第七十五話 逃避
「エレンドに居るって言っても……結構この国広いよな……。どこを探すべきなんだろう」
エレンドに至るまでの道中、俺たちはこの後の方針を話しつつ歩いていた。
「とりあえず……栄えている場所に行って情報を収集するのが先決なんじゃないかしら」
「聞き込み調査から始めないとね~」
隣を歩く二人を見る。
「なんか……慣れてるな」
「どうしてだと思う?」
シルヴィアがにっこりと笑って俺を見る。
「え……えっと……なんか人捜しの経験があるとか……」
俺がそう言うと、リーシャまで俺を見て微笑んでくる。
「私は、あの狭いエルフの里の中で迷子になった人を探すときに色々学んだわ」
「私もおんなじ人が旅の途中でしょっちゅう迷子になってたから慣れたね」
しょうがないでしょ道が分からないんだから!
俺は悪くない! あんな風にややこしい構造にするのが悪いんだ!
すいませんでした。
「……ご迷惑をおかけしますほんと…………」
「ユキヤと言えば迷子だからね」
シルヴィアが笑って続ける。
「と、いうわけで――――」
「ん?」
シルヴィアが俺の右手を取る。と同時に、リーシャの右手が俺の左手と絡んだ。
「迷子にならないように手を繋ぎましょうか」
「俺三歳児だと思われてる? 遺憾の意を表明しま――――」
「三歳児でも方向感覚のある子はユキヤより迷わないでしょうね」
反論できねぇ……っ。
「どうしてこんな辱めを…………ゼクルに見られたくない」
「私としては早くゼクルを見つけたいんだけど」
シルヴィアが楽しそうな笑みを俺に向ける。
「あの……聖女サン。あなたちょっと加虐趣味が出てきていませんこと?」
「そんなことないよ? パーティーの仲間と早く合流したいと思うのは自然なこと!」
にこにこ。
「…………俺で遊ぶなぁ……」
ゼクルに早く会いたいような会いたくないような、複雑な気持ちを抱いていると――――エレンド王国へ入る門が見えた。
「家々の装飾にも意匠が凝らされてるね……すごいなぁ……」
「素敵な街ね」
門の前で構えている守衛がこちらを見た。
あれ? ちょっと待って。
「あの……お二人さん。流石に入国するときは一人ずつですよね? このまま通過するなんて、そんな恥ずかしいこと……」
濃紺の空を静かに照らす月のような、穏やかな微笑を左右から感じた俺は――――現実逃避に全力を尽くすことしか出来なかった。




