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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第百八話 約束VS使命

狭間の鬼は内心焦っていた。音姫、いや、鬼姫に何一つ攻撃が当たらず、そして、鬼姫の攻撃はこちらを確実に斬り刻んでいることを。


今まで、ここまで一方的な展開になったのは数は一回しかない。その時は完全復活した時の力よりも巨大だったため、相手が化け物すぎたと思っている。だが、今の相手も化け物じみていた。


神の力を手に入れれば力が底上げされ、手に入れなくてもかなわない。僥倖は敵味方関係なく攻撃するところくらい。


『哀れな』


狭間の鬼は呟く。そんな攻撃では狭間の鬼は倒せない。倒すにはさっきされかけた封印か、四剣の一本を持ち出すしかない。


その時、狭間の鬼は膨大な力を感じて振り返った。鬼姫も狭間の鬼から距離を取ってそっちを見ている。


そこには光の翼を背中に纏う周の姿があった。


狭間の儀式における儀式場の力と孝治の持つリバースゼロの力を受け止めているからだ。


そもそも、狭間の力は膨大であり、それを制御出来るのは難しい。あの時のように体に纏って扱うのは不可能だ。だったら、別のものを作り出せばいい。


それが周の出した理論だった。それを後押ししているのはおそらくリバースゼロだろう。


孝治の持つ神剣『リバースゼロ』。


その効果はいたって簡単だ。威力を吸収して力に変える。


リバースゼロを展開している最中のダメージは全てリバースゼロに蓄えられ、その力を誰かに移譲出来る。


リバースゼロを展開していた孝治はそれがバレないようにするために今まで隠れていた。周に力を移譲する瞬間まで。


リバースゼロに蓄えられた力は狭間の鬼の力。狭間の力を操れるものの力。そして、周には世界最高峰のデバイスであるレヴァンティンがいる。周自身も様々な能力を強化されている。つまり、条件が揃っていた。


周はゆっくり目を開く。その目は金色に染まっていた。ブラストドライブ以上になっていないのに。


「終わらせる」


周はレヴァンティンを握りしめる。


「狭間の戦いを終わらせる」


その言葉に孝治が頷く。


「誰も、もう、犠牲になんてするものか!」


周は地面を蹴った。力任せの加速。だけど、その力は狭間の鬼を凌駕している。


『面白い!』


狭間の鬼は初めてこの瞬間に負けると思っていた。


周は力だけじゃない。その気迫すら人が到達出来る限界に達していることに気づいたから。そして、鬼姫、いや、音姫も助けるつもりでいることを。


だから、狭間の鬼は今出せる全力で真っ正面からぶつかり合った。レヴァンティンと腕がぶつかり合う。


『その力、気迫、人間にしておくには惜しいな!』


「オレは一人じゃない。お前と違って孤独じゃないんだ!」


そこに鬼姫が飛び込んできた。光輝が周の首に迫り、『天空の羽衣』に絡み取られた。


鬼姫の顔が驚愕に染まる。


「ごめん」


周は謝り、鬼姫の鳩尾にレヴァンティンの柄を叩き込んだ。そして、若干浮いた鬼姫の体を蹴り飛ばす。


鬼姫は地面を転がり、光輝は地面に突き刺さった。


「これで、邪魔はないな」


『そうだな!』


狭間の鬼が狭間を渡る。だが、渡った先には周が完全に身構えていた。


レヴァンティンが鞘から走り、狭間の鬼の腕を斬り飛ばす。


純粋な紫電一閃。そして、周はすぐさまレヴァンティンを返した。紫電逆閃だ。


狭間の鬼の体が大きく斬り裂かれるが、狭間の鬼は構わずダウンバーストを放った。それはあまりにも不意だったため、周はまともに直撃する。


だが、周は倒れない。ダウンバーストをまともに受けながらその目は一つも濁っていない。


周はレヴァンティンを斜め下から一気に振り切る。白百合流じゃない。ただの力任せの剣。だが、下手な攻撃よりも威力がある。


狭間の鬼はそれを受け流し、魔力の込めた腕で周の腹を殴りつけた。周の腹に拳が入り浮かび上がる。だが、周はそこで踏ん張って鬼のこめかみを踵で蹴りつけた。


狭間の鬼の体が斜めに傾いて、そのまま地面に足をついて踏ん張った。すぐさま周に向かって頭突きを放つ。周はそれをギリギリで避けて狭間の鬼の顎に膝を叩き込んだ。


そのままレヴァンティンの柄を叩きつける。


もう、技術なんてものは存在しない。お互いの精神を限界まで使い切る殴り合い。そこに介入する場所はない。


周が行おうとしている封印はすでに狭間の鬼がわかっている。わかってからこそ、確実に決めるタイミングが難しい。


だから、決定的な隙を作るためにひたすら攻める。


レヴァンティンを使った攻撃だけじゃない。手足だけでなく頭突きだろうが何だろうが隙を作るために使う。


自分の体が朽ち果てるまで。


「くっ」


狭間の鬼の腕が払われ周の手からレヴァンティンが弾かれる。狭間の鬼がすかさず周の鳩尾に拳を叩き込んだ。


周の体が吹き飛び地面を転がる。


『終わりだ』


そして、狭間の鬼はとどめをさすべく指向性のあるダウンバーストを放った。周は防御魔術を展開して、


「任せて!」


それをベリエが弾いていた。すかさずベリエが鬼がいる方向に向かってナイフを放つ。数は八つ。それらが鬼に当たることなく突き刺さった。


「結!」


ベリエが魔術陣を展開して結界を作り出す。


「はい、周お兄ちゃん」


周がゆっくり起き上がると同時にアリエが周にレヴァンティンを渡した。周はそれを受け取る。


狭間の鬼が結界を砕こうとしているが、全力を出してベリエが展開しているらしく、ひびは入るがなかなか壊れない。


「レヴァンティン、いけるか?」


『一撃なら。それが失敗すれば終わりですよ』


「構わない。アリエ、下がって。ベリエ! 後少しだけ頼む! 都! 全力で狭間の力を送ってくれ!」


周はレヴァンティンを振り上げた。


『アクセルドライブ起動。バランサーシステム正常化。現世空間浸食開始』


「これがオレの、全力全開だ!」


振り上げたレヴァンティンの形が変わる。片手剣から両手剣に。そして、大きく、黒く。だが、その黒さは眩いまでの光に変わる。


今まで翼として固定していた魔力を全てレヴァンティンに乗せたからだ。周は叫ぶ。


「ベリエ! 下がれ!」


「っつ、了解!」


ベリエは勢いよく下がり、結界が砕け散る。だけど、その時間だけ拘束出来ていれば十分だった。


『なんだと。バカな』


「くらいやがれ!」


そして、桁違いに圧縮された魔力の剣が狭間の鬼に直撃した。周はレヴァンティンを手放して地面を蹴る。


「うおおぉぉぉぉっ!!」


声を上げ、残った体力と魔力を振り絞り、周は前に進み、魔術陣を組み上げる。


そして、動けないでいる狭間の鬼に魔術陣を押し付けた。


「終わりだ!」


狭間に干渉して莫大な魔力を使って封印する術式が起動した。狭間の鬼を魔力の縄が縛り上げる。


周はすかさず後ろに下がった。だが、狭間の鬼が周の足を掴む。


『逃がすか。道連れだ。貴様も、一緒に』


「させないよ」


光が一閃された。いや、光輝が狭間の鬼の腕を斬り裂いていた。すかさず、音姫が周の体を掴んで狭間の鬼から距離を取る。


『まさか、こんな』


鬼が腕を伸ばそうとする。だが、その腕は肩から地面に落ちた。


『役目を、我が役目を果たせぬまま、封印されてたまるか!』


膨大な魔力が狭間の鬼の中で膨れ上がる。それは、封印に使われた魔力をはるかに超える魔力。


「まじかよ」


周は小さくつぶやいた。周の体は限界だ。体力も魔力もほとんど枯渇している。もう一度封印するには狭間の鬼が完全に拘束された状態くらいだ。


だけど、まだ戦わないといけない。約束を守るために。


「頑固だな。俺も行こう」


周の隣に孝治が立った。リバースゼロを展開しながら。


「みんなで戦わないと勝てないよ」


それに同意するのは周を助けた音姫が。どうやら面の人格に戻ったらしい。


「そうそう。海道は昔から一人で頑張りすぎやねん」


光が『炎熱蝶々』を展開し、レーヴァテインを構える。


『私も頑張るから』


亜紗がぐっと拳を握りしめてスケッチブックを周に見せている。


「私達も手伝うからね、周君」


「楓は砲撃杖を壊されたじゃない。私が行くわ」


楓が新たな杖を取り出した。訓練とかで使う簡易杖だ。それを見ながら冬華が呆れたように声を出す。フェンリルは冬華の横についている。


「余達の不始末。手伝うぞ」


ほとんど無傷のエレノアが光の横に並んで杖を構える。いつでも射撃が出来る準備をして。


「周お兄ちゃん、この子は私達が見るから」


「だから、思いっきりやっちゃえ!」


アリエとベリエの言葉を背中に受けて、周はレヴァンティンを構えた。


「ああ。行くぞ、みんな!」


そして、全員が同時に動き出す。儀式の終わりに向かって。

次で狭間の鬼との戦いが決着です。

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