1話
初投稿です。
俺自身が掲げた聖剣の切っ先が、俺の喉笛に添えられる。
体が震える。しかし、今の俺を恐怖させているのは、俺の意志で俺の喉笛に添えられている剣ではない。
この世界そのものだ。
扉を激しく叩く音が聞こえる。
「どうしたんですの!?空様!?開けてくださいまし!」
「開けてください空さん!いきなり叫んで部屋に閉じこもって!」
扉の奥から複数の女の声が聞こえる。
俺の愛した・・・いや、俺を愛する女が扉の前で騒いでいる。
俺の今の心境からすれば、そんなことは小鳥の囀りのようなものだ。
いや、寧ろ不気味なノイズにすら聞こえる。不愉快だ。
ここは王城だ。冷たい石造りの壁が、女たちの叫び声を虚しく吸い込んでいく。
王城でこんなことをしてもいいのだろうか、と一瞬疑問が頭をよぎる。
そして即座に俺の本能が「そんな些末なことはどうでもいい」とその疑問を却下する。
俺は眼の前の聖剣に意識を移す。
この聖剣であれば、俺の「回避」スキルを貫通して一撃で俺の命を奪うことが出来るだろう。
しかし、勿論俺はこんなことは一度もしたことはない。
脂汗が額に滲む。手が震え、聖剣の先端が俺の皮膚を細かく叩く。息が荒くなり、心臓の激しい鼓動が聞こえてくる。
しかしこれで終われるかもしれないのだ。
死の恐怖など、「この世界」に比べれば取るに足らない。
俺は意を決し、声にならない声を上げながら、聖剣を自分の首に突き刺した。
◆ ◆ ◆
ガバッ!
俺は飛び起きた。
「あの日」だ。「あの場所」だ。
まただ、また・・・
「俺が転生した日に、戻ってきてしまったあああぁぁぁ!!!」