第51話:焼肉パーティ
上質の牛肉が手に入ったので焼肉パーティを行うことにする。せっかくなので孤児院でやることにした。焼肉そのものは日本を参考にして創った世界ということで、この世界の人にも馴染みがあったが、パーティというか屋外でやるという感覚はないようだ。剣と魔法の世界で治安もあまりよくないし、森林浴を楽しみながらなんていうのは無理なのだろう。
「わざわざ炭火で焼くなんて、あなたの世界ではずいぶんと面倒なことをするのね」
この世界では魔石を使ったコンロがあるので、炭火で料理をすることはほとんどない。
「炭火からの遠赤外線のおかげでうまみが中に閉じ込められて、それでいて中まで火が通るんだよ」
「遠赤外線?よくわからないけど、美味しく焼けるのなら楽しみね」
といっても俺もたぶん炭火で焼いた肉と、ガスコンロで焼いた肉を食べ比べてもわからないと思うが。いいんだよ、こういうのは雰囲気が重要なんだ。しかし、実際には雰囲気どころではなかった。なぜなら肉を焼き始めたとたんに
「ジャック、まだそれは焼けてないから食うな!」
「アッシュ、一人一つずつだろ。二つ持っていくな!」
肉のとりあいになった。小説での定番どおり、この孤児院もお金に余裕があるわけではない。最近はジャックがかなり稼いでいるみたいだが、それでも肉を食べられる回数はとても限られている。そんな状態のところで焼肉パーティなんてものをやれば、こうなるのは当たり前だった。
「アキ、早く焼けよ」
「アキ、これもういいだろ?」
「アキ、この肉がうまかったから、こっちを焼けよ」
さすがに焼肉を子供にやらせるのは危ないということで俺が焼いているのだが、子供達からの注文がもの凄い。
「すげーうめーな、この肉。肉ってこんなにうまかったか?」
「こんな美味しい食べ物初めて!」
なにしろ15階層のオークや16階層のミノタウロスからドロップした肉だからな。8階層とは違うのだよ8階層とは。しかし、こんなもの食べさせてしまって良かったのか?でも美味しいものを食べてほしいというのもあるし、たまにオークやミノタウロスを討伐しにいけばいいか。なんにしても子供達も喜んでいるみたいだしな。
「やっと一段落したか」
「アキ先生、お疲れ様」
「ステラも食べたか?」
「うん、信じられないぐらい美味しかったよ。昨日のオークからドロップした肉も凄かったけど、ミノタウロスからドロップした肉はそれ以上だね」
「なにしろ16階層の牛肉だからな」
俺とステラの話を聞いていたのか、少し離れたところに座っていたジャックが近寄ってきた。
「なぁアキ、お前ら16階層まで行ったのか?」
「そうだよ。今回の肉は15階層のオークと、16階層のミノタウロスのドロップ品だな」
「ダンジョンって11階層のボスが最後じゃなかったのか?」
「いや、それはフロアボスで途中のボスだよ。ラスボスはもっと深いところにいるよ。たぶん20階層ぐらいにいるんじゃないかな」
「じゃあステラも16階層まで行っているのか?」
「そうだよ。もうレベル24だし」
ステラがドヤ顔でジャックに自慢している。
「すげーな、レベル24なんて。しかも必中の聖女って呼ばれているんだろ。まさかここまで差を付けられるとはな。」
「幸運にもアキ先生に雇ってもらったからね」
「いや幸運って、事前に俺たちに...いやそうだな。まぁ俺たちは8階層あたりで活動するよ。それでも十分な収入は見込めるし」
なぜかジャックは途中で反論をやめた。何をいいかけたのか気になったが、ソフィアさんがやってきたのでその話を続けるのは止めた。
「アキさん、このような食事会を開いてくださってありがとうございます」
「ドロップした肉が余っただけですよ。せっかくなら皆で食べた方が楽しいですし」
「アキはソフィアに良いところをみせようとしているだけだよ」
久しぶりにレオンのソフィア愛が炸裂しているな。なんて呑気なことを考えていると
「そうなの?」
ステラの低い声が聞こえてきた。まるでフローラさんのようなプレッシャーを感じる。レオンおまえのせいだぞ何とかしろよ、と思いながらレオン達のいたところを見ると、ジャックもレオンも離れた席に避難している。ずるいぞ!と心の中で叫びながら、ステラに誤解であることを説明しようとしたのだが。
「そういえば、アキさん紹介しますね。私の婚約者のカイトです。メテルプスで司教の見習いをしているのですが、ちょうどスターローナに来ていたんです」
「初めましてアキさん、カイトです。ここの孤児院に良くしてくださってありがとうございます」
「いえ、ステラには助けてもらっていますし、どうぞ焼肉パーティ楽しんでください」
そうか、ソフィアさんには婚約者がいたのか。
「アキ先生、残念だったね」
「何がだよ?」
「狙っていたんじゃないのソフィアを。わざわざ授業なんかもやったりして」
「そんなことはないよ。授業をやったのは純粋に子供達のため」
「そういうことにしておいてあげるね」
なぜかステラはすごく嬉しそうだった。実際のところ授業を続けているのは子供達のまなざしに負けたからだが、言っていることに間違いはないはず。残念だったのは確かだが。
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Side アリサ&フローラ
「ねぇフローラ、こんな美味しい肉をギルドから市中に卸して大丈夫なの?」
「いえ、たぶん大混乱になるかと思います。じきにギルドマスターに要望が殺到するんじゃないかしら」
「そうよね。こんな美味しい肉なんて食べたことがなかったし」
「どっちにしても、あんな大きな魔石が次々と出てきているんですから、ギルドマスターが大変なことになるのは確実です」
「フローラもなかなか手厳しいわね」
「いいんですよ。少しはマスターにも苦労してもらわないと。それに要望が殺到すれば報酬の額も上がりますからね」
「さすがフローラね。やり手だわ」
「やり手なのはアリサも同じでしょ。ちゃんと貸しをアキさんに作っているんですから」
「ステラには負けるけどね」
「といっても負けるわけにはいかないでしょ」
「当たり前よ」
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