第29話:ソロ合宿3
アリサさんが合宿に合流することになった。大きなリュックを担いでいるぐらいだし、完全に泊まれると見込んでここまで来たのだろう。
「そういえば、リュックを担いできたみたいですが、何を持ってきたんですか?」
「もちろん飲み物と食料よ。数日過ごすなら重要でしょう。リヤカーで預かっておいてね。」
「確かに腹が減っては戦はできないですからね。」
「そういえば、アキはこのリヤカーをここまで曳いてきたの?こんな大きなリヤカーを曳いて10階層に来るなんて無理だと思うけど。しかも荷物も大量に積んでいるみたいだし」
「このリヤカーは荷物を積んだまま送還、召喚できるんですよ」
「へっ?そんなハズないでしょ。召喚士が召喚できるのは魔力で構成された魔物のみ。物を召喚できるのもおかしいけど、積んである荷物がそのままなんてありえないから!」
「このリヤカーは特別なんですよ」
「攻撃力無効も信じられなかったけど、それだけじゃないなんて。まぁいいわ、あまり詮索しないでおいてあげる」
「細かいことはよしとして、アリサさんはどうやって魔物を討伐しているんですか?」
「こんな非常識なアイテムを持っていることが細かいことのわけないでしょ。まぁその話はあとにして討伐の方法ね。剣技のスキルと、俊敏性向上のスキルがあるのよ。だから素早く近づいて剣で討伐しているわ。アキはどうなの?」
「私はリヤカー...いやスラッシュとファイアボールの魔術と、連続攻撃のスキルの組みあわせですね。」
同じ10階層で活動するということなので一緒にゴブリンを討伐することにした。といってもいつもやっているリヤカーをゴブリンの頭上に召喚するのは戦い方としてはとてもかっこ悪いからナシだ。やっぱり美人の前ではかっこよく魔術か剣を使って討伐したいからね。
しばらく歩いたところでゴブリンのグループが現れる。頭上での召喚はしないが、盾として使うのはありだろう。召喚してリヤカーを盾にゴブリンのグループに近づく。十分に魔術で狙える場所まで来たところで、スラッシュの連続攻撃を前衛のゴブリンナイトにしかける。連続攻撃のすべてを避けることはできず、ゴブリンナイトにダメージが入る。
「行きます!」
といってゴブリンナイトに突撃しようとしたのだが、
「速っ!」
ステラさんが自分を追い抜いて、素早くゴブリンナイトのところまで走り、目にも止まらない剣の攻撃で討伐してしまう。アーチャーゴブリンとマジックゴブリンの攻撃を避けながら、ファイアボールの連打で両方のゴブリンを弱らせて、あとは剣で討伐する。
「俊敏性向上のスキル、すごい効果ですね。」
「取得してからも、かなりレベルアップしたからね」
その後もゴブリンを討伐したが、スクロールはなかった。魔石は等分に分けることにした。見晴らしのいい場所をこの日の宿泊場所にする。
「そういえば、何日ぐらい滞在するつもりなんですか?俺は今日を含めてあと4日ぐらいの予定ですけど」
「アキに合わせるわ。あと4日ということは3泊ね。明日は私が持ってきた食材を提供するわ。今日はダンヤドの食事ということで」
「まぁ食料はたくさん持ってきたので大丈夫ですが。味は期待しないでくださいね。」
「そもそもダンジョンで泊まれることそのものが異常なことだから。でも前回に泊まった時も料理の味は悪くなかったわよ。」
「素人料理ですが、お口にあったなら良かったです。」
大学時代には下宿で一人暮らしで節約のために自炊していたからな。といっても本格的な料理なんてものではなくて、炒めるか煮るかぐらいだったが。
いずれにしても料理でチートは無理そうだな。こんな素人料理でも異世界では宮廷料理扱いとかだったら良かったのに。
□◆□
ダンジョン内に泊まり込んで5日目、同じように10階層でゴブリン討伐だ。順調にゴブリンを討伐していく。午前中に4グループを討伐できた。昨日は6グループ討伐してスクロールがでなかったので、そろそろスキルを持っているゴブリンが現れるかもなと思いつつ草原を歩く。すると弓矢が飛ぶ音が突然聞こえてきた。
「アキ、伏せて!」
アリサさんからの指示で、すぐに地面に伏せたが肩に攻撃を受けてしまった。
「長距離攻撃のスキルを持ったゴブリンよ」
「ゴブリンは見えますか?」
「草原に隠れているから見つけられないわ」
「リヤカーを召喚するので隠れましょう」
まだこちらから見えない距離から弓を撃てるアーチャーゴブリンがいたらしい。こちらからは見つけられないので、相手の的になってしまう。すぐにリヤカーを召喚して盾にして攻撃を防ぐ。ただこのまま持久戦になって暗くなってしまえば、こちらからはなにもできなくなってしまう。
「囮になるのでゴブリンを見つけてください」
攻撃を受けたときの弓矢の飛んできた方向に歩く。射程が倍ぐらいある想定で隠れていると思われるところまで近づいたら草原のところどころにファイアボールを打ってひょっとしたら攻撃されるかもと思わせる。そしてわざと後ろ向きになると、すかさず弓矢で攻撃をしかけてきた。
「そこね!」
アリサさんがすばやくゴブリンに近づき討伐してくれた。これでやっかいな奴を討伐できた。あとは二人でマジックゴブリンとゴブリンナイトを討伐して完了だ。ドロップしたスクロールには遠くの標的が描かれている。予想通り長距離攻撃のスキルらしい。自分が使ってもいいのだが、長距離攻撃といえば弓矢だしこれはステラのためにとっておこう。
「アリサさん、この長距離攻撃のスキルスクロールはもらってもいいですか?」
「私は遠距離攻撃の魔法は持っていないのでアキが使っていいわ」
その後も4グループのゴブリンを討伐したが、さすがに1日2個のスクロールはドロップしなかった。
「アキ!今日は私のリュックから食材を提供するわよ!」
どの料理にするか、食材を見て決めようと思っていたのだが、つまみ系の食材ばかり並んでいる。
「アリサさん、飲み物っていってましたけど、これお酒じゃないですか」
しかも飲み物は酒しかもってきていない。
「数日過ごすなら重要でしょ。酒なしで合宿なんて修行じゃないんだから」
「ちゃんとした食料を持ってきたのかと思っていましたよ」
「だってダンヤドは食事つきでしょ。持ってくるならお酒しかないわ。」
「昨日は飲んでいなかったみたいですが」
「さすがに信じ切れていないというか、本当に安全なのか不安もあったし」
「まぁ少しぐらいのお酒ならいいかもしれないですね」
そう。少しぐらいのお酒ならよく眠れるようになるかもしれないし、いいと思う。でもアリサさんはとってもお酒好きだったらしい。最初の印象では目がキリっとしていて凛々しい感じだったのだが、何杯もお酒を飲んで酔ってしまい、残念な人になってしまうのだった。
もう少し警戒しろよといいたい。いろいろな意味で。
29話までお読みいただきありがとうございます。感想などお待ちしています。




