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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第百三十二話 放課後の行動 秘密の地

確か、その時にセキュリティシステム起動と言っていたような気がする。セキュリティシステムということは侵入者を排除するシステムのことだろう。そうなると、危険性は跳ね上がる。


でも、浩平さんとリースの二人はそんなものをものともせずに洞窟の中に入って行った。もちろん、僕達はぽかんと口を開けて固まっている。


「どうしたんだ? もしかして、びびったとか?」


浩平さんがにやりと笑みを浮かべながら振り返る。リースは浩平さんの手を握ったまま正面を睨みつけていた。


「怖くないのかな? 悠人がはだしで逃げ出した場所なのに」


「反論できないのが痛いよ」


確かに僕は即行で逃げた。あの時は何も感じなかったけど、改めて考えると命の危険を感じていたに違いない。だから、反論はしない。というか、出来ない。


「俺もリースも竜言語魔法が使える身だからな。ちょっとやそっとのことじゃ倒れない。それに、リースがいれば何だってできる」


「惚気?」


リリーナが微かに目を細めて浩平さんを睨みつけながら言う。


それに対して浩平さんはまた笑みを浮かべた。


「羨ましいか?」


対するリリーナの反応は鎌で浩平を殴りつけることだった。浩平さんが面白いくらいにバウンドする。地面と天井を二回ずつ跳ね返って、地面を五回跳ね上がった。そして、そのまま地面に倒れる。


だけど、数瞬した後には何事もなかったかのように浩平さんは起き上がって歩き出していた。


「むかっ、相変わらずの防御力。殺す気だったのに」


「まあまあだぜ。こんなもの、孝治と悠聖に前後から蹴りつけられるよりも痛くない」


「そう」


すると、リリーナはにっこり笑みを浮かべて蹴り上げた。本当に笑顔。笑顔のまま、浩平さんの股間を蹴り上げる。


僕はゾッとして思わずそこを押さえてしまう。


その後のことは言わずともわかるだろう。






洞窟の中は相変わらず何もない。僕は簡易型パワードスーツのヘルメットについているライトをつけながらみんなと一緒に周囲を見渡す。


扉が閉まった以外に何の変化もない。空気中の構成比率も変わったものが無かったから何も起きなかったということだろうか。


「行き止まり」


リースが小さく呟いた。その言葉に全員が前を向く。


確かに、そこにはただの壁があった。リースがその壁をペタペタ触る。その顔はどこか険しい。


「何も無さそうだな。悠人が必死に逃げて来たというのに」


「地面にあるスイッチを踏んだから。思わず慌てて」


「そりゃ逃げるな」


浩平さんは壁をペタペタ触りながら答えてくる。そして、小さく頷いた。


「何かあるな」


「浩平も?」


リースと浩平さんが顔を合わせて頷き合う。竜言語魔法が使える二人だからこそわかる何かがあるのだろう。


僕は少しだけ眉をひそめて振り返った。ちゃんと、二人がいる。


「何があるの?」


「空洞? いや、空間か? この奥に何か。もしかしたら、ここは入り口で、通路になっていたけど意図的に隠された可能性があるな」


「でも、どうしてこんな田舎の様な場所に」


僕は少しだけ首を捻った。もう少し交通の便がいい場所に作ればいいのに、どうしてこんな場所に作るかわからないからだ。でも、リリーナは僕の言葉に小さく頷いた。


「そうだね。でも、ここが狭間の地だからだと思うよ、狭間の鬼を封印するに足りる地形要素があるなら、魔術的観点から見ても十分にこの地に何かの研究所を作る可能性はないよりもある方が高いよ」


「結城の本家もこの近くから出来たけど、それでも狭間に関する話は結城の家に腐るほどあるから。この地図だって。もしかしたら、何かあるかもと思っていたら」


「案の定というわけね。リース、ここを抜くにはどうすればいいと思う?」


浩平さんがそう言った瞬間、リースが掌を壁に押し付けた。そして、その部分で何かのエネルギーが高まる警告音が鳴り響く。


嫌な予感しかしない。


「浩平」


「何だ?」


リースの言葉に浩平さんが普通に尋ねた。そして、浩平さんがリースに近づいた瞬間、僕は鈴を抱きしめて背中を向ける。


轟音。いや、爆音か。


何とか障壁魔術の発動は間に合った。リリーナも発動していたらしく、鈴が多少目を回しているくらいでそれ以外の場所にけがはない。


僕が振り返ると、そこには膨大な土煙と共に、向こうの空間が微かに目に入った。そして、ぴんぴんしている浩平さんの姿も。


「至近距離での爆発で生きているなんて、本当に生き物?」


リリーナが不思議そうに尋ねる。その言葉に浩平さんは親指を立ててにやりと笑みを浮かべた。


「これくらい、痛くはないけど痒いな」


相変わらず人間離れした防御力だ。


「リースは無事か?」


浩平さんが爆発を出したリースに尋ねた。多分、いくつもの防御魔法を展開していたんだろうな。むしろ、浩平さんの方が危険な気がするけど。


「無事。浩平、前」


リースの言葉に浩平さんが前を向く。そこには空間があった。ただの空間じゃない。何かの壁によって作られた空間。そこには何もない。


リースが警戒しながら浩平さんを前に出した。浩平さんがその空間に入る。


「何だこれ? こんな物質見たことないな」


浩平さんが地面を触りながら不思議そうに言う。確かに、見た目から材質が何かは判断できないが、見たことの無い壁であり地面であるのは確かだ。


リースが恐る恐るその部屋に入る。そして、周囲を見渡した。


「全部同じ物質」


「だな。リリーナちゃんか鈴ちゃんはわからないか?」


僕達も安全そうなので部屋の中に入った。


感触から行って何かの金属だろう。でも、金属にしては滑りやすいような気がする。どんな材質かなんて全く分からない。


リリーナと鈴は同時にしゃがみ込んだ。そして、鈴が床を触って首を横に振る。でも、リリーナは違った。


「遺跡と同じ。魔界にある聖域の遺跡と同じだよ。材質とか、構成とか全く不明で、いつ建てられたのかもわからない聖域の遺跡と同じ材質。触っているだけだから違うかもしれないけど、触っただけなら完全に同じ」


「魔界にある聖域の遺跡? なんだそりゃ?」


「魔界の宗教の聖地。構成される金属からいつ作られたかまであらゆる点が不明なもの。この世に存在する最大のオーバーテクノロジーの建物だったもの」


リースが過去形で言うのはこの地があるからだろう。多分、この部屋だけじゃないはずだ。この部屋以外にもいくつかある。だから、リースは過去形にしたのだろう。


リースの説明で納得したのか、浩平さんは感心したように頷いていた。


僕は何気に天井を見上げる。見上げると同時にライトが天井を照らした。そこには、


「写真?」


僕は目を凝らした。そこにあるのは確かに写真だ。天井一面に張られた写真。絵ではない。


そして、そこに張られているものを見て僕は小さく息を呑んでいた。


「フュリアス」


そこに張られているのは確かにフュリアスの写真だった。でも、僕の知る全ての来たとはかけ離れている。


第三世代である僕のダークエルフが一番人に近い形だが、どうしても、足や胸の部分が少し大きい比率になる。でも、これは完全な人型。


大きくした人を真似て金属で作ってみたならこうなりそうだ。その背中にあるのは九枚の光の羽。いや、よく見るとその一機だけじゃない。その近くにあるのは四機のフュリアス。中央には黒い大きな何か。


うずくまっているからかわからないけど、形がよくわからない。他のフュリアスも一番大きなフュリアスと同じように人の形。そして、それぞれ武装が違う。たくさんの砲塔。いくつもの剣。たくさんの小型ブースターがついたもの。そして、武装がほとんどなく、手に持つ剣のみの機体。


「どうして、フュリアスが」


「もしかしたら、これは魔科学時代のものかもしれない」


リースが天井を見上げながらみんなに聞こえるように言う。


魔科学時代の名前は聞いたことがある。今のフュリアスの元となったものが魔科学時代に存在していたフュリアスであることも。そして、オーバーテクノロジーの時代であったことも。


それなら話はわかりやすい。これが魔科学時代の産物ならこの写真の大きさも納得できる。


「でも、どうしてこのような場所に魔科学時代の遺跡が」


鈴が不思議そうにつぶやいた。確かに、交通の便を考えるとって、この話はもうしたか。


「もしかしたら、ここが魔科学時代の研究所、アルタミラ、北京郊外、アメリカ西海岸と同じような場所じゃないかな? もしそうなら、悠人の言うようなことを考えても、この場所のセキュリティが生きている証明にもなるし」


あれ? 話がうまくわからなくなった。よく考えよう。


この地はもしかしたら、研究所かもしれない。でも、どうして、その話になったのだろうか。あっ、そっか。僕がセキュリティシステム起動したと言う言葉を聞いたことをリリーナに話したからだ。だから、未だにセキュリティが生きているのはアルタミラのような魔科学時代の研究所であった可能性があるということね。うん、納得。


『侵入者を確認。セキュリティシステム起動』


うんうん。こんな感じで鳴っていたよね。あの時も。あれ?


「危ないよね」


僕がポツリと呟き、上を見上げた瞬間、僕達は同時に洞窟の外に走り出した。


だって、天井が落下してきたから。まるで、あの写真自体がトラップであったかのように。


僕達は全速力で洞窟を駆けて外に飛び出した。鈴はリリーナが抱えている。


飛びだしたと同時に凄まじい量の粉塵が洞窟から飛び出してくる。そして、何かが崩れる音。どうやら洞窟も崩れたらしい。


僕達はそのまま勢いよく崖から飛び降りて、崖からも距離を取った。


そして、小さく息を吐く。


「トラップってあんなに酷いものだったっけ?」


僕が知る者には天井が落ちてきて踏みつぶすようなものが存在することを知らない。


「でも、宝探しっぽいな。天井が落ちてくるって」


対する浩平さんは目を輝かせていた。それに僕は小さくため息をつく。


アル・アジフさんにどう報告しよう。


次に出すトラップはどうしよう

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