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第13話:2階層

その後、一週間ほど1階層に通った。だいたい一日あたり二人で150匹ぐらい討伐できるようになり、レベルも順調に上がっている。


「今日も体が光ったからレベルアップしたかな?」

「そうだな。レベル6になったみたいだな」

「今度こそ強くなったかな?短剣が少し軽く感じるようになった気がするよ」

「レベル6ともなれば、少しは違いがでてくるかもな」


資料によるとレベルが1あがるごとに5%ぐらい力が増えるらしいので、レベル6だと3割増しぐらいだ。このぐらいの差になってくると自分でも分かるな。


「そしたら短剣じゃなくてアキ先生みたいな剣を持てるかな?」

「さすがにこの剣は重いと思うけど、もう少し軽い剣なら試してみてもいいかもな」

「もう少しレベルアップしたら見に行こうよ」

「そうだな」


ダンジョン以外でも一緒に行動することになりそうだが、まぁいいか。ただレベルアップに必要な経験値は指数関数的に上昇するようで、1階層だとこれ以上上げるのは難しいだろう。来週からは2階層だな。


□◆□


「ステラ、今日は2階層へ行くよ」

「2階層には何がでるの?」

「トレントとかの植物系の魔物だな」


資料室にあった魔物の書によると2階層も1階層と同じ森になっていて、その中に植物系の魔物としてトレント、トードスツールやラフレシアがいるとのことだった。

「どれも危ないのかな?」

「スライムと違って攻撃してくるけど、近づかなければ大丈夫だよ。」


1階層を歩いて2階層に下る階段まで進む。一週間1階層で活動している間に、階段の場所はすでに見つけてあった。2階層に移動して、少し森の中を歩くと、トレントがいた。森の中なので初見だと判別できないと思うが、事前に資料を見ておいたので見つけることができた。


「ステラ、あれがトレントだよ」

「トレントって木の魔物だよね?木がたくさんあってわからないんだけど。」

「枝が横に2本だけあって、あとは頭のように葉っぱの多いところが上にある木だよ」

「たしかにあの木だけ枝の付き方が違うね」

「近づかなければ大丈夫だから、ここにいてね」

「うん」


資料によればトレントは火に弱いとは書いてあったが、まだ魔法が使えないので近づいて剣で戦うしかない。近づくと枝で攻撃してくるので、その枝を切っていく。枝を切り落としてしまえば、もう攻撃してこないので、あとは幹を切って討伐するだけだ。そこまで太くないので、何回か剣を打ち付けたところで消滅した。トレントは異世界では定番の魔物だが、小説によって強さにかなり幅がある。この世界では2階層にでてくるだけあって、かなり弱い。というのも枝での攻撃だけで、基本的に移動しないことになっているのだ。

討伐した後には魔石と長さ2mぐらいの木材の柱がドロップされていた。魔石は2階層の魔物だからなのかスライムの倍ぐらいある。といっても、しょせんは2階層の魔物なのでちょっと大きい小石ぐらいだが。それよりは魔石以外のアイテムもドロップするようになるのが嬉しい。


「柱をドロップしたから、リヤカーに積もう。片方を持ってくれる?」


リヤカーを召喚して、ステラと一緒にドロップした柱を積んで送還する。


「リヤカー召喚って便利だね」

「だろ?いよいよチートが始まる気がするよな」

「チート?」

「活躍するってことさ」


さらに歩くとトードスツールを見つけた。


「ステラ、あれがトードスツールだ。毒があるから食べちゃだめだよ」

「あれはわかりやすいね」

「近づくと毒がある胞子をばらまくから、近づかないようにな」


赤くて黄色の斑点があり、見るかに毒がありそうだ。ギルドの資料によると近づくと毒のある胞子をばらまくらしい。といっても2階層の魔物なのでちょっと痺れるぐらいらしいが。こちらも移動しないので離れていれば安全だ。


素早く近づいて胞子をばらまく前に、剣で真っ二つにすると、やはりまるでゲームのようにポンと消えて、小さな魔石となぜかシイタケをドロップする。毒キノコがシイタケをドロップするのがよくわからないのだが、これもあの神が設定したのであろう。


「ドロップがシイタケってしょぼいね」

「そうだな。普通の冒険者は稼げないからスルーするらしいぞ」

「私たちももういいかな」

「そうだな」


試しに討伐してみたが、うまみのない魔物だった。今後は無視しよう。その後、ラフレシアも見つけて討伐してみたが、魔石は小さいしドロップもなかったので、こちらも無視することにした。


「2階層ではトレントを討伐するのが良さそうだな」

「ステラも討伐できるかな?」

「短刀しかないからな。単独では無理だと思うけど、一緒に討伐すればいいんじゃないかな。俺が枝を切り落としたら二人で幹を切りつけよう。」


この手の小説では、戦闘にちょっとでも参加すれば、討伐したときの経験値が得られるのが定番だったので、たぶん戦闘に参加すればステラもレベルアップするはず。短剣しかなくても枝がなければ攻撃を受けないので、大丈夫だろう。


二人でトレントを探して討伐してまわったが、トレントはスライムほどは多くないし、討伐するのに何回も切りかかる必要があるのでなかなか時間がかかる。それでもこの日は15本ぐらい討伐することができた。


15本でもトレントは2mぐらいの長さの木材の角材や板材をドロップしてくれる。これらの角材や板材は高く売れるはずなので稼ぎが期待できそうだ。ステラの剣ぐらいなら買えそうかな。


「これだけ木材があったら、報酬もかなり多そうだな」

「アキ先生のリヤカー召喚のスキルのおかげだね」

「そうだな。ギルドに戻るとするか」


戻る途中に木材を積んだリヤカーを曳いているグループをいくつか見かけた。浅い2階層でも、トレント討伐でかなり稼げるということなのだろう。ただ、さすがにリヤカーを曳きながらだとグループじゃないと無理そうだな。送還なしで木材を積んだリヤカーで運ぼうとしたら、2階層からとはいえなかなか大変そうだ。そういう意味ではリヤカー召喚は便利だな。チートとまでは言えないが。


□◆□


「フローラさん、今日は2階層に行ってきましたよ」

「トレントはたくさん討伐できましたか?」

「なんとか15本といったところです。剣しかないと、討伐に時間がかかるので」

「火属性の魔法スキルがあると違うんですけどね」

「ダンジョン内で、木材を積んだリヤカーを曳いていたグループをいくつか見かけましたが、専門にやっているグループがあるんですか?」

「そうですね。トレント討伐は低い階層でかなり稼げますから火属性の魔法を使えるメンバーがいる専門のグループはいくつかあります。」

「なるほど、魔法師がいたら楽そうですね」


普通に考えると、火属性の魔法で燃やしてしまったら素材を回収できないのだが、この世界は討伐すると死体は消滅して、別にドロップ品が出現するから大丈夫ということになっている。実に不思議な世界だ。


「ドロップした木材はどうすればいいでしょうか?」

「裏手にドロップ品の受け取り口があるので、そちらに移動しましょう」

「受付はいいのでしょうか?」

「別の担当を付けるので大丈夫です」


なんだか木材15本ごときに申し訳ない気もしたが、報酬がもらえないと困るので、そのままフローラさんに手続きをお願いすることにした。


さすがにギルドでリヤカーを召喚するのは目立ちすぎるので、少し手前の目立たないところで召喚してステラに見張ってもらっていた。


「木材15本で300イドルですね。魔石は17個で34イドルなので合計で334イドルになります。」

「2階層でこれなら、フローラさんが言っていた通りダンジョンは相当に稼げるんですね」

「本当は木材は運搬が大変なので、専門のグループじゃないとここまで簡単にはいかないんです。アキさんのリヤカー召喚があればこそですね。」

「トレント討伐には使えるスキルですが、この先は役立たないかもしれませんけどね」


□◆□


ギルドで報酬を受け取ったら、ステラを孤児院まで送って1コマの授業をやった後、報酬を分配する。


「これまでと同じ半分だとすると今日は167イドルだな」

「えっ、そんなにもらえないよ」

「アキさん、荷物持ちで167イドルはいくらなんでも多すぎですよ」


お茶をもってきてくれたソフィアさんから指摘がはいる。


「あまり高額の報酬をもらってしまうと、教育的にも良くないのでその半分ぐらいにしてください。」

「といってもダンジョンで魔物を討伐しているわけですし、あまりにも少ないのは申し訳ないというか。少し寄付も含めて100イドルということにしてもらえますか?」

「それでも多いぐらいですが、わかりました。」


ステラも予想以上の報酬になったのか驚いている。でも誰だって収入が増えたら嬉しいよね。帰り際にジャック達と会った。


「ようジャック、ダンジョンは攻略できているか?」

「今は3階層のメタルアントを中心に討伐しているな。」

「早いな。俺たちはやっと今日から2階層だよ。そういえばジャック、ステラを雇ってほしいと俺に言ったときに『奴』とか言っていただろ。てっきり男かと思っていたよ。あんな可憐な女の子に使う言葉じゃないな」

「可憐?ステラが?」

「とにかく、女の子は大切にしてあげろよ」


一言告げて俺は孤児院から宿に戻った。


□◆□


Side:ジャック


「なぁジャック、アキはステラのこと誤解しているんじゃないの?」


アキが帰った後、アッシュが話しかけてきた。


「そうだな。可憐な女の子なんて言っていたし。確かにステラは見た目は華奢だからな」

「俺たちはあいつと暮らしているから中身を知っているけどな」

「まぁアキもどこかで気づくだろ」


ステラは確かに背も低めだし、そこまで力があるようには見えない。でも、あいつはすごく頭が切れる。策略家と言ってもいいかもしれない。俺たちも口論では絶対にかなわないので対抗しないようにしている。そもそも、そんな可憐な女の子がダンジョンの荷物持ちをするはずもない。あいつは事前に荷物持ちとしてアキにお願いするように俺たちに言ってきたのだ。おそらくアキなら一緒にダンジョンに連れて行ってくれると見込んでいたんだろう。普通の冒険者なら絶対に荷物持ちには討伐などはさせないが、アキなら協力してくれるだろうから、おそらく自分も冒険者になれるはずと考えたに違いない。本当に恐ろしい奴だ。

13話までお読みいただきありがとうございます。感想などお待ちしています。

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