【青嵐編】81:xx19年3月24日
冬が終わり、春の彩りが少しずつ街へ、人へと伝わっていくある季節。
その緩やかな足取りは、桜前線と言う名前でこの国に春を広げていく。
車で街々を走っていると、そこかしこに桜の木が佇んでいるのがよくわかる。
冬には赤紫のかかった黒い木枝には、いまは先端に薄紅色の花がポツポツと咲き始めている。
都内から離れた某所、黒い車が6台ほど駐車出来る駐車場に音を立てて停まった。
運転席に座ってる銀髪の男性は、彼よりいくらか年若い、助手席に座る女性に声をかけた。
ミディアムロングの銀髪をさらりと揺らした女性は頷き、シートベルトを外しはじめる。
銀髪に青緑の瞳。
二人に共通した外見的特徴は確かな血筋を感じさせ、
またその表情から、親しく気の置けない仲であることを感じることはたやすい。
「荷物の前に受付だったな」
「はい、鍵も受け取らないといけないので」
助手席から降りた乃亜は駐車場横の四階立てのマンションを見上げる。
その視界にどこから飛んできたのか桜の花びらが流れていった。
春先の薄青の広い青空、半透明のパネルで覆われたバルコニーが並ぶ、
オフホワイトの壁のマンション。
7部屋分に加えて、端は別の作りになっているのか、窓が3つ並んでいた。
流れる風はまだ少し冬の冷たさを感じさせるが、
そこに春の花、芽吹いた葉の柔らかい香りがする。
日差しはあたたかい。乃亜はその風と日差しに笑みがこぼれた。
なにか懐かしい。
乃亜はそう思った。
この場所に対してではない。
「どうした?」
「いえ、なんでもないです」
歩き出していた静に声をかけられ、乃亜は首を振り、静のもとに駆け寄った。
その表情はいつかのように不安や弱々しい様子はない。
6年前もこんな風に、兄の車に揺られ新しい場所に向かったのだ。
安心出来る優しい場所、薬師のいる施設での暮らしを終え、新しい暮らしを選んだ。
思い返せばまだまだ不安定だった自分が、不安や戸惑いがありながらもそれを選んだのは、
手を差し出したのがほかでもない、心から信頼している兄、静だったからだ。
だがそれでも、薬師と別れ、安心できる場所から離れていくのは不安がとても大きく、
必死に涙をこらえていたことを思い出す。
だが、それから6年。
乃亜は再び新しい場所に立っている。
4月から乃亜は暁天総合大学芸術学部音楽学科へ入学する。
それに伴い、大学が管理運営する学生専用マンションへの入居を決めたのだ。
自分の身近にいる人たちは皆それぞれに自立し生きている。
ましろもまた、大学進学と同時にこの学生マンションへと入居した。
静はもちろん、そして誰より、煉矢の存在は大きかった。
彼は高校の時から一人暮らしをしている。
その姿を見て、自分もまた、これを機に、自分の足で立ちたいと考えるようになった。
決意するまでには勿論かなり迷ったし悩んだ。
なにより、兄と別れて暮らすことはひどく寂しさと心細さを覚える。
しかしいつまでも兄の傍から離れないわけにはいかない
これをひとつの節目として決めたのだ。
新しい、今日から始まるこの場所での生活に、不安がないわけではない。
ただそれでも、乃亜の表情は明るくまっすぐ前を見ていた。
「なんだか、懐かしいって思っただけです」
「懐かしい?」
「兄さんと暮らし始めた日を思い出して……」
「ああ、そういうことか。
……確かにな。シチュエーションは似たようなものか。
ま、あの時はかなり緊張というか、気を張ってたし、心情はだいぶ違うけどな」
「えっ、兄さんそうだったんです?」
「そうだぞ?お前がちゃんと安心して暮らせるかとか、
色々考えていたし、多少なりとも不安はあった」
「……私も不安はありましたが、兄さんもだったんですね」
「顔に出にくいのはお互い様だったな」
「ふふ、はい、そうですね」
互いに顔には出さないまでも不安を抱えていたらしい。
懐かしみつつ笑う二人の間に、今はそういったものはない。
兄と暮らした期間は6年間。
その中で、兄との関係も、より家族として、自然な形になっていったように感じている。
兄だけは、たとえどんなことがあっても味方でいてくれ、
また、決して自分を嫌わないという、絶対的な信頼がある。
駐車場を出て受付などのある建物の前に立つ。
白く塗られた壁とフェンスに囲まれた広い敷地と外を繋ぐ基本唯一の道だ。
オフホワイト壁、入り口の横には、大きな桜の木がいくつかの花を咲かせていた。
入口横の金色に光るプレートには『Dormitory 暁』と黒い文字で書かれていた。
「そういえばこういう名前だったな……」
「え、兄さん住んでましたよね?」
静自身もこの学生マンション出身者である。
暁天総合大学付属高校に入学と同時に、施設を出てここに移り住んでいたのは確かだ。
自身が3年間住んでいたことも、静が乃亜の一人暮らしを許可した一因だった。
「まぁ、なんというか、皆だいたい、
学生マンション、学マン、そんな呼び方しかしなくてな……」
「ああ……」
「正直あまりここの正式名称を意識することはあまりなかった。
住所を書く時は必要だから忘れることはないんだが、
あまり印象にないというかな……」
学生ならではの話かもしれない。
二人は入り口であるガラスの押し扉を押した。
黒いラインの入った黄色のタイル張りの床に白い壁の明るい空間だ。
右手側には宅配ボックスや、各部屋ごとのポストが並んでいる。
左手側には、マンション内のルールやお知らせなどが張られた掲示板、
そして受付と書かれた窓があった。
カウンターには呼び鈴や、折り紙で作られた人形、
小さなサボテンの鉢植えなどが置かれていた。
「すみません、今日から入居の斉王ですが」
静が受付窓から中に声をかけると、少ししゃがれた男性の声がした。
受付窓の横の扉が開き、中からは藍色のTシャツをきた筋肉質の男性が姿を見せた。
日焼けした肌に白いものが混じったスポーツ刈りの髪。
しかし明るい笑顔はどこか薬師を思い出させる雰囲気があった。
「いらっしゃい。ようこそ、ドミトリー暁へ」
「あ、今日からお世話になります、斉王乃亜です」
「おう、話は聞いてる。
見学の時には顔合わせできなくてすまなかった。
俺はこのマンションの管理人、矢島武司だ。
なにか困ったことや分からないことがあれば気軽に声をかけてくれ」
「はい、よろしくお願いします」
礼をすると矢島はうんうんと頷いた。
以前一度ここに見学に来た時、案内してくれたのは女性だった。
その時も、本来管理人は別にいるが、
どうしてもその日は所用があって外出しているとの話だった。
矢島は静にも視線を向けた。
静もまた頭を小さく下げる。
「妹は一人暮らしが初めてなので、不慣れなこともあるかと思いますが
よろしくお願いします」
「ああ、大事な妹さんは責任もって預からせてもらう」
「ありがとうございます。
ああ、荷物を運び込むのに、台車をお借りできると聞いているんですが」
「おう、少し待っていてくれ。持ってくる」
矢島はそういって管理人室へと戻って行った。
それと共に、奥の半透明な自動ドアが音を立てて開き、反射的にそちらに目を向けた。
「乃亜、静!」
「ましろ!」
駆けこんできた姿に乃亜は思わず表情がほころんだ。
先ほど到着するタイミングでましろに連絡を入れていたのだ。
引っ越しの手伝いをすると話してくれていたため、
それに則っての連絡である。
「いらっしゃい!嬉しいな、今日から同じマンションだ」
「はい、私もとても心強くて、嬉しいです」
「ましろ、すまないが少し気にかけてやってくれ」
「うん、任せて。というか、言われなくてもたぶん気にすると思うし」
「ま、それもそうか」
それはどういう意味だろうか。
静に納得されるのもなにか腑に落ちない。
「そういえば、煉矢は?結局無理だったんだ?」
「あ、はい……。どうしても日付をずらせない打ち合わせが入ったとかで」
今日は日曜であるので本来は彼も手伝いにくると言っていた。
しかし先々週、彼の担当している案件の顧客の都合で打ち合わせが急遽入ったらしい。
そのことを話した時の彼は相当に申し訳ない様子を見せていた。
聞いているこちらがかえって申し訳なくなるくらいだ。
「もともと荷物も少ないですから、大丈夫だとお伝えしてていたんですけど……」
「いや、乃亜の引っ越しだし、荷物多い少ない関わらず来たかったんでしょ」
「まぁアイツのことだからそうだろうな」
「う……」
彼と正式に恋人としての関係が始まって一年以上。
ましろや静にそういわれて言い返せないくらいには、
彼からの愛情は深く感じ取れている。
乃亜が何となく居心地が悪く身体を揺らしていると、がちゃりと扉の開く音がした。
管理人室の扉が開いた音だった。
矢島が折りたたまれた台車を抱えて戻ってきたのだ。
三人の揃う姿を見て、矢島は目を丸くした。
「おう、雪見か」
「どーも、矢島さん」
「そういや、もともと知り合いって話だったもんな」
事前見学の際に知り合いがいるとしてましろの名前を出していたのである。
台車を床に置き、矢島は乃亜に声をかけ受付へと回る。
茶封筒を窓越しにカウンターに引っ張り出し、
中からカードキーと普通の金属製の鍵をそれぞれ取り出した。
「まずこのカードキーがこの正面エントランスの入り口の解除カードだ。
出入りはこのカード使って、壁のタッチパネルに接触させてくれ。
何人かで出入りするときも、面倒でもタッチするのが基本だ。
入退室を把握しておくことも大事な話だからな。
こっちの鍵の方は部屋の鍵だ。
お前さんはB406号室。B棟、一番奥の棟の4階の角部屋だ」
「ちなみに私もB棟の4階だから、あとで部屋番号教えるね」
「はい、ありがとうございます」
「見学の時に見たと思うが、雪見、後で案内してやってくれよ」
「もちろん、そのつもりです」
どうやら知り合いと言うことを考慮して近い部屋番号にしてくれていたらしい。
乃亜にとっても静にとっても、ましろが近くにいるというのは安心感がある。
「それと、中に入れるのは基本的にはここの住人だけだ。
保護者であっても、学生本人からの事前申請ありきで、
管理人室で記帳してもらう必要があるから、悪いがそのつもりでな」
「ええ、承知しています。
そのくらいのほうが、こちらとしても安心できます」
矢島は頷いてカウンター奥に置かれたバインダーを取り出す。
一枚の入館管理表と書かれた用紙が張られており、
そこに日時と氏名、学生名などを書けるようになっている。
静は矢島の指示の元それに記入する。
それを見届け、首から下げる入館証と書かれたカードを静に渡した。
「退室するときに返却してくれ」
「分かりました」
「あとの細かい注意はこの封筒の中に入ってるから、一度は目を通しておいてくれよ。
ああ、あとスマフォの専用アプリはインストールしたか?」
「はい、インストールしてます」
「あれにも同じことが書いてるからな。
それ以外で分からないことは、俺や雪見に聞いて構わない。
いつでも声をかけてくれ」
「はい、色々ありがとうございます。これからよろしくお願いします」
「おうさ」
矢島はにかりと笑って管理人室へと戻って行った。
一見少し強面だが笑う姿からは面倒見の良さが感じ取れる。
乃亜は少しホッとした。
「一度駐車場に戻って荷物を運ぶか」
「はい」
「あ、私も行くよ」
三人はそう話しながら一度駐車場へと戻った。
ドミトリー暁は暁天総合大学が運営・管理する学生マンションである。
所属している大学生や、付属の高校に通う高校生を対象としており、
全3棟に別れ、1フロア6部屋から8部屋存在している。
各部屋は一般的な1Rで、バス・トイレ、それにミニキッチンが完備されており、
学生マンションと言う特性柄、ベッドや冷蔵庫、電子レンジ、エアコン、
学習机に椅子といった大型家電・家具についてはあらかじめ部屋に設置されている。
また、このマンションの特色として、
各フロアには、共用のダイニングキッチンが用意されており、
各フロアに住む学生たちは、フロアメイトとして、共に生活するのである。
また、住居以外にも、共用施設として
トレーニング室や学習室、そして芸術学部向けの防音室なども配備されている。
乃亜がこのマンションに入居を希望した理由の一つが防音室の存在だ。
大学でも引き続きヴァイオリンを続けることにした乃亜にとって、
住居のごく近いところにそれがあるのは嬉しい。
エントランスのある中央棟を向け、ましろの案内で敷地内を進む乃亜と静。
乃亜はキャリーケースとヴァイオリンケースなどを担ぎ、
静はそれ以外のダンボール3箱程度を台車に乗せて押す。
ガラガラと近くにいると少々の喧しさを感じながら、
マンションの敷地の中をぐるりと眺めた。
静はあまり変わっていない景色にどこか表情をほころばせていた。
「静はどのあたりの部屋だったの?」
「俺はC棟の二階だった。共有ダイニングのない棟だな」
「静らしいね」
「まぁな」
それを聞くと乃亜は苦笑いを浮かべるしかない。
当時高校生の兄にはあまり余裕がなかったのは想像に難くない。
施設にいた自分の元に通ったり、卒業後に一人暮らしをすべく、
目まぐるしいほどの努力と準備をしていたはずだ。
「煉矢はここじゃなかったんだよね」
「あ、はい。通常の賃貸に住んでいたそうです」
「あいつが一人暮らしをしていたと聞いたときは心底たまげたな……」
完全に事後報告だったらしく、静はどこか遠い目をした。
左手に中庭を眺めながら雑談しつつ最奥のB棟へ向かう。
左手の中庭はただ広い芝生が広がり、その中央には大きな欅の木が立っている。
また端には花壇が供えられ、あちこちにはベンチやカフェテーブルなどが並ぶ。
天気のいい日には外で休憩するのも心地よさそうだ。
やがてB棟の足元に来る。
1階には住居スペースはなく、ただ広い多目的室が二つあるだけだ。
広い窓が一階の廊下に光を射しこませていた。
「ちなみに各棟に出入りするときもカードキーのタッチがいるからね。
カードキーは財布とか、スマフォケースとか、基本持ち歩きするものに入れたほうがいいかな。
まぁ、カードキーがないと出られないし、そう忘れて出ることはないと思うけど」
ましろに続いて乃亜もカードをタッチしてB棟の中に入る。
正面にあるエレベータを使い、4階まで上がっていく。
短い時間の移動を終えてチンと軽快な音を立ててエレベータが止まる。
エレベータのドアが左右に開かれると、
なにか話し声が聞こえてきた。
男性と女性、それぞれ何人かいる話声だ。
「あ、まだいるみたいだね」
エレベータを降りるとすぐ右側は徒歩用の階段になっていた。
また、右奥の壁には「ランドリーコーナー」と案内板がある。
洗濯機や乾燥機は共有のものがあると聞いていたためそれだと察した。
だがいまはそれより、左側だ。
エレベータ正面は壁だが、すぐ道なりの廊下側には室内がみえる窓がある。
「ここが共用ダイニング」
ましろが告げるのと同時に、ダイニングの室内にいた四人の男女がこちらに目を向けた。
少し緊張が走る乃亜を後目に、ましろが手を上げて彼らに挨拶した。
そのうちの一人、瑠璃紺の短髪に褐色の瞳の青年が、驚いたような顔をして
ダイニングの透明なアクリルドアを押して出てきた。
「静じゃん?!なんでいんの?!」
「隼人少し声を落とせ……」
隼人。
その名前は乃亜も聞き覚えがとてもある。
たびたび、ましろや静の話にも出てくる青年だ。
「妹が今日から入居なんだ。その付き添いと手伝いにな」
「あ、ああ!話してた子か!なんだ、ウチ入るんだ?!」
「そうだ。仲良くしてやってくれ」
静の視線が自分に落ちる。
隼人はまじまじとこちらを見ていたかと思うと、意外そうに瞬きした。
「髪の色とか目とかは静に似てるけど、
でも静と違って大人しそうっつーか、素直そうっつーか、純粋そうっつーか」
「隼人、概ねその感想はあってるから、
そうじろじろ見るなよ、驚いてるから」
「あ、悪い。えーと、俺、達城隼人。ましろと同じ二年生で、体育学科!」
「あ、えと、斉王乃亜です。
隼人さんのことは、ましろや兄さんからもよく聞いてました」
「なんかろくでもない話されてる気がする!
って、隼人"さん"なんて柄じゃねーし、隼人でいいよ!
よろしくな、乃亜!」
「ふふ、はい。よろしくお願いします」
聞いていた話通りに、とても気さくで明るい雰囲気に笑みがこぼれた。
彼もここにいるということは、このフロアに住んでいるのだろう。
「他のみんなにも紹介したいけど、先に荷物片づけてこようか」
「ああ、その方がいいだろう。
荷物を片してから、ゆっくり交流すればいい」
「はい。それじゃ、ええと、隼人、また……」
「おう!またな!」
室内でこちらの様子をうかがっていた三人にも会釈をすると、
桃色の混じる茶色の髪をポニーテールにした女性と、
亜麻色のショートカットの女性が笑顔で手を振ってくれた。
もう一人残っていた灰色がかった青髪の青年も控えめながら会釈してくれた。
どうやら皆、優しそうな人でいよいよ安堵した。
乃亜の部屋は一番奥の角部屋。
初めて施錠を解除すると、新しい部屋の匂いがした。
室内の明かりをつけて中にはいる。
1Rの部屋ではあるが、ミニキッチンは廊下に面しており、
一応寝室側とは空間が離れており、ドアがないだけでほぼ1Kの間取りに近い。
玄関脇の左手にはトイレ、右側には脱衣所兼洗面台と、その奥には風呂場がある。
トイレが独立している点はありがたいポイントだった。
奥の約6畳ほどの空間。すでにパイプベッドが置かれており、
それだけでほぼ半分が埋まっているようなものだが、
もともと住んでいた自室もさして変わらない広さだった。違和感はない。
ベッドの上には、事前に配送しておいた布団が梱包された状態で置かれている。
「どの部屋の間取りも同じみたいだね」
「そうだな。俺も似たような間取りだった気がする」
「そうなんですね」
ダンボールを室内へと運ぶ兄の言葉に、なにか胸がざわつく。
今日からここで一人で暮らす。
しかしそれを、ましろは去年、兄は高校の時から経験している。
そして煉矢は、ここよりもっと、ひとりでの生活ということを
余儀なくされる場所で暮らし続けていた。
そんな場所に、ようやく乃亜も立った。
初めて一人暮らしを考えたのは、三年前のアメリカでの日々。
いつか願っても構わないだろうかと考えたのが最初だった。
自分の尊敬する人たちが歩いていた道を、
ほんのすこしだけ模倣させてもらい、自分もいつか。
新しい日々の始まり。
不安がないわけがない。
敬愛する、自分をずっと守ってくれていた兄から離れての生活だ。
しかし、それでも乃亜は前を見ている。
心から尊敬する人たちの傍に、いてもいい自分でいられるように。
乃亜はそう思いながら、ガランとした部屋の窓の向こう、
広い春の空を見た。
第二楽章開始。
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★毎週木曜11:30・日曜19:00頃更新予定★
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★アルファポリスでも連載中★
https://www.alphapolis.co.jp/novel/598640359/12970664




