第1話:異世界転移
投稿開始から3日間は5話づつ投稿予定です。その後は1話づつ投稿するつもりです。よろしくお願いします。
気が付いたら真っ白な世界にいた。大学祭の準備のためにリヤカーを曳いていたら、突然足元に魔法陣のようなものが現れたのだ。その後の記憶が途絶えているのだが、それにしてもいったいここはどこなのだろうか?辺りを見回してみると、目の前の少し高いところに全身に白い服を着た人物が現れた。真っ白な世界に白い服の人物、そして周囲も真っ白な世界で他には何もない。こんな世界にいきなり移動するなんて、どうなっているんだ?と思ったが、そういえばこの状況は小説によくある異世界転移にでてきる場面なことを思い出した。ということは白い服の人物は神ということか。ただルックスは特にイケメンというわけではなく、なんとなく地味な感じで神らしいオーラは感じられない。
「桜井 彰人だったな。ようこそ神の世界へ。」
予想通り異世界転移の場面らしい。でもおかしいな?リヤカーを曳いていただけでトラックにはねられたわけでもなく、まだ大学生で社畜でもないから過労死ではないはずなのだが。
「あのー。なんで私はここにいるのでしょうか?」
「世界を繋ぐ魔法陣の実験をしていたのだが、設定に間違いがあって地球側の魔法陣が作動してしまったのだよ」
実験で失敗しただけかよ!
「それでは元の世界には戻してもらえるのでしょうか?」
「世界を繋ぐといっても上流から下流に移動するだけで、逆方向に移動することはできないのだ。申し訳ないが、君には私が創った異世界に行ってもらおうと思う」
神のミスで転移したのに戻れないのか?酷い話だと思うが、でもおそらくここで神に文句をいっても元の世界にはおそらく戻れないのであろう。となればまずは異世界の情報をいろいろと貰わなければ。異世界転移ものだと、説明のないままに転移してしまうものもあるが、情報なしで異世界に行くのは避けたい。
「どのような世界なのでしょうか?」
「小説によくある剣と魔法とダンジョンのある世界だ。日本を参考に作ったのだが、思ったように進展していなくてな。是非とも君に行ってもらってさらに進展させてもらいたい」
ん?小説によくある?
「小説によくあるとのことですが、ひょっとして小説投稿サイトが好きなのですか?」
「そうだ。私はその小説投稿サイトにはまっていてな。ついには、投稿サイトにでてくる異世界というのを創ってしまったというわけだ。」
いやいや、趣味が高じてとは言うけど、そんな世界を創ってしまうのはやりすぎだろう。いや神にとっては普通のことなのか?
「進展していないというのは、文明が進んでいないということでしょうか?」
「文明は日本を参考にしているから問題ないのだ。そうではなくてダンジョンを作ったのだが、フロアボスのいる階層までしか踏破が進んでいないのだよ。すっかりそこで満足してしまっているようでな」
進展って、ダンジョンのことかよ。
「なぜ踏破が進まずに満足してしまったのでしょうか?」
「それがよくわからないのだ。神託でダンジョン攻略をするようには告げてあるのだが。」
「私が異世界に行って進展させられるのでしょうか?」
「まずは君にダンジョンを踏破してもらいたい。そのうえで、なぜこれまで踏破が進んでいなかったのかを調べてみてくれ」
あれ?普通、異世界転移の場合、自由に生きていいと言われるのが普通では?なにやら任務のようになってきたぞ。
「ごく普通の私にダンジョンを踏破できるのでしょうか?」
「確かに君は身長170cm、体重55kgで長身ともいうわけでもないし、体格がいいというわけでもない。顔もイケメンでもないし、特別な何かがあるわけではない。だから彼女もいないし、これまで女性にモテたこともない。しかもヘタレときたものだからチャンスも作れない」
いや単に普通の人ということだろ。逆方向から説明するとダメ人間みたいじゃないか。それに最後のモテないとヘタレというのは余分だ。
「でも異世界転移のチャンスを得たのだ。こちらの間違いで転移するのだからスキルや魔法を用意しよう。それならダンジョンを踏破できるだろう」
そうか、スキルや魔法がもらえるのか、それなら異世界に行って無双できるかな。ひょっとしたらチートなスキルや魔法で活躍してモテるようになってハーレムを作れるかもしれない。間違いで異世界に行くとか酷い話だと思っていたが、それなら転移してもいいかもしれない。それなりに勉強して大学に通えるまでにはなったけど、有名な大学に入れたということでもなく、結局は普通の大学だった。勉強も運動もルックスも普通レベル、絵がうまいとか楽器が弾けるとか、歌がうまいということもない。なにをやっても普通なのが自分だった。スキルや魔法の力で普通の自分から抜け出せるかもしれない。
「どのようなスキルや魔法を選べるのですか?」
「君はリヤカーとともに転移してきたから、まずはリヤカーを自由に召喚できるようにしてあげよう」
えっ?リヤカーの召喚ですか?ドラゴンとかじゃなく。と思いつつも、ここで断るわけにもいかないので、
「ありがとうございます。他にはなにかスキルか魔法はいただけますでしょうか?」
「あとは、このリストからいくつか選ぶといい」
そういいながらリストのようなものを表示してくれた。
ファイアボール
ウインドカッター
ロックバレット
アイスバレット
アースウォール
スラッシュ
...
いろいろなスキルや魔法があるけど、初級クラスで取得できる定番のものばかりじゃないか。
「あのー、いろいろとあるのですが、いわゆる初級で取得できそうなものばかりのようなのですが、インフェルノとかコキュートスとか、もしくはパーフェクトヒールみたいなチートなスキルや魔法はないのでしょうか?」
「いろいろと小説を読…いや調査したのだが、異世界転移時にチートなスキルや魔法を与えてしまうと、その力で無双するだけになってしまうのだ。私としてはコツコツと成長していくストーリーが好きなのでチートはなしにしている。あとヒールは教会のシスターしか取得できないことにしてあるので選べないな。」
そんな。チートのない異世界転移なんて炭酸のない炭酸飲料みたいなものじゃないか。なんでそんなひねくれた世界を創るかな。俺はヘルモードをやりたいわけじゃないんだよ。しかしヒールだけなんでシスター限定なんだ?
「ヒールがシスター限定ですか?」
「祈りをささげたシスターに対する神託として付与するようにしてある」
「それなら祈りをささげた冒険者などにも付与しても良いのでは?」
「やはりかわいい子から崇拝してもらったほうが嬉しいからな。せっかく創った世界なんだから、そのぐらいの役得がないと、神なんてやってられないよ」
いきなり下心がでてきてしまったよ。地味そうな神だが、実はむっつりスケベらしい。いやそんなことを考えている場合ではない。異世界転移でチートなしだけは避けたい。といってもリストにない以上、このままではチートスキルや魔法がもらえない。どうしたものか?なにかいいアイデアはないか?そういえば、小説で船を召喚できるのがあったな。本人には強力なスキルや魔法がなくても、船がチートなのでハーレムしていたはず。
「それでは、自分には付与は無しで良いので、召喚できるリヤカーに特性を付与してもらえますでしょうか?」
「君自身にスキルや魔法を付与しないと、最初に苦労すると思うけど良いのか?」
「はい、コツコツと成長するのが好きということなので」
「いいだろう。その心意気は気に入った。それにこちらの間違いで転移させてしまったわけだし、3つぐらいならリヤカーに特性を付与してもいいだろう。それで何を付与すれば良いのだ?」
「たぶん魔物と戦う必要があると思うんですけど、その間にリヤカーを壊されないように攻撃を無効化する特性を付与してもらえますか?そうすれば戦闘に集中できて成長につながると思うのです」
「なるほど、確かにリヤカーが気になっていると戦いに集中できないな。リヤカーは攻撃無効化の特性を持つようにしよう。」
「あと、リヤカーを送還したときに荷物も一緒に送還されるようにしてもらえますか?荷物だけが残ってしまうと、大変なことになってしまうので。」
「そうだな。荷物が一緒に送還されるぐらいはいいだろう。ただし生き物の送還は禁止だ。これは異世界の掟だからな」
「生き物がNGなのは定番ですね。生き物が乗っていたら送還できないということでOKです。最後に、召喚する際には場所を指定できるようにしてもらえますか?突然、路上にリヤカーが召喚されたりすると、他の人とぶつかって事故が起きるかもしれません。場所を指定して召喚できれば事故も防げますから」
「確かに場所が指定できた方が安全だな。それでは場所を指定して召喚できるようにしよう。これで3つの特性を付与したしここまでだな。これから行ってもらう世界はレベル制なので、自身のレベルが上がればリヤカーのレベルも上がるようにしておこう。といってもリヤカーでしかないので、サイズが大きくなったりとかぐらいだが」
「ありがとうございます。これで十分です。あとはコツコツとやっていくようにします」
「最初に階層を踏破した者には、それなりに利点があるようになっているから、ダンジョンの踏破をがんばってくれ」
こうしてチートのない少しひねくれた異世界へリヤカーとともに転移するのであった。
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