回答は予測していたけど。


「それだけじゃないだろ。ここ最近、この場所が使われていない理由は?」


「知らないよ」


その言葉にオレは思わず駐在所の方を見ていた。


「地域部隊の人がね、『ここには来なくてもいいように事務処理するから』って言ってたよ。だから、ボク達は今日、みんなだ掃除するように」


急に浩平が間に入ってきてオレの方を思いっきり掴んだ。


「周! 今の言葉聞いたか? 自分のことを僕と言いましたぞ。なんということだ。まさに清楚の一言で表すことができる女の子だけでなく、あの有名な属性のひと、めぎゃ」


オレは無言で膝を勢い良く上げた。もちろん、直撃する場所は男にしか分からない痛みを感じる場所。


浩平がその場に崩れ落ちる。


「周隊長ー! 宿舎の方は誰かが使った痕跡がって、何やってんだ?」


「大方、浩平が暴走したのだろう」


「なーる。で、話を戻すが」


なんというか、オレらはこいつがいる状態を日常として認識し始めているみたいだ。そういう能力を浩平が持つと考えたら凄いのだが、素直には褒められない。


「宿舎の方だけは昨日か一昨日に誰か侵入したな。一応、証拠隠滅はしたみたいだけど、不自然にほこりが積もっていた」


「不自然ってどれくらい?」


「駐在所の厚さより0.2mmほど厚かった」


「それがわかるお前の頭がオレからすれば不自然だ」


0.2mmの厚さの違いってほとんどわからない。


まあ、人の上限が0.1mmだと考えるとわかるような気もするが、それを積もっているほこりでするなら無理だと言うしかない。


「ところで、そこの新しい女の子は?」


「ボクの名前は雨宮千春。狭間市の学生『GF』の一員だよ。千春って呼んでくれていいから」


「ふむ、浩平が暴走した理由がわかった」


「あいつならな」


二人が一瞬で浩平の暴走の原因を悟ったから後で説明する手間が省けたけど、これはこれでないよな。


「オレから紹介する。花畑孝治と白川悠聖。どちらも同じ第76移動隊の部隊員だ」


「つまり、周は千春から話を来たのか?」


「ああ。千春から聞いている。一応、いろいろ尋ねたいことがあるから会議室に・・・、綺麗じゃないだろうな。千春、どこか『GF』の予備会議室はないか?」


「あるにはあるけど、ここから遠いよ」


「十分。都も琴美も一緒に来てくれるか?」


「周様のためなら火の中水の中どこまでもお付き合いします」


「都のこれがなければいいのに」


琴美が小さくため息をつく。言いたいことはよくわかるけど、それは言わない方がいいと思う。いろいろな理由で。


オレは駐在所の認証機にカードキーを通して鍵をかけた。


「さて、案内してくれるか?」


「うん、でも、小さいからね」


「大丈夫だ」


どれだけ小さいと言ってもここにいるのは全員大人の体型をしていないメンバーばかり。入るに決まっている。


この時のオレはそう思っていた。


学生『GF』=バイトと考えてくださればありがたいです。

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