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第四十七話 巨像

 転移を終えた私の目の前には、白亜の神殿が静かに待ち受けていた。


 霊龍の住処――――夜明けの神殿とは別の神殿だ。


 先刻まで居た夜明けの神殿は、雲の上の神殿であることもあって陽光が随所から差し込んでいたが、この神殿は薄暗い雰囲気に包まれている。

 照明は等間隔に壁に取り付けられた松明だけ。


 周囲を見回してみても、事態の進展に役立ちそうな情報を得ることはできない。


 ……進むしかないのよね。


 杖を抱くようにして持ち、硬質な床を歩き始める。

 風化しているのか、所々見えづらくなってはいるものの――――壁には絵が描かれている。


「これ……龍かしら」

 龍に見える生き物が、翼の生えた女性に頭を垂れている絵だ。

 ――――この女性の絵……どこかで見たことあるような……。


 記憶を探ってみるが、思い当たる節はなかった。

 デジャヴだろうか……。


 この建物……どれくらい昔に建てられたんだろう。

 建材の劣化具合からして、千年や二千年前どころじゃない気もするけれど……。


 それほど昔まで遡ることのできる文明なんて聞いたことがないし。歴史好きなシルヴィアに話を聞くことができれば、また違う知見が得られるのかもしれない。

 ……まあ、今そんなことを考えてもしょうがないんだけど。


 この試練は私――――”聖霊姫”に向けてのものだ。


 私が、聖紋を授けられた人間に相応しい能力を示すことができなければ踏破できない。

 シルヴィアとユキヤは必ず試練を突破する。


 期待を裏切りたくない。


 コツ、コツと靴音が響く。

 神殿内はこの上ない静謐に包まれている。


「……あら」

 少し開けた場所に出た。柱の隙間を縫うように、下へ階段が伸びている。


 上を見上げると、天井の装飾まで随分と意匠が凝らされているのが分かる。どれだけの技術力があれば、これほどに美しい建物を作ることができるのか。


 魔法があったとて、かなりの時間がかかるわよね……。

 観察はその辺りに留めて、階段を下りた。


「――――っ」


 息を呑む。

 階段を下りた先には広間があった。

 ……広間のずっと奥に、ナニカがある。


 遠くからでも見て取れるほど、それは巨大だった。大切な物を抱き締めるように胸の前で腕を組み、跪く女性の像。

 導かれるように、彼女の足下へと向かう。


 壁画の女性とはどこか違う。容姿は殆ど同じなのに――――なにか、雰囲気が。

 近づけば近づくほど、知らず知らずのうちに胸が高鳴っていく。


 巨像を見上げたその瞬間――――声が聞こえた。

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