第四十八話 接触
『久しぶりね、リーシャ』
その声は、ここ二週間一度も話しかけてくれなかった薄情者の声だった。
「聖霊様……。なんで最近喋りかけてくれなかったんですか……?」
『ごめんリーシャ、怒らないで? タイミングが掴めなくて』
「タイミング? 今までは四六時中どんなときでも話しかけてきてましたよね」
『え、やっぱり怒ってる? 怒ってるよねごめんほんと……』
聖霊様は基本的には尊敬できる存在なんだけど……たまに軽いって言うか……軽薄って言うか……。
『――――結構真面目な理由があってね。聞いてくれる?』
声の質が変わる。
真面目な理由があるんだったら最初から言ってほしいけど……。
『リーシャの愛しの賢者くん居るでしょ?』
真面目な話が始まるんじゃないの……?
「別に愛しくありませんっ」
『……リーシャのお気に入りの賢者くん居るでしょ? あの子、二つ目の聖紋を手に入れたじゃない?』
「遺跡で授けられていましたね。剣聖の聖紋を」
『”剣聖”の能力は、初代剣聖の意思を継承していくことなの』
もちろんある程度の剣技も授けられるんだけど、と聖霊様は付け足した。
「それが何か影響しているって事ですか?」
『うん。その……私、色々あって剣聖に恨まれてるの』
対面したら殺されちゃうくらい。
「殺、され……」
『誇張じゃないよ。彼――――いや、彼の遺志は決して私を許さない』
「なにが、あったんですか……?」
私の疑問に聖霊様はう~ん、と唸るだけだった。
『――――言えないな。いくら私の大切なリーシャ相手でも』
「そう、ですか……」
『うん。それで、私がリーシャに接触したことが分かると賢者くんに悪影響が出るんじゃないかなと思って、話しかけるのを控えてたのよ』
「ユキヤに悪影響って……”剣聖”の能力が原因で……?」
『……そうだね。きっと、賢者くんの右手くらいなら乗っ取れると思う。そして――――”剣聖”は、剣を振れさえすれば万物を両断できる』
万物を……両断できる……って……。
だから危ないのよ、と聖霊様は続けた。
『もちろんリーシャが聖霊姫だって事は“剣聖”も分かってるだろうけど……そこは賢者くんが抑えてるんじゃないのかな。でも、私が直接接触したら制御不能まで一直線だと思う』
…………あれ。
私は聖霊様の像に向けて両手を広げてアピールする。
「今は接触して大丈夫なんですか?」
『周囲に賢者くんが居ないからね。まああと……この空間は夢の中みたいなもんだし』
「なるほど……というか、本当にちゃんと真面目な理由があるんじゃないですか」
『ふふ……。ちょっと、久しぶりのリーシャとの会話だから、茶目っ気出しちゃった』
てへ、とでも言い出しそうなテンションだ。
…………聖霊様ってどれくらい生きてるんだろうなぁ。
ちょっと年代が気になる。




