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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第百四十八話 共闘

僕は動きを止めているアストラルブレイズの背後に回り込んだ。そして、そのまま両手に取りだしたライフルをつきつける。


「これ以上、動かないで」


『どさくさに紛れたつもり?』


「そういうわけじゃない。でも、あなただって驚いているはずだ。今は、武器を収めて欲しい」


生身の人がフュリアスを殴り飛ばせれるのなら、アストラルブレイズも殴り飛ばされたって文句はない。というか、同じような末路をたどる可能性だってある。


それがルーイにもわかっているのか、ルーイはアストラルブレイズの両手を挙げた。


『確かにね。でも、負けたという意味では』


その瞬間、何かの閃光が煌めいた。僕は慌ててダークエルフをそっちの方向に向ける。


そこには、空を舞う木々。そして、抉り取られた森。


『あそこは、基地』


ルーイの声が耳に響く。つまり、あそこが北北東の地点なのだろう。赤いフュリアスが待機していると思われる場所。そこで、何かが起こっている。


『悠人、聞こえるか? 様子見をそこの青いフュリアスと一緒に頼む。今の言葉から考えると、何かがあった可能性が高い。二人で行動しろ』


「了解。ルーイも大丈夫?」


『あ、ああ。今は仕方なくだぞ』


「うん」


僕はダークエルフで地面を蹴る。FBDシステムは継続したままだけど、限界稼働時間は推定で約10分弱。だから、無駄な行動はできない。FBDシステムは諸刃の剣だから闇雲に突撃できない。


『ここは僕が前に出る』


そうしていると、ルーイの乗るアストラルブレイズが空を飛翔しつつ前に出た。


『悠人の装甲はほとんどないはずだ。だから、僕が敵を引きつける。悠人は隠れながら相手を一撃で』


「わかった」


そう返事をした時、近くの山はだから蒼鉛のフュリアスが出てきたように僕には見えた。アストラルブレイズの背中にある翼を作る板がアストラルブレイズの何倍もある。見た目は巨大な一枚の翼。


まるで、蒼鉛色の天使。


「あれが、敵」


蒼鉛のフュリアスが背中を動かす。まるで、背中の板が砲になったかのようにこちらに向いていた。そして、僕の背中に恐怖が走った。


FBDシステムを全開に地面を蹴る。前にではなく横に。アストラルブレイズはさらに高く飛翔した。


そして、起きる閃光の嵐。


「くあっ」


両手に盾を構えながら木々の間に入り込む。だけど、凄まじい量のエネルギー弾は周囲の木々を吹き飛ばし、盾を構えるダークエルフの体すらも徐々に下がらせる。


『くっそ。いい加減にしろ!』


大空を飛翔しながら回避するアストラルブレイズが手に持つライフルを三連射した。蒼鉛のフュリアスがライフルから放たれたエネルギー弾を回避するために動く。


その隙に僕は走り出した。一直線に。蒼鉛のフュリアスが作り出した道を一直線に駆け抜けて行く。


「相手の機動力はあまりないか」


アストラルブレイズが近づきながらライフルを放つが、蒼鉛のフュリアスはそれをことごとく回避する。でも、その動きはどこか遅い。まるで、機体に慣れていないかのような動き。そして、実戦に慣れていない。


蒼鉛のフュリアスがこちらに気付いた。気付いて背中の砲の一部をこちらに向ける。他の部分はまるでブースターの様にエネルギー残滓を吐きだしていた。


砲とブースター、いや、大量のスラスターだ。大量の砲であり小型スラスターでもある機体。そこ機体に僕は見覚えがあった。


「あの写真の機体」


すでに崩落した謎の遺跡で見つけた写真。そこに映ってあった機体と同じだ。小型のスラスターが大量にあるフュリアス。写真が写された角度から小型スラスターが大量に装着されているようにしか見えなかったけど、実際こうなっていれば納得する。


放たれるエネルギ-弾を最低限の動きで回避する。そして、ライフルの引き金を引いた。


蒼鉛のフュリアスは避けようとする。だが、避けきれず、エネルギー弾が翼の一部に当たって弾けた。


「効いていない」


体勢を低くして一気に地面を蹴る。一瞬で最高速度に達したダークエルフは蒼鉛のフュリアスの懐に潜り込んでいた。


対艦刀を取り出して蒼鉛のフュリアスに叩きつける。


倒した。この瞬間の僕はそう思っていた。だけど、対艦刀が蒼鉛のフュリアスに当たった瞬間、その刀身が砕け散る。


「なっ」


すかさずスラスターを全開にして蒼鉛のフュリアスから距離を取った。蒼鉛のフュリアスは冷静に背中の砲を一つ、こちらに向ける。


「そこだ!」


取り出したライフルを砲の発射口に向かっては放った。これで、一つは潰せたはずだ。


だが、現実は無慈悲だった。跳ね上がった翼の砲は冷酷なまでにエネルギー弾を放ってきた。とっさに盾を構えるが、至近距離で受け止めたエネルギー弾に盾が弾き飛ばされる。


よろめくダークエルフ。そこに走りこむ蒼鉛のフュリアス。


『やらせないよ!』


その時、リリーナの声が響き渡った。それと同時に極太のエネルギー弾が蒼鉛のフュリアスの横手から直撃して蒼鉛のフュリアスを倒れこませる。


僕はダークエルフを後ろに下がらせた。


「リリーナ?」


『悠人、無事?』


センサーの反応した方に向くと、そこには赤いフュリアスが巨大な砲を構えていた。これに、リリーナが乗っている?


「どうして?」


『詮索は後だ! 来るぞ!』


ルーイの声に僕はダークエルフを横に跳ばせる。それと同時にダークエルフがいたところにエネルギー弾が突き刺さる。


『バスターカノンでもダメージが与えられないとは。どうすればダメージが』


『ダメージが与えられないわけじゃないよ』


起き上がる蒼鉛のフュリアスを見ながら僕はリリーナの声に耳を傾ける。


『フュリアス自体にダメージを負わすことは不可能だよ。それはわかっていると思うけど、全ての衝撃をゼロに出来るわけがない。パイロットを気絶させれる様な衝撃を与えれば』


『気絶して捕獲というわけか。ギガッシュに乗っているお嬢さんが何者か知らないけど、その案に乗った。悠人、決めれるか?』


僕はエネルギー残量を見る。少し無理をしたからか後5分ほどしか持たない。でも、5分ほどのエネルギーがあれば衝撃のある攻撃を叩き込める。


「任せて」


『頼む。僕が引きつける!』


アストラルブレイズが両手のライフルを連射する。距離が近くて回避できないのか蒼鉛のフュリアスはひたすらエネルギー弾の直撃を受けていた。


僕はすかさず最終兵器を取り出す。二秒間ほどしか使えないガトリング砲。でも、衝撃を与えるならこれぐらいの威力があったら十分だ。


蒼鉛のフュリアスがこっちに気づいて砲を向けるが、リリーナの放つバスターカノンが蒼鉛のフュリアスを大きくのけぞらせた。


「喰らえ!」


ガトリングの引き金を引く。凄まじい量のエネルギー弾が叩き込まれて蒼鉛のフュリアスは倒れ込んだ。


「突撃するよ!」


FBDの力を発揮しながら一気に距離を詰める。距離を詰めている間に必要なものを取り出していた。散弾銃。至近距離で当てればガトリングに匹敵する威力を叩きだせるはずだ。


僕はダークエルフを蒼鉛のフュリアスに突っ込ませた。


「終わってくれ!」


そして、左のレバーを最大限まで倒して闇雲に散弾銃の引き金を引く。外れた散弾が大地を打ち、周囲に土煙が立ち上りだす。でも、僕は散弾銃の引き金を引く手を止めなかった。稼働時間が減っていくことを気にすることなく散弾銃を叩き込む。


いくら引き金を引いただろうか。いつの間にかコクピット内部にアラーとが鳴り響いていた。エネルギー切れだ。


僕はコクピットを開けてパワードスーツの推進力で跳び上がる。そのまま、近くにいるリリーナのギガッシュの方に飛び乗った。


「悠人、大丈夫?」


ギガッシュのコクピットが開く、血まみれのリリーナがこちらに向かってきた。


「リリーナ! 血まみれだけど」


「これ? 全部返り血だよ。戦闘があって。それより、イグジストアストラルは?」


「イグジストアストラル?」


リリーナは頷いて蒼鉛のフュリアスを指さした。あれ、イグジストアストラルと言うんだ。


イグジストアストラルは倒れたまま動かない。どうやら、完全に中のパイロットは気絶してくれたらしい。


「ほっ。よかった」


そう思った瞬間、イグジストアストラルが起き上がった。リリーナが僕の手を取って一緒にギガッシュの中に乗り込む。ダークエルフとは操作方法が違うみたいだ。


リリーナはすかさずバスターカノンをイグジストアストラルに向けた。だが、イグジストアストラルはこちらを見つめたまま微動だにしない。一体、何が。


『悠人、リリーナ』


そして、唐突に無線が入った。この声は、鈴?


『ごめんなさい』


泣きそうな鈴の声と主にイグジストアストラルが飛び上がる。僕はギガッシュのコクピットを開けてパワードスーツの力でイグジストアストラルくを追いかけようとする。でも、速度が段違いに違う。


「鈴、鈴ーー!」


僕は鈴の名を叫ぶが鈴は答えてくれない。


イグジストアストラルが米粒のように小さくなり、僕はその場に滞空した。どうしてあの場に鈴がいるのかわからない。鈴は今日、家の用事で狭間市にはいないはずなのに。


「鈴、どうして」


「乗れ」


僕がぼーっとしている間にいつの間にかアストラルブレイズが横まで来ていた。コクピットが開いてそこからヘルメットをかぶった人がこちらに手を伸ばしている。


僕は素直にアストラルブレイズのコクピットに乗り込んだ。


「今の奴は知り合いか?」


ルーイの言葉に僕は頷く。ルーイはゆっくりアストラルブレイズを地上に向かって降下させた。


「まんまとはめられたというべきか。僕達が。結城家の奴らめ」


「ルーイ、どういうこと?」


僕はその名前に目を見開いていた。どうして、鈴の家の名前が出てくるのか?


「ここに古のフュリアスが存在すると言われて僕達はいた。まさか、歌姫様までいるとは思わなかったけど、その情報をくれたのが結城家だ。オレ達はどうやらお前らからの隠れ蓑にするために僕達を利用したみたいだな。悠人、どうかしたのか?」


僕は思い出していた。どうして鈴がここに来たのか。そして、どうして、鈴が一人でここに来れたのか。最初から、このことのために、僕達を裏切るために。


「そんあ。嘘だよ。嘘と言って。お願いだから、鈴が僕達を騙していたなんて言わないで。嘘だ。嘘だよ」


信じられない。あれほどまでに優しい鈴が、僕達を騙すなんて、ありえない。誰か、誰か、嘘だと言ってくれよ。


一応、凄まじくわかりにくい伏線は忍ばせていたのですけどね。鈴がどうして狭間市に一人でいられるのか。遊びに来ているという感覚で書いていましたけど。

これから事態は急展開。周達が作り出した第76移動隊の本領が発揮されていきます。

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