第33話:フロアボス討伐
翌朝も10階層で討伐を続ける。少し歩いたところでいつもどおりの3匹のゴブリンと遭遇する。リヤカーを盾に魔物に近づいたところで、まずはステラが長距離攻撃の弓矢を放つが、なんとアーチャーゴブリンの放った弓矢で撃ち返された。しかも魔物を確認しようと、顔をのぞかせると、眉間を狙って攻撃してくる。
「えっ?弓矢を弓矢で撃ち落とすとか、どんだけ精密な攻撃ができるんだ?」
普通に考えたらそんなの不可能だろう。いや魔術とかスキルは普通に考えたら不可能なものばかりだった。
「しかも確実に急所を狙ってくるし」
とりあえずアースウォールで壁を作って、リヤカーを後衛のマジックゴブリンの頭上に召喚する。これでマジックゴブリンは下敷きになって討伐できた。
「俺が囮になるので、ステラは反対側からアーチャーゴブリンに攻撃をして。アリサは隙を見てゴブリンナイトをよろしく」
まずアースウォールを解除して俺が囮役としてゴブリンの方に歩き出す。するとアーチャーゴブリンが弓を放ってくるので、スラッシュで応戦する。そのタイミングでステラが立ち上がってアーチャーゴブリンに対してカーブショットの弓で攻撃する。ゴブリンナイトは俺のスラッシュがアーチャーゴブリンに当たらないようにブロックするが、ステラのカーブショットには対処できず、アーチャーゴブリンにダメージが入る。ここでアリサが突撃してゴブリンナイトとアーチャーゴブリンを討伐した。
「アーチャーゴブリンはスキルスクロールをドロップしていたよ」
「なにか筒のようなものが描かれていますね。なんでしょう?」
「このスキルスクロールは、きっと遠距離から高精度な攻撃ができるようになるものだろうな。なずけてスキル13といったところかな?」
「なんでスキル名が数字なの?」
「元の世界では精密攻撃といったら13なんだよ」
「そしたら12とか14は何なのよ?」
それは自分にもわからないです。ちなみにスキル13という名前は却下された。数字では何のスキルかわからないというのが理由だった。これ以上ないぐらいわかりやすいと思うのだが。
「アキ先生、精密攻撃のスキルスクロールは私が使ってもいい?遠距離向きみたいだし」
「そうだな。弓には最適なスキルだしステラに使ってもらうか」
ステラがスクロールを開くと、光がステラに吸い込まれていった。
「ステラ、精密攻撃のスキルはどんな感じ?」
「狙うと決めた場所がすごくはっきりと意識できるようになる感じ。でも近くの目標だけで、遠くの目標だと意識できない」
「レベルが上がると遠くの目標でも意識できるようになるのかもね」
なるほど。いきなり遠距離の精密攻撃ができるようになるわけじゃないのか。
「スクロールも取れたし、11階層に行ってみないか?」
「えっ、11階層ってボスがいた階層よね?以前に討伐されたはずでは?」
ここで復活しているかもしれないと言っても仕方ないか。
「討伐済みなら問題ないよね?ひょっとしたら、なにか貴重な物が落ちているかもしれないよ」
「本来ならそんな時間的な余裕がないはずなんだけど、まぁ10階層に泊まっているのだし1回ぐらい見学するのもいいのかな?」
「アリサさん、11階層はどんなところなんですか?」
「ボスがいた階層なのよ。他と違って入口に門があって、中にはゴブリンキングとその手下みたいなのがいたらしいわ。今はもう討伐されているけど。」
ステラがアリサに11階層について質問をしたが、アリサも実際には行ったことはないみたいだな。
「アリサさんはなぜ知っているんですか?」
「昔、ギルドマスターが大規模な体制を組んで11階層を踏破したのよ。私は参加しなかったけど、そのときにはいくつかの階にベースキャンプを設営したらしいわ。その維持のために相当なお金を使ったみたいね。」
11階層へ行く階段の場所はわかっているので、そこを下って11階層に出る。するとこれまでの森や草原と違って地下道みたいなところに大きな扉が設置されている。これを開けるとフロアボスの部屋というわけだ。こんな大きな扉を開けようとしたら凄い力がいるのではないかと思ったが、扉を触ったら自動ドアのように勝手に開いた。
扉の向こうは真っ暗だったが、中央に通路のようなものがあり、両側に装飾の付いた円筒が並んでいる。手前から順々に円筒の上にある青いランプが点灯されていく。こういうイルミネーションは、ボス部屋ならではだな。
通路の奥には、王座のような椅子があり、そこにおそろしく大きな体をしたゴブリン、いやゴブリンキングがいた。右手に大きな剣、左手には大きな杖を持っている。どうやら魔法と剣の両方が使えるようだ。周囲には5匹ほどのコボルトに乗ったゴブリンナイトがいる。
「えっ?ボスは討伐されたハズでは?なんでまだいるの?」
「ここまで来たら討伐するしかないので進みますよ」
中央の通路を奥に歩いていくと、真ん中あたりに来たところで、
「ガァー!」
ゴブリンキングが咆哮したところで、戦闘が開始される。コボルトに乗ったゴブリンナイトが攻撃をしかけてきた。10階層のゴブリンナイトはアーチャーゴブリンとマジックゴブリンのための防御のみだったが、この階層では積極的に攻撃してくる。しかもコボルトに乗っているので動きが速い。ゴブリンキングはファイアボールを撃ってくる。しかも10階層のマジックゴブリンが撃っていたファイアボールよりも段違いに大きい。
「ステラはリヤカーの中からゴブリンキングを攻撃して牽制してくれ」
コボルトに乗ったゴブリンナイトをまずは討伐したいのだが、ゴブリンキングからのファイアボールが邪魔で攻撃しきれない。それでもステラからの攻撃で、ゴブリンキングからのファイアボールはリヤカーに集中するようになった。
「アリサ、背後はこちらで守るので、まずはゴブリンナイトを討伐しよう」
「了解!」
ゴブリンナイトの攻撃からアリサの背面を守りながらスラッシュを撃って、アリサとゴブリンナイトの戦闘を援護する。だが、2つのペアを討伐したところでゴブリンキングがこちらに攻撃するようになった。ゴブリンキングからのファイアボールは防御できるが、その隙にゴブリンナイトに切りつけられてしまう。
「こちらにヘイトが移ったので、ゴブリンキングを攻撃しよう。ステラ、俺たちに近づくゴブリンナイトを弓矢で牽制してくれ」
ゴブリンキングからのファイアボールを避けながら、ゴブリンキングに突撃する。1対2ならと思ったが、巨体のくせにゴブリンキングは俊敏な動きでこちらからの攻撃を避けつつ、剣で応戦してくる。しかも合間にファイアボールを撃ってくるので、どうしても隙ができて剣の攻撃を受けてしまう。
「このままだとジリ貧ね。」
「リヤカーに戻って、中から攻撃するしかないか」
一旦、リヤカーに戻ってリヤカーの中から攻撃するようにする。コボルトに乗ったゴブリンナイトが攻撃してきたので、3人で一斉に攻撃して討伐したが、状況を把握したのかゴブリンナイトは距離を取って攻撃をしかけてこなくなり、ゴブリンキングからのファイアボールの攻撃だけになる。ステラの弓矢も、俺のスラッシュもゴブリンキングには避けられてしまう。
「あんな巨体なのに、あんな素早く動けるとかさすがキングだな。」
「リヤカーの中からだと向こうから近づいてきてくれないと討伐できないわね」
「どうするアキ先生?」
不意打ちの攻撃じゃないとゴブリンキングにダメージを与えられそうもないな。ここは裏技的にリヤカーの特性を使うしかないか。
「合図をしたら、ゴブリンキングの首筋の後ろに移動するので全力で攻撃してくれ」
「「えっ?どうやって」」
「3,2,1、召喚」
リヤカーに生き物が乗った状態で送還はできないと神に設定してもらったが、召喚できないとは言っていない。また召喚した状態では召喚できないとも言っていない。召喚した状態で、さらに召喚するとそのままリヤカーは俺たちを乗せたまま、瞬間的にゴブリンキングの首筋の後ろに移動した。
「いまだ!剣を突き刺してくれ」
アリサの剣と俺の剣がゴブリンキングの首筋に刺さり、ステラの弓矢も首筋のど真ん中に刺さる。このままだとリヤカーが落ちてしまうので、元の場所に再召喚した。さすがのゴブリンキングも首筋は弱点だったようでそのまま消滅した。そして残りのコボルトとゴブリンナイトも一緒に消滅した。
「アキ、これはどういうことかな?」
「アキ先生、なんですか今の?」
「あー。召喚場所を指定できると言ったじゃないか」
「だからって瞬間的に移動できるなんて思わないでしょ」
「アキ先生、瞬間移動なんて常識外にもほどがあるよ」
「まぁまぁ、まずはステラ、治癒魔法をお願い。ゴブリンキングからの攻撃をかなり受けてしまったし」
「もう、しかたないな」
ステラはなにか言いたそうだったが、治癒魔法をかけてくれた。
「そしたらドロップ品を確認しようよ。あとスクロールもね。」
治癒魔法の後はドロップ品とスクロールをチェックすることで誤魔化した。さすがにフロアボスだけあってドロップした魔石はとても大きい。ドロップ品はミスリルの剣だった。スクロールもドロップしていて青色をしている。しかもスクロールの大きさがこれまで取得したものより段違いに大きい。これはより強力なスキルということなのだろう。スクロールには走る人の絵が描かれている。
「走る人の絵ってことは俊敏性向上のスキルかな?」
「そうね。私が取得したときと絵が同じなのでそうだと思う。これだけスクロールが大きいということは効果はもっと高いと思うけど」
「つまり俊敏性向上(大)ということか。誰が使うのがいいかな?」
「私はすでに俊敏性向上のスキルを持っているんだけど、できれば譲ってほしい。私は動きの素早さが命だから」
「そうか。まぁアリサが強くなってくれるなら問題ないし使ってくれ」
「ありがとう。譲ってもらっていまさらだけど、アキ達は大丈夫なの?なにしろボスのドロップ品なんてとても貴重なものだけど」
「その心配はいらないよ。たぶん明日にはリポップしていると思うので、周回しよう」
「「はぁ?」」
33話までお読みいただきありがとうございます。感想などお待ちしています。




