第十話 プロフィール
最初に重要な設定の一部があります。全ては公開していませんが。
各キャラのプロフィールを公開。
由姫は次の機会に語られますが、生年月日は新暦1023年3月31日なので周と同い年です。
ニューニューヨークにある『GF』本部総長室。
そこで一人の青年がコーヒーを片手に記憶デバイスと向かい合っていた。青年のもう一方の手はキーボードの上を走っている。
「ったく、時雨の奴、仕事を全部押し付けて日本支部に行きやがって。総長を押し付けたのはオレだけど、いくつか仕事をこなしてから行けっつの。これで、終わり」
青年がキーボードを打ち終えて、そのまま残っていたコーヒーを飲みほした。
そして、ため息を一つ吐く。
窓の外の景色はすでに真っ暗で、未だに再建が進み終わっていないニューニューヨークの建設現場は見えない。
主要な施設のいくつかはニューヨーク跡地から移動し、残ったのはここを忘れないようにするモニュメント建設と『GF』本部の移転計画だった。
多くの人の力を借りてニューニューヨークは復興を始めている。だけど、そこにニューヨークの元住人の姿は一人もいない。
「抜け殻のような感じだな。ここも。この街も。誰もがこの町で何があったかを知らない。知っているのは五人、いや、六人だけか」
青年の言葉は深い悲しみと共にあった。
青年はここに来るといつも思い出す。世界最強の魔術師の少女が泣いて懺悔したことを。両親を失い、妹が意識不明になり、自分が事件の原因だと知って全てを、自分すらも否定した少年を。その少年の姿を見て、戦うことを決意した今なお血の涙を流し続けている二人の少女のことを。
青年はこぶしを握り締める。
「考えても仕方のないこととわかっていても、考えるしかないんだよな。ったく、吹っ切れる方がどうにかするっつうの」
青年は知っている。この地で何があったかを。
「もう、六年以上なんだよな。オレ達が求める未来、奴らが求める未来。目的は同じでも過程が違う。どうすれば、新たな未来を切り開いていけるんだ」
青年はまるで未来を知っているかのように話す。だが、青年はまだ答えを出しきれていないようだ。
青年は机の上におかれている写真立てを見た。その中には周達の姿がある。
周を真ん中に左に由姫、右ににっこり笑う少女。その後ろに音姫、悠聖。さらにその後ろには孝治と光が映っている。みんな笑っている。周の右にいる少女に負けないくらいに笑っている。
時雨は前のクリスマスの時に撮った写真を大事に写真立てに入れているようだ。
「それにしても、こいつらを任務につかすのかよ。由姫は行かないとしても、こいつらの年代じゃトップ10に入る奴らばかりをメンバーにするとはな。評議会の若造を恐れないのは時雨だからというべきか」
青年は楽しそうに笑った。そして、キーボードの上で指を走らせる。
「暗証番号クリア。データ照会完了。さて、ここいら一年でどこまで強くなったかな。まずは、悠聖からだな」
記憶デバイスの中から周達の情報を呼び出す。
まず、画面に映し出されたのは悠聖の情報だった。
・白川悠聖
・新暦1022年6月20日生
・魔術素質:無
・得意魔術:召喚魔術
備考:すでに光属性の最上位精霊であるセイバー・ルカと闇属性最上位精霊であるディアボルガと契約。風属性と天空属性を除いて契約中。
・戦闘ランク:A
・異名:『万世術師』
「こいつには驚かされたよな。膨大な魔力を所持するのに属性魔術が使用できない欠点があったから。まあ、召喚魔術が天才の領域だからな。風属性を除いてすべてと契約か。水と雷と契約したんだな。さて、次は」
青年はキーボードを打つ。
・白百合音姫
・新暦1021年2月3日生
・魔術素質:光
・得意魔術:収束魔術
・戦闘ランク:S
備考:世界五指に入る強さ
・異名:『歌姫』
備考:レアスキル『歌姫』の持ち主
「音姫の強さはけた違いだからな。啓二の奴も見事に育てたものだよな。去年だけでAAからSに上昇か。まあ、時雨を倒したから当り前か。次っと」
・花畑孝治
・新暦1022年4月8日生
・魔術素質:闇
・得意魔術:移動魔術
備考:レアスキル『影渡り』の持ち主
・戦闘ランク:AA
・異名:『夜王』
「こいつの異名はいつの間に決まったんだ? まあ、孝治は夜になれば最強だしな。下手したら音姫に勝てる。次は、亜紗か」
・田中亜紗
・生年月日不明
・魔術素質:風
・得意魔術:機動魔術
・戦闘ランク:AA
・異名:『殲滅姫』
「おっ、いつの間にかAAに昇格しているな。まあ、亜紗の実力はAAAクラスだけど、年齢的に仕方ないか。というか、姫よりマスコットの方が正しくないか?」
青年はぼやきながら次のデータを取り出す。
・中村光
・新暦1022年8月30日生
・魔術素質:炎
・得意魔術:投影魔術
備考:レアスキル『物質投影』の持ち主
・戦闘ランク:A
・異名:『地獄の攻撃者』
備考:最大攻撃範囲は半径2km
「戦闘能力は相変わらず高いのにAランクのままか。まあ、こいつなりにゆっくりしているんだろうな。で、最後は」
・海道周
・新暦1022年4月1日生
・魔術素質:全て
・得意魔術:無
備考:苦手魔術は存在せず、全てが得意ともいえる。
・戦闘ランク:不明
備考:実績的にはAだが隠しているレアスキルが存在すると言われ、本当の戦闘ランクは未だに設定されておらず。
・異名:『最強の器用貧乏』
「相変わらず対抗策があまりよくわからないデータだよな。これだけ見て対抗する手段を考えろというほうが無理か」
しかし、青年は知っている。周が器用貧乏だからこういう状態にいるということではないことを。周の本当の実力を。
「まあ、今のままでいいか。今回の事件はかなりヤバそうだから、周も異名の名に恥じない実力を見してくれるさ」
青年は知らない。その異名が周自身の首をかしげさせていることを。
ようやく、次から狭間市に舞台が移ります。